第2話 依頼成立
(100万円ってあの100万円だよな...しかも、女の子を三日預かるだけなんて怪しすぎる。犯罪の片棒でのつかまされるのか?それとも、怪しい組織に狙われているとか?)
そんな突拍子もないことを考えていたが、ふと我に返って、
「まあ、取り敢えず立ち話もなんですし、中でお話ししましょう。」
そう二人に告げ、中へと促した。
「手短にお話します。あまり時間をかけたくないので。」
二人を部屋の中に入れ、応接セットのソファに座らせ、冷たいウーロン茶テーブルの上に出した後、対面のソファに俺が座った後、着物の女性が切り出した。
「私は
「神野みずきです。よろしくお願いします。」
みずきと紹介された少女は礼儀正しく挨拶をしてくれた。俺も軽く会釈を返す。
「私は、ここで便利屋をしております宮下巧と申します。それで、先ほどお話しいただきましたが、娘さんを預かってほしいとはどういった意味で?」
「言葉通りの意味ですよ。今日を含め三日間、娘を預かってほしいのです。報酬は前金で30万円。その後、無事三日後まで面倒を見てくだされば70万円をお支払いいたします。」
詳しい条件を聞いて、流石に考え込んでしまった。この依頼はかなり怪しいところが多い。しかし、今すぐにお金が必要なのは事実。危ない橋だが、引き受けるしかないか。
「わかりました。この依頼お受けしましょう。しっかり娘さんをお預かりします。」
依頼を受けることを告げると、神野かよは茶封筒を置いた。
「これが前金の30万円です。最後に二つ。この依頼のことは誰にも言わないでください。また、明後日の17時に迎えに参りますのでその時間までにはここにおられておいてください。その間は何をしていただいてもかまいません。」
とだけ伝えると、神野かよはまるでこの場所から少しでも早く立ち去りたいかのようにそそくさと立ち上がり、ドアに向かう。俺も見送るために立ち上がり追いかけると、ドアに手をかけたところで神野かよが耳打ちをしてきた。
「くれぐれもあの子の言うことには気をつけてくださいね。」
(気をつける?なんでだ?)
そう考えているうちに神野かよは去っていった。
(まあ、まずはみずきちゃんと仲良くならないとな。)
「何をしてるんだ?」
「...スマホゲームです。」
「そうなんだ。楽しいか?」
「別に。暇つぶしだから。」
「そう...なんだ。」
「...」
「...」
無理だ。神野かよが去ってから2時間たったが、
(流石に子供の前でたばこは印象悪いかな)
と思い立ち、すぐに火を消して机の上の灰皿も引き出しの中にしまった。
「私は気にしませんよ。」
どうやら、気を遣われたようだ。11歳に。
「大丈夫だよ。みずきちゃんの前じゃ吸わないようにするだけだから。」
「そうですか。ならいいんですけど。」
やはり、言葉遣いや態度を見ると11歳にしてはしっかりしていると感じる。背伸びしている感じもなく、どこか達観してそうとさえ、感じさせる。まだ11歳の少女なのに。そんなとき、神野かよの最後の言葉が引っかかった。
(”気をつけろ”か。我が儘だとか、大人を小馬鹿にしてくるとかだと思っていたけど、そんなことはなさそうだけど)
「...なにか?」
そんなことを考えながら、じっと彼女を見続けていてしまっていたらしい。慌てて弁解をする。
「いやあ、ごめんね。なんでもないよ。」
「もしかして、ロ、ロリコンってやつですか。わ、わたしのこといやらしい目で見てたんですね!」
初めてみずきの表情が変化した。顔を赤らめて、少しの侮蔑と恥ずかしさが表情から見て取れた。年相応の反応が見れて安心したが、このままではあらぬ疑いをかけられてしまう。
「違うわ!ちょっと考え事をしてただけだよ。てかロリコンなんて言葉最近の小学生は知ってるんだな。」
みずきはふぅと息を吐いて、
「結構みんな知ってますよ。で、ロリコンじゃないんだったら一体私の体を見ながら何を考えていたんですか。」
伝えても良いものか迷ったが、ここまで来たらもう伝えるしかないな。
「今から言うことは、かよさんには言っちゃだめだよ。さっきかよさんが帰るときに、みずきちゃんに気をつけろって言われたんだ。だから少しそのことを考えてた。」
そう伝えると、みずきはさっきまでとは打って変わって暗い顔になってしまった。
「やっぱり、お母さんはわたしのこと嫌いになっちゃったんだ。」
そう呟くと、意を決したように顔をあげた。
「宮下さんには、これから3日間お世話になるのでお伝えしたいと思います。」
そう、みずきが切り出した。そして、その後に言われた一言は想像をはるかに超えるものだった。
「私は、未来を見ることが出来るんです。」
便利屋と未来視少女 上山修 @syu1026
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