第19話 生け贄
「ふふふ……あははは……」
凄い……やっぱりこの子は凄い……。
ついこの間まで荷物を、自重を軽くするだけの魔法だったのに、たった数日でここまで……。
自分の何倍もある岩を難なく持ち上げ、思った場所に移動する。
簡単に見えてこれ程困難な事は無い。
私でも無理、魔法学校で、重力魔法は足止め程度、相手を転ばせる程度しか出来ないと習った。
重力魔法の詠唱には、自然界、この世の力を変化させる文言を入れなければならない。
この世の法則を変えるとは、この国の地を……いいえ、世界の地を変化させるという事……。
重力、物が地面に落ちるという現象はこの世界、この世の全体の力。
空気を燃やし炎を繰り出したり、水を凍らせたり、その場の自然現象を変化させるのとはわけが違う。
一瞬でも使えたなら、魔法学校ではトップに立てる。いいえ、この国のトップにさえなれる。
地属性、最強レベルの魔法……それも彼は詠唱無しで……。
信じられなかった……でも間違いない……彼は重力を完璧に操っている。
そして半分冗談で、出来るもんならやってみなさいとばかりに、複数展開をさせてみたら……あははは、あっという間に5個展開した。
それぞれ違う性質、重さ、大きさ、形の物。
それを苦もなく持ち上げてみせた。
これがどういう事かわかる? 5人を一瞬で行動不能に追い込めるのよ?
ああ、また一個増えた、凄い凄い……なんて力なの?!
そろそろ生け贄が欲しい……この間の魔物は惜しかった……せめて成獣だったら……。
でも、新しい村人が出来た……しかもあの子は……あの道具商は……。
彼は守らなければならない、私とあの子を……。
大丈夫、ここは危険な土地、魔物も不良パーティーもいつかは訪れる。
その為に、ここの権利を買ったのだから。
村造りなんて興味は無い。
ここはあの子を鍛える場所、あの子の力を覚醒させる場所。
ふふふ……ここから始める……ここから始めるのよ、私の復讐劇を……あの子を使って私を裏切った家族、家、学校、この国、この世の人々を、魔法を魔法界を滅茶苦茶にしてやる。
それが私の目標、それが私の生き甲斐……もう私にはあの子しかいない。
私が生きる為には、あの子が必要……。
どんな手を使ってでも……この重力魔法を、あの子を、ヨーク・グラビィティを私の物にする。
私は一度死んでいる……だから惜しむ物は何も無い。
この身体さえも……。
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