第17話

 ミアがテレビをつけて観ていると、そこにシャワーを浴びてきたのか、タオルを首からかけたシャーロットがやってくる。

 茶髪はわずかに濡れ、肌も若干の火照りが見える。それはどこか艶っぽさを感じさせる。

 上下、黒の下着姿の彼女は少しばかり目に毒だが、この場には女性しかいないためか恥じらいというものは殆ど存在しない。


「ああ、そう言えば、もう少しだっけー」


 画面に映るのは茶髪の美青年。

 インタビューを受けている様子で、笑顔を見せながらに答えている。


「エクスフェスティバル。また大変な時期になったねー」

「そうですね。今年はどうなるんでしょうかね」

「今年も変わらないと思うけど」


 シャーロットが答えると、ミアも「そうですね」と言って小さく笑う。


「本当に何事もなきゃ良いんだけどね……」


 心配そうな顔をしながら呟くと、ミアも同調するように頷く。問題はなければないに越した事はない。


「警備ロボットもあるから、問題はそんなにないと思うし」


 警備ロボット。

 それは不審な動きを見せた者を発見する為に配置された、AI搭載型のロボットであり、人が乗らずとも稼働可能である。

 エクスフェスティバルに於いて導入されている警備の人手不足を解消する手段であった。


「もしかしたら、私たちの出番はないかも知れませんね……」


 警備ロボットの巡回などにより犯罪の抑止にも繋がるだろうことが考えられ、『牙』はこれまでもエクスフェスティバルにおいて大した活躍を見せた事はない。

 彼らの活躍する機会がないと言うのは喜ばしいことではあるのだが、彼女たちは必要ないのではないかと思ってしまっても仕方がない。


「それならそれで良いんだよー」

「ですよね」


 ミアの正面にシャーロットは座り込みテレビの画面を見る。


「はー、それにしても懐かしい顔だね……」


 シャーロットの小さな呟きはミアの耳に届く事はなかった。


『はい』


 画面の向こうの茶髪の青年。

 彼は若手で女性人気も高く、今回の注目度が高い。


『良い成績を出せるように頑張りたいですね。皆さん、応援お願いします!』


 笑顔を浮かべた彼へのインタビューはそこで終了する。インタビューが終わったのを確認してから、シャーロットは衣服を着始めた。


「はあ、華やかで良いですね」

「そうだねぇ」


 ミアはテレビの電源を落とし、立ち上がる。


「……訓練、行こっか」

「はい!」


 二人は一緒に部屋を出て訓練室に向かう。


「そういえば、ベルはどうしたの?」


 この部屋に姿の見えない仲間の所在が気になり、シャーロットが尋ねるが、ミアも分からないようだ。


「ベルさん、朝起きたらもういなかったんですよね」


 既に訓練にでも向かっているのだろう、とミア達の考えは一致していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る