第62話
「来たところを撃ち殺す」
タイタン操縦者の一人、ルイス・クルスは銃を構えて、海岸近くに立っていた。
脳内でシミュレーションを繰り返し、敵が攻めてきた時の対処方法を探っている。
アスタゴ西海岸、南に配属された者はルイスを含めて三人。
ルイスはミカエルには劣るものの、戦士としては最高レベルのスペックを誇っている。特に銃撃戦に優れ、仲間からも信頼されている。
『ルイスさん。本当に来るんですか?』
通信機器から声が聞こえた。
男性のもので、その中でもとりわけ低いものだ。
「分からない……」
『あー、そうですか……』
「──そうだ、カルロス、アメリア」
ルイスが二人分の名前を呼んだことで、先ほどまでは会話に入って来ていなかったアメリアが、
『何ですか?』
と、ルイスの言葉に訊ね返し、答えを促す。
「マルテアには気を付けろ」
『はい?』
カルロスとアメリアの頭の中には疑問が浮かぶ。
海の向こうに船の影が見える。
敵船がやって来た事で思考にばかり潜ってはいられない状況となった。
三人は気持ちを引き締める。その複数隻の船の上には黒い機体が乗っている。
それを問答無用でルイスは撃ち抜こうと手に持つ銃を構えて、トリガーを引いた。
発射された弾は真っ直ぐに先頭に立つリーゼに向かって飛んでいく。
ガキィン!
弾が弾けた。
「現実は上手くいかないものだ」
リーゼの構えた盾に当たった為だ。
「グランツ帝国か……」
問答無用で次の弾を撃つ。
それをグランツ帝国のリーゼは盾を動かして防ぐ。
「中々、やるみたいだな」
弾を撃つが狙撃するリーゼは物の見事に全ての弾を防ぐ。
そしてアスタゴの砂浜に全てのリーゼが降り立つ。
「は、壮観だな」
そこには五機のリーゼ。
「ここまで、“シャドウ”が見えるとはな」
そう言いながらも、若干の緊張を覚えながら、ルイスは構える。
少しばかり遠くにいるカルロスとアメリアも状況が把握できたようだ。
「シャドウ五機を確認! 迎撃する!」
『こちらカルロス。了解!』
『同じく、アメリア。了解!』
通信の届いた二人は離れた場所から巨大な銃を構えて撃ち放つ。
それは陽の国の国旗の描かれた二機のリーゼに向かう。
しかし、それも盾で防がれてしまう。
だが、その一撃に僅かに蹌踉めいたことから、その二機はそこまで、攻撃に慣れていないことが理解できた。
ただ、それ以上にその奥にいるもう一つのリーゼが余りにも不審に思えてならない。
前にいる二機と同じく陽の国の国旗が見える。
そのリーゼは自らを守るように盾を展開させるわけでもない。銃を構えているわけでもない。
ただ、そこに居るだけのように思える。
何もしないのか。
その思考を裏切るように、その一機が突如として銃を撃ち放った。
意図がわからない。
それはアメリアのいた方向に放たれた。
慌てて、アメリアは右腕に付いている盾で防ごうとするが、弾丸はタイタンの右肩を掠める。
『チッ……!』
予想外の一撃にアメリアが舌を打つ。
それがこの戦いの本格的な合図となったのか、五機のリーゼはそれぞれの方向へと向かっていく。
グランツ帝国のリーゼはルイスに。
二機の陽の国のリーゼはカルロスへ。
挙動のおかしなリーゼはアメリアへ。
最後尾にいたマルテアのリーゼは動かない。
『ぐっ』
ルイスにはアメリアの声が聞こえる。
「気にしてる場合じゃないな」
ハルバードを振るって迫り来る大剣を弾く。
「接近戦は苦手なんだがな」
そうは言うものの、技術は見事で反応とタイタンの動きも、ほとんどタイムラグが存在しない。
時折に交ぜられる銃撃もリーゼの銃を持つ手を弾き、外れさせる。
再び、ハルバードと大剣がぶつかり、火花を散らす。
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