自殺少年

しあん

第1話

暗い……とても暗い……明かり一つ無い

親も居ない、兄弟も居ない。

一人ぼっち………。


僕は、なんのために活きているのだろう……。


分からない、いくら考えても答えは出ない。


「……死ぬか……」

僕は台所に向かった。

包丁を取り出し、一切のためらい無く自分を刺した………。


…痛くない。


今も包丁は自分の腹部にありありと刺さっている。


だが…痛くはない。

この程度の肉体の痛みなど、今の少年にとっては取るに足らないものなのだ。


「はぁ…」

しかし、刺さっていることに変わりはない。腹部からは今も夥しいまでの血流が溢れ出ている。

このまま出血多量で死ねるのだろうか。


……そう…このまま…………

ぁぁ…そうだ………いいぞ。

だんだんと、意識が薄くなってくる…………

そう………あと…もぅ……すこ…‥し…………で…────────


すると警察が部屋に駆け込んできた。


「おい!君大丈夫か?」


「外から見てたがなにをしてるんだ」


「何って、自殺するつもりなんですけど…」


声をかけられた瞬間に、意識を失わせるための集中力が失せた……。


クソ…もう少しだったのに……。


「馬鹿な真似を!今救急車呼ぶから、じっとしてろよ!!!」


警察は携帯端末を取りだそうとしている。


「っ!!やめてくれ!!!俺はただ死にたいだけなんだ!!」


少年の叫びに警察は一時動揺を見せる。


「……何で自殺なんか……」


「……あんたには関係ない……早く出ていってくれ……」


「……後悔しても知らないからな……」


そう言い残し、警察は少年の家から出ていった。


「…やっと静かになった…」


これでまた、気兼ねなく………死ねる………。


少年は、自身の腹部に刺さっている包丁を抜き、左胸部に刺す。


「っ!!………今度は……どうだ………」


包丁は明らかに心臓を刺している………。


今度こそ………死ねるか…………。



────目を覚ます。

暗い。真っ暗だ。きっと夜なのだろう。

音がする。鳥か何かの鳴き声、それに鈴虫なんかが奏でる昆虫類の音。それに、木々が擦れ合う音が聞こえる。

それ以外はとても静かだ。

つまるところ、そう静かでもない。


身体を起こそうとする。だが、上手く力が入らない。

なんだか浮いているような感覚だ。

仕方ない。このまましばらく動かないでおこう。


…それから、時間にして約20分ほど経っただろうか。

眼が夜の闇に完全に慣れてきて、辺りがさっきより見えるようになってきた。

暗いとはいっても月があるので、完全な闇というわけではない。

辺りは、どうやら森林地帯であるようだ。


しかし…どうしてこんな所に…?


いや、と思い出す。そう。

僕は死のうとしていたんだ。

そして恐らく、死んだ。

では、何故こんな所にいるのだろう…?


残念ながら、ここに来た経緯についてはまるで記憶にはなかった。

天国…とは思えない。はたまた地獄でもないだろう。

死ねたはずのに、何故…


やはり、これはまだ生きているということだろう。


ようやく身体の自由が少しきくようになってきた。

横になっている身体を起こして頭を振る。

そう、森林だ。辺り一帯には絶え間なく草木が生い茂っている。


一体なんなんだ。どうしろって言うんだ。


…ガサガサ……


「…!?」

その時だった。

左斜め後ろの方から、音がした。

何か、いる。それは直感が確信していた。


「……」

音のした方角を凝視してみるが、それ以降はいくら待ってみても謎の音はしてこなかった。

謎の生物に気を取られているばかりでもしょうがない。


…しかし、どうしたものだろう。ここにいても何の意味もない。


移動するか。

立ち上がり、とりあえず、さっき音がした方角とは反対の方へ向けて歩きだそうとした時、地面に何か光るものが見て取れた。


これは…ペットボトルだ。

中は透明で、ラベルには英語で[Natural water]と表記されているので、恐らくは単なる水なのだろう。

だが、しめた。丁度喉が乾いていた所だ。

ペットボトルの蓋を開けようと思った瞬間、いや、まてよ。と思う。

…もしかすると、この水はとても貴重なものかもしれない。

辺りは森林、水場がないはずはないだろうが、何にせよ今この状況で限られた飲めるであろうこの水を、節約しない手はない。

蓋を開けるのを止め、とりあえず尻ポケットに入れておく。

とりあえず、限界が来るまでは飲まないでおこう。そう決めた。


なんとなく、ペットボトルが落ちていた箇所に視線を落としてみると、他にも何か光るものがあった。

確認してみると、それはどうやら刃物であるらしい。

いやまて、これには確かな見覚えがある。

自殺した時に使ったものだ。

というか、血液がべっとりとこべりついているので間違えようがない。


その時だ。


…ガサガサ……


まただ。前回と同じく、気配がする。


…ガサ…ガサガサガサ……


次の瞬間、目の前に飛び出してきたのはおよそこの世のものとは思えない怪物だった。


月明かりだけが頼りなので、姿形を詳細には捉えることができないが、強いて言うならば、全体のイメージはハイエナに似ているだろうか。

四足で体毛は少なく、黒い筋骨隆々の地肌があらわになっている。

体長は3〜4mほどはありそうだ。尻尾まで含めれば恐らく5mはあるだろう。

だが、一番目を引くのはその醜い顔だ。

長い牙を4本も生やしており、獲物を目の前にした口からはよだれをダラダラとたらしている。


「…!?」

「グガァァオオオ…!!!」


怪物の爪が顔をかすめた。

咄嗟に後ろに倒れてしまったので、かすめるだけで済んだが、もし直撃を受けていれば、今頃僕の胴体とは確実におさらばしていたことだろう。


…さて参った。

怪物は依然として目の前におり、もうどこへ逃げようとも殺される以外にない気がする。

それに、尻もちをついてしまっている今の体制から身を起こして逃げようとすれば、確実に隙ができる。もう駄目だ。


その時、自分がいま手に握っているものを思いだす。…いやいやいや。こんなものではどうにもならない。

せいぜい、かすり傷でもつけられれば、それこそ僥倖だ。

でも、どうすれば。どうすれば助かる。


「グギャャァアアアアアア…!!!!」


怪物の鋭い牙が眼前に迫ってくる。

死ぬ。もう駄目だ。食い殺される。



─────奇跡だったと思う。

自分でも、今生きているのが不思議でしょうがない。

怪物が口を大きく開けた瞬間、持っていた包丁で怪物の口蓋を力の限り突き刺した。運良く脳天にまでいけば更に良かったのだろうが、流石にそう期待どおりにはいかない。

だが、怪物は思わぬ反撃を受けて、若干怯んだのは間違いなかった。

あの瞬間に逃げ出していなければ、今の自分はここにはいなかっただろう。


致命傷を与えるには、到底至らなかったとはいえ、この結果は紛れもない僥倖だろう。

なにせ、生きているのだ。生きてさえいれば、きっとどうにでもなる。


…だが。と、ふと思う。

そもそも僕は「死ぬ」という素晴らしい選択肢を発見し、実行に移そうと動いていたのだ。

今こんなにも必死で生きようともがいているのはあまりに滑稽ではないだろうか。


「死んでいれば…」


少し、後悔する。

だが、まぁいい。この現実の謎を知りたい。

自分はなぜあれで死んでいないのか。

何故こんな場所で目覚めたのか。

知りたい。…いや、知らなくては。


立ち上がり、辺りを見渡す。

そこにはさっきまでも何も変わらぬ、鬱蒼とした森林地帯が広がっていた。

時刻はまだ、夜のままであるらしい。


「夜か...さっきの様に獣が居てはしょうがない。」


夜に探索することを止めといた。

そこで、サバイバル術を身につけていた僕は、至る所から材料をかき集め、焚き火を作り、近くにある大きな石でナイフを作り、槍を作った。


「よし!これで獲物を捕らえることができる。」


食材は朝に捕らえるつもりだ。

今は虫を食い繋いで、生きるしかないと思い、虫を捕まえ始める。


「ここには沢山デカい蜘蛛がいるな。栄養たっぷりだから食おう。」

「甲虫も一応捕まえとくか。」


そして蜘蛛、甲虫を捕まえ、焚き火で焼く。


そして焦げが付くまで焼いて食べた。


「うーん...甲虫は美味しくないが、蜘蛛は行けるなぁ。」


タランチュラ程の蜘蛛が沢山居たため、沢山の栄養が取れたであろう。


そして食べ終わった。


「美味しかった。虫ってこんなにも美味しいんだな。」


虫を食べたことは1回もないのだ。

よく手を出せたものだ。

怖くはなかったのか。

そう...怖いよりも好奇心で食べたのだ。


「夜は虫が多いな。もう飯は食ったし、寝るか。」


そう言って軽々しく木を上り二股に分かれた木を見つける。


「ここなら眠れそうだ。」



ーーーーそうして眠りについた。ーーーー



「………けうぅ……ん?」

目が覚めると、死ぬ前の光景に戻っていた。

「………どうして……?」

僕は死んだはず………。

いや、これは夢だな。

死んだことを僕の潜在意識が認めていないんだ。

そうにちがいない。


僕は再び死ぬ事にした。

とはいえ、所詮夢だ。

痛みも大して感じないだろう。

僕は興味本位で自分の左目を刺すことにした。

カッターを手に取り、実行する。

「うぅっ!?」

すぐさま刺したモノを抜き捨てた。

痛い……ものすごく痛い……。

夢じゃないのか?現実なのか?

僕はこの夢を疑った。

痛みに悶えること約一時間。

ようやく落ち着いた。

おもむろに刺した目を開く。

するとその目には、先ほどまでいた木の上からの光景が目に映る。

どういう事だ?

右目には死ぬ前の現実が、左目には異世界の光景が広がっている。

一先ず体を動かしてみる。

こちらの肉体は思うように動く。

あちらの肉体も同じように動く。

立ち上がってみる。

こちらは何ともない。

あちらはバランスを崩して木から落ちた。

痛い……。

落下した痛みが全身に行き渡る。

だが、こちらの肉体はその際の傷を負っていない。

しかし、痛い。

今度は右目を閉じて異世界の肉体を動かす。

起き上がって、とりあえずそこら辺の草をむしる。

そして、棄てる。

右目を開く。

こちらは何も変わっていない。

反対に左目を閉じ、投げ捨てたカッターを取りに行く。

それを右手に取ったまま、左目を開く。

するとそのカッターは左目にも写った。

どうやらこちらのものはこうして異世界に持ち込めるらしい。

再び左目を閉じてカッターを地面に置き、捨てた雑草を右手に拾う。

そして目を開くが、その雑草はこちらには移らない。

試しに雑草を左手に持ち替え、同じように右目を閉じ、しばらく間を開けて開く。

するとその雑草はこちらに写った。

凄い、こちらとあちらが僕を介して繋がっている。

が、どちらの目で見るかによって動かせる体も切り替わる。

見ている世界の体が動く……。

これに意味はあるのか……?

まぁいいか、この状況を楽しむとしよう。


とりあえず僕は、森にいる自分をメインに行動することにした。

こっちの方が面白そうだからな。

一先ず森を抜けようと、僕は歩き続けた

しばらく歩き続け、約二時間くらいが経過しただろうか。

もともと体力に自信がない僕は、疲れはてていた

「はぁ……はぁ……」

喉が渇いた。辺りに水辺は無さそうだ。

僕は左目を閉じて現実の僕を動かす。

冷蔵庫から水の入ったペットボトルを取り出し、左目を開く。

現実世界から物を持ち込む能力は顕在だ。

こっちの眼にも水の入ったペットボトルが写る。

僕は即座にそれを開封し口にする。

「ゴクゴク……ハァ……」

空になったペットボトルを再び現実世界へ還し、捨てる。


「……さて、行くか」

再び僕は、森の隙間から微かに見える街を目指すことにした。


森を抜けると街を見つけて、少年はニヤニヤしながら街へ向かった。


───時刻は、昼間。

この雑木林から例の「街」までは、もうざっと80メートルくらいしかない。

少年は、ワクワク感を募らせながらもこの雑木林の手前にしゃがみこみ、柄にもなく躊躇していた。


ここから先は、木はおろか遮るものは何もない。

もし万が一、ここの街に何らかの住人がいるとして、それがあまり有効的な文化をもっていなかった場合、狙撃等のリスクに遭う危険性はとても高いだろう。


…しかし、静かである。

この辺まで近づいてくれば、そろそろ街人の声くらい聞こえてきそうなものだが…


「静か…だよな…」


しん…とした静寂が依然としてその場を支配していた。

ちなみにだが、時間の回り方については、どうやらこちらの異世界も、現実世界もほぼ同じであるらしい。

あちらで朝がくれば、こちらでも同じように朝がやってくる。

これなら、時差ボケのようになる心配もない。


改めて、例の「街」を観察してみる。


「街」は、遠目から見た限りだと、かなり広い範囲を白い壁で囲まれているようだった。

その壁の高さも結構なもので、近いづいてみると、ざっと50メートル程はあるだろうということがわかった。

壁の上部には、窓のような穴ボコが横に10メートルきざみくらいで空けられており、あそこからは外の景色がさぞや一望できることだろう。


それに、目を引くのはあの「門」だ。

壁には、30メートルはあるだろうバカでかい「門」が設えられており、見たところ、あのバカでかい「門」以外に、出入口といったようなものは見受けられない。

「門」は遠目で見た限りだと、全部で2箇所確認できた。今は、そのうちの左側に見えた方(めんどうなので、以下左門と略そう)の前の物陰に隠れ潜んでいる。


壁内の様子については、正直よくわからない。

遠目からは白を基調とした、至って平凡な町並みに見えた。建物の外観は、時代でいうと中世ヨーロッパあたりがふさわしいのだろう。

でも、あくまでも遠目でみた"イメージ"でしかないので、まったく定かではない。


どうにかして、中に入れないだろうか。


「…」


とりあえず、ここで逡巡していても無意味だ。

左目を閉じ、右目を開ける。


現実の世界だ。

部屋は相変わらず僕が流した血液で真っ黒になってしまっていた。

だが、そんなことはどうでもいい。

階段を上り、二階にある自分の部屋にいく。


ドアをあけ、部屋の中にある戸棚を開く。

たしか…ここらへんにあったはずだ。


あった。双眼鏡だ。

そして、これまでと同じ要領で右目を閉じ、左目を開ける。

そこには、例の異世界が広がっている。

一先ず、あの壁にある穴ボコ。

"窓"の中を覗いてみようかと思ったのだ。


双眼鏡を覗き込む。

まあ…大方予想通りだが、真っ暗で何も見えない。

一個一個、丁寧に見比べてみたりもしたのだが、

やっぱりよくわからないままだった。


仕方ない。ここはやはり、大胆な行動が必要そうだ。

狙撃される…という可能性もある。だが。


少年はゆっくりと立ち上がり、「門」から約80メートルほど離れているこの雑木林からとうとう姿を現した。

そして、そのまま躊躇いもなくぐんぐん例の「門」へと近づいていく。林から出てしまえばあとはもう迷いはなかった。


50メートル…40メートル…順調に門へと進んでいく。ラッキーのことに門にたどり着くまで、狙撃に遭うようなこともなかった。


そびえ立つ巨大な「門」に手で触ってみる。

すると驚くべきことがあった。

温かい…

これは不思議だ。石の感触とともにやや熱いくらいの熱が手のひらを通じ伝わってくる。

石で出来ていそうなので、てっきり冷たいものと、何の疑いもなく思っていたが。

門の中に、何か熱源になるようなものがあるのだろうか。


石造りの門はよくよく見てみると、ところどころひび割れていたりして、結構古いものだということが分かる。


一応、と思い、押したり、どうにか引っ張ってみたりもしたのだが、「門」はビクともすることはなかった。


「…仕方ない。」


とりあえず、門は2箇所確認できている。

左門がだめそうだったなら、右門に向かうまでだ。


そうして、今度は白い壁づたいに右門の方角へと雑木林を進んでいく。


道中、白い壁に触れてみて思ったのだが、どうやら熱は「門」に近いほど、より暖かくなるらしい。逆に、離れれば離れていくほどただの冷たい石の壁だ。

10分ほど、歩いただろうか。ほんの数百メートルの距離ではあるが、慣れない道なのでどうにも時間がかかってしまった。


右門は、先程の左門と比べると、更に古びているように見えた。

蔦や雑草などがところどころ生えているし、壁の具合もヒビやしみのようなものがずいぶんと目立ち、白というよりはカーキ色のようになってしまっている。


肝心の「門」に関していえば、ラッキーだった。

左門はきっちりと扉が閉まり、ビクともしなかったが、右門の方は僅かではあるが"開いている"

ちょうど、ひと一人がやっと入れるかぐらいの隙間しかないが、どうにか侵入できそうだ。


入るか。門に手をかける。…冷たい。

どうやら右門とは門の仕様が違うらしい。

あるいは、この門を制御しているシステムのようなものが、もう右門では機能していないのか…


「(───よし)」

心の中で呟き、右門の扉へ身体を縮こませ侵入した。


…?

真っ暗だ。何も見えない。

これだけ大きな門の前が真っ暗というのは驚きだ。

よく目を凝らして見るが、光源など一つたりとも見当たらない。

今は真っ昼間のはずだ。第一、かりに夜中だとしても暗すぎる。

「月」がこの世界にもあることは最初の頃に確認できているので、この"暗さ"はありえない。

…とすると、屋内なのだろうか。


しかし、どうにも納得いかない。

普通こうゆう場合。街に面した広間か何かがあるモノじゃないだろうか。


ふと不安になり振り返ってみるが、入ってきた隙間からは、ちゃんと光が覗いていた。

…さてどうするか。


しかし、せっかく来たのだ。

少年はそのまま進んでいくことにした。


「…」


真っ暗な中、何処へともわからぬ道を進んでいく。


その時だ。何かが顔にあたった。真っ暗なので何も見えないが、あたったものに手を伸ばして掴んでみる。

これは…木の枝かなんかだろうか。

進むにつれて、どんどん木の枝は増えていった。これじゃあさっきまで歩いてきた雑木林と同じだ。


そして、苦労して進むこと2分くらいだろうか。

あれは…光……?

かなり遠くの方にだが、光源がある。

近づいていくにつれ、どんどん光は強くはっきりしたものへとなっていった。


そして、とうとう草木をかき分け"外に出れた"


…いや、"中に入れた"。という言い方の方が正しいのかも知れない。

まあ…どっちでもいいか。


街中の様子は、外から見たものとはかなり違ってみえた。

まず、視界が悪い。霧が出ているのだ。

霧など、外からの感じでは出ていなかったと思うが…


それに、やはりおかしい。どの家屋も、ボロボロなのだ。

もっと立派な白い建物が連なっていたはずなのに。

家屋はほぼ全ての天井が崩落してしまっており、壁だけのものがほとんどだ。

いや、その壁さえも結構な割合で原型をとどめておらず、崩壊の一途を辿っている。


地面に目を移すと、石造りの地面もヒビだらけで、道には草木がところ狭しと石の隙間から生い茂っていた。


それに、やはり人の気配もまるで感じない。無人なのか。


とりあず、更に奥へ進んで見ることにする。


奥へ進むと……



異臭がしてくる。そして霧が濃くなってきた。10m先も見えないぐらいに。


よく目を凝らすと。

何やら人間の死体が転がっているではないか……


「臭すぎる……」


戻しそうなぐらい悪臭が漂っている。


ここで引き返すか、進むか、

進む先には血が滴り落ちているのが見える。


「……」


引き返しても無駄と思い、

先へ進む


すると変なやつが大勢居た。

変なやつというのは、説明しよう。

ピエロの服を来て目は真っ赤で斧を持っていた。そしてもう一方の手で人間の肉片を片手にして、人間の死体を何人も置いて杯を上げていた。



まだ霧の中に居たため、身バレはしてないようだ。


1歩踏み出せばどうなるか…考えたくもない……


暫し様子を見ることにした。


すると段々と霧が晴れてきたのだ。


ヤバいっと思い後ろに下がろうとした直後、枯れ枝に足を引っ掛けて大きな音共に倒れてしまった。


「誰だ!!っ」


見つかった!!

ヤバい!!


逃げなきゃと思った直後に上からナイフが降ってきた。


「なっ!」


一心不乱で避けたが、頬に軽く傷を負ってしまった。


その傷から血が滴ると、


「人間、!?人間だ!!人間の匂いがする!」


すると

その他のピエロの服を来たヤツらがこっちへ向かってきた。


「何処だ!!何処だ!」

「血の匂いは新鮮だ!」

「新しい獲物は何処だ!」


と叫びながらこちらへ向かってくる。


叫び声すら上げれない。

どうすればいい?


でもここで死ぬのは嫌だ。

死ぬのなら別なところで死ぬ!


と思い。


手探りでやっと見つけた斧を片手にピエロに襲いかかる。


「うおぉおおおぉお!!」


ピエロは力が無く貧弱だ。これなら倒せる。

バッサバッサと切り倒していく。


……ガギンっ!!


と何か硬いものに当たった。


その目の前にあるのは石で出来た木だった。

その瞬間ピエロ達が一斉に姿を消した。

何だったのか……

すると石で出来た木から精霊が現れた。


「人間……貴方……は?なんの……為に……きた?……」


その木の精霊は力がないようにみえる。


いや。ないようにではなく実際にないのだ。


「木の精霊?」


「はい」


今でも息途絶えるぐらいの声で呟く。


「ここ……に……きては、いけ……ない……」


木の精霊が警告した。


それでも尚行こうとする。


「ダメ……です……」

「もう……壊さない……で……」


壊す?なんの事だかというように首を傾げる。

そして後ろを振り向くとピエロ達は全く姿を現さなくなった。

いや木の精霊が止めたのか。

「……」

「精霊……さっきのは警告?」


その言葉も通らず、先にいく。


霧はピエロ達がいた所からは徐々に薄くなっていっているのだ。


この先死の拷問部屋へと連れてかれるのも知らずに、


先へ先へと進んでいく。

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自殺少年 しあん @shian-himezuki

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