第29話
「あ、お姉ちゃん」
インターホンを鳴らせば姿を現したのは十代半ばと思われる、ミア・ミッチェルとは違い茶色の髪をショートボブほどの長さに生やした茶色の目の少女だ。
「ただいまリビア。久しぶりね」
「うん」
「学校はどんな感じ?」
「まあまあかな」
玄関先で話すのもどうかと思ったのか、ミアが奥に行こうと歩き始めるとリビアと呼ばれた彼女も隣を歩いてリビングに向かう。
オリビア・ミッチェル。
髪の色は違う物の雰囲気としてはミアと似通っている部分もある。
「来週からエクスフェティバルでしょ?」
「お姉ちゃん、また警備の仕事?」
「そうよ」
「へー、じゃあ友達と一緒に行こっかな」
オリビアがケラケラと笑いながら悪戯っ子の様に言って見せると、ミアは苦笑いをしながら「別に構わないけど」と答える。
「まあ、元々行く予定だったんだけどね」
「へー、そうなのね」
「うん……。あ、お金はアルバイトのから出すよ?」
「そ、そう?」
「うん。お姉ちゃんには学費とかで迷惑かけちゃってるし」
「あまり気にしなくていいのよ? ほら、リビアは頭も良いんだし」
「ううん、大丈夫。私は好きでやってるし」
冷蔵庫を開ければミネラルウォーターが入っており、許可も取らずに一本、ミアは取り出してゴクゴクと一気に半分ほど飲んでしまう。
「見つけたら声かけるね!」
見つける事はできるのかという疑問が浮かび失笑する。
顔も見えないのだから。
そもそもにして担当場所が違う可能性もあるのだ。
「んー、見つけられるかな?」
「えー……? じゃ、私は私達で楽しむね」
努力をして見つけようなどという気力はないのだろう。いや、友達との時間を優先した方がミアも姉として嬉しい限りだ。
「そういえば、リビア。貴方、パワードスーツには興味なかったじゃない。去年は行かなかったし……」
「それがねー、今年出場のえーと、ちょっと待ってね」
少しだけ型の古い携帯電話を操作してオリビアは何かを探しているようで、どうしたのだろうかとミアも彼女を優しく見つめて待っている。
ようやく見つけたのか携帯電話の画面を見せつけてくる。茶髪の美青年。ミアには見覚えがあった。
「あ、最近テレビでもインタビューされてたような……」
「そうなの。ソフィアがね、あ、学校の友達がね? 彼に会いたいって言い出して」
「言っても、殆どパワードスーツで顔が覆われてるのよ?」
「……私に言わないでよ」
会いたいと言い出したのはオリビアの学友であるソフィアである。
そんな事を言われても困ってしまうと肩をすくめてオリビアは溜息を吐いた。
「リビアはこう言う子はどうなの? 恋愛対象として」
「え、そりゃあカッコいいと思うけど」
「うん?」
「……今はそう言うの考えられないかな」
まだまだ恋と言うものにミアの妹は疎いらしい。ふとミアは笑う。
「そうだ、リビア。久しぶりにご飯でも食べに行かない?」
「え! いいの!?」
「ちょっとの贅沢が心を潤すのよ」
オリビアはドタドタと用意を始め出す。彼女の様子を見ながら、ミアは財布の中身を覗く。
「うん、大丈夫でしょ……」
貧乏性が板に付いているからか、贅沢と言ってもたかが知れている。
ミアは再び財布をポケットに仕舞い込んだ。
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