第39話
艦内にも爆音が聞こえた。
降り頻る雨すらも吹き飛ばすような轟音だった。ビリビリと響くそれが、飯島の不安と恐怖を加速させていく。
何が爆発したというのか。
答えはすぐに示される。
艦内に放送が入り、先ほどの爆発の原因が伝えられる。
『謎の機体との接敵により、リーゼ一機が破損、爆発した』
リーゼが爆発したという言葉に呆気にとられてしまっていた二人であったがフルフェイスのヘルメットを被り、通信を入れた。
「どういうことだ、岩松管理長っ!」
怒鳴り立てて、飯島が通信機の向こう側にいる岩松に質問をする。
その問いにやけに落ち着いたような声で返答が来た。
『どういう事、か……。それが君に関係あるのかね?』
「何があったか吐け!」
怒りが湧き上がる。殺意を覚える。飯島は顔を歪める。
形容ができないほどにその表情は混沌としていて、それを見ていた山本もゾッとして、後ずさる。
『ふむ、どうしても知りたいか。いいだろう』
岩松が仕方がなしと、ため息を吐く音が聞こえた。
『──察していると思うが、松野美優は戦死した。先の爆発はその戦闘によって引き起こされたものである』
「何があったのか、もっと詳しく教えてください」
山本が具体的な説明を求める。
『そうだな。松野君が死亡してしまった理由だが、敵機との戦闘が原因だ。食糧確保の護衛を任せたが、その途中、敵機体と接触があった』
そこで行われた戦闘について、岩松は一言で言い表した。
『……圧倒的であった』
それがリーゼとタイタンの戦闘。
松野とミカエルの戦いに対する外部からの評価だ。
『あれはアスタゴの兵器であろう。スペックに関してはリーゼよりも上かも知れんな』
リーゼと同じようにその両肩には旗が描かれていた。大陸が描かれた黒色の旗。数多の星々が集まったアスタゴ国旗。
タイタンを思い出しながら岩松は口にした。
『アスタゴの攻撃を受けた松野君の生命維持は不可能であると判断し、リーゼを自爆させた』
隠す必要もないだろう。
どうでもいい事の様に男は告げた。
「は? な、何で?」
『使えない道具を使える道具にするのも、指揮官の役目と言うものだ。死に
理解ができなかった。したくもなかった。飯島の怒りが深まっていく。
「自爆させる必要はあったのか!」
テーブルを右手に握りしめた拳で力強く殴りつける。ぎゅうっと握りしめられた手からは赤い液体が滴りテーブルに垂れていく。
それほどの感情が飯島の中で暴れまわっている。
『必要があったか? 決まっている。必要があった。私がそう判断した』
指揮権は全て岩松にある。
「ふざけるな……」
『ふざけてなどいない。君たちは私の命令を聞けばいい。私の判断に従えばいい。子供は大人の言うことを聞いていればいい。それが最も有効に働くのだからな』
言ったはずだ。
聞いたはずだ。
それは一番初めに。
『──独断行動は断じて許さない』
確認する様な言葉。
ただ、その言葉が彼らには脅迫の様に響くのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます