第2話


 頬を撫でる様に何かが頼加の頬をくすぐる。

 眉間に皺を寄せ起き上がると、体中が痛い事に気が付き、違和感を覚える。

 

 その時、大きな突風が吹いた。その風の勢いで身体が傾き自分の居た場所を思い出した頼加は何とか隣にある枝を掴み、枝にぶら下がる様に体制を整えた。

 片手でぶら下がりながら目の前の絶景に目を奪われる。

 


 綺麗、吸い込まれそう。

 大きな空にそれを飲み込むように広がる大きな海。暗めの青と青のコントラストを沈みかけた赤い夕陽が淡い赤で包む。

 そんな幻想的な風景に自分の居た状況も忘れて見とれていた。

 

 高台のてっぺんの丘にある大きな木のその根元付近にある太い木にぶらさがっている少女、頼加は情景に似合わず小柄で胸の大きい眼鏡をかけたパッと見、地味目の女生徒だった。


 






 ぶら下がった枝の足元から地面までは五十cmほどあったが頼加は難なく飛び降りた。上手く地面に足をついたが踏ん張りが足りなかったのか後ろにしりもちをつく。


「痛たたたっ」

 ふらつきながら立ち上がり尻を右手で擦り、斜めに傾いて顔から落ちそうになっていた眼鏡を定位置にかけ直した。

 頼加は見た目に反して好奇心旺盛であったがドジだった。


 カラスの鳴き声と共に学校のチャイムの音が少し響く様に耳元に届いた。

 服についた泥を払い落とし、大きく上半身だけ伸びをした頼加はまだ眠気は取れない様で、欠伸を噛み殺しながら目元を擦る。


 また、授業をサボってしまった。

 今月に入って三回目、そう、もう三回目。

 起きた直後は鮮明に覚えていた夢も時間が経つにつれて記憶が薄れていく。



 薄れた中にも覚えているのが高齢者男性の笑った顔。

 思い出そうとしてもはっきりとは思い出せない。


  分かることは、私は彼の事がとても大切と思っている事。

 その夢の中の私は、もう年を取った老婆で、だけど介護している私は彼の顔を見ると心が安らぎ胸の奥が切なくなる。

 身体の節々の痛みはどちらが現実か分からないほどにリアルで、だけどそちらが現実であって欲しいと心から願えるほど夢の私は幸せだった。


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シークレットリボン 君に届いた向こう側〜死神研修生の受難〜 やまくる実 @runnko

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