まず、仮想空間という世界を丁寧に語る文章に心を打たれました。
凄く濃厚なファンタジーで、独特な世界観が漂っています。
さらに１話自体が短編内容になっていて、気楽にサクサク読めるのもポイントが高いです。
これはファンタジー好きには溜まりません。
今時、こんな一直線なガチガチなファンタジーも珍しいです。
また、特に読者を惹きつけるような目立った色気やコメディー感もありませんが、私的には久々に秀作な作品を読ませていただきました。
作者さん、良い意味で真っ向な勝負に出ましたね。
まさに読者狙いではなく、自分の好きな表現を貫いた勝負師な内容で、近未来のファンタジー好きなら読んで損はさせません。まずは読んで見てください。

この世界を守りきった主人公を、その世界ごと抱きしめたい――そんな物語でした。
すでにＳＦの範疇を超えて、物語、その意味そのものの結晶です。

複数の異なる場面の中での主人公と、世界の境界線たる輪郭の、明瞭度に差異があって、それはきっと彼のこころと、世界との関係性を反映しているのだと思います。
そういう濃淡と、ストーリー、こころとリアリティが、展開されていきながら、私を引き込んで行きました。

次の話が来るのが楽しみでした。

是非読んでみて下さい。