転生したらコロナウィルスだった件

樋口 今宵

第1話 序章「転生したらコロナウィルスだった件」

2020年4月、時代はコロナウィルス関連のニュースばかりだ。


俺は、転生比那(てんじょう ころな)。

都内のアパートで一人暮らしをしている売れない漫画家。

35歳にもなって、未だに彼女いない歴=年齢の典型的な陰キャ・コミュ障だ。

漫画を描いては出版社に持っていっていたが、今まで採用されたのは1冊だけ。

しかも、ページの10分の1にも満たない大きさの小さなスペースに、1つキャラクターが載せられただけだよ。


そんな俺の唯一の趣味は、4ちゃんねるでいろんな人のアンチをして、誹謗中傷を書き込むこと。

あれはとても爽快で、ストレス発散になるんだ。

2012年頃から書き込みを続けているから、もう8年も経ったのか。

何度もやめようとはした。

だが、やはり4ちゃんねるのページを開いてしまう。

24時間ずっと書き込み続ける日も少なくなかった。


流石に、飯くらいは食うさ。こんな社会の "ゴミ" みたいな人間だけど、一応人間だからな。

ある日、俺は途轍もない嫌気と怠さを感じながらも、部屋に落ちていた小銭をポッケに入れ、1か月ほど使っている臭いマスクを着け、近くのコンビニに行こうとした。

空は俺の心と通じ合っているのかと思うほど、厚い雲で覆われていた。

コンビニは、家から地味に遠いのがイラっとする。

5分ほど歩いて、やっと見えてきた。

そう思ったその瞬間、全身に大きな痛みが走った。

「い...痛い!!」


「ここは...どこだ...?」

何もない世界。

地面もない。

太陽も見えない。

ふわふわ浮いているような感覚だった。

辺り一面真っ白。

というか、色という概念が無いかもしれない。


この空間には時間という概念がないみたいだ。

ここに来てから、どのくらい経ったかが全く見当がつかないのだ。


突然、この空間に大きな声が鳴り響いた。

(お前は、死んだのだ)

太く強い、男の声。

訳も分からないこの空間に、その声がこだまする。

「どういうことだ!!なんで死んだんだ俺は!!」

「ここはどこなんだ!!」

「早く出してくれ!!」

こんなことを思い浮かべたが、声は出なかった。


そして、また男の声がこだまする。

(お前は社会のゴミだ)

(くずだ)

(そして、お前はいまウィルスに転生したのだ)

(これからはSARS-CoV-2-18As84Uy48として、生きるんだ)


名前長っ。

いや、覚えられないよそれ。

Gougleのアカウント作るときに「推奨されたパスワード」で出てくるやつみたいじゃん。

そんなどうでもいいことを思っていると、自分が丸い球体のようになっていることに気が付いた。

そして周りにも、同じような丸い球体がいっぱいあった。


これが、「ウィルス」か、、、

そんなことを考えながら、とりあえず周りに合わせて前進していくのであったーー


つづく。

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転生したらコロナウィルスだった件 樋口 今宵 @koyoi_higuchi

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