便利屋と未来視少女

上山修

第1話 出会い

 人は今や80年生きる時代らしい。

 俺はたばこを吹かしながらそんなことを考える。

 まだ28の俺には80まで生きていることなど想像もつかない。

 今を生きていくのに精一杯。とはいえ...

「今を生きることも厳しくなってきたよなぁ」

 そうつぶやく俺の前にはほぼ0に近い残高が記入された通帳があった。

 俺は最近ではあまり聞かなくなった個人経営の便利屋をしている。

 個人経営と聞くと聞こえはいいが、実際にはお世辞にも綺麗とはいえない雑居ビルの二階を事務所兼自宅として使い、大手のように何人もの社員がいる訳ではなく、自分一人ですべての依頼をこなしているのだ。つまり社員は俺、宮下みやした たくみただ一人というていたらく。これで依頼がたくさんあれば別に言うこともないんだが、今月も半ばにさしかかろうというのに受けた依頼はわずかに3件のみ。

「一発でかい依頼がどこからか舞い込んでこねぇかなぁ」

 そんなありもしないようなことをつぶやいていると表のチャイムが鳴った。

(お、依頼者か?)

「今、開けまーす」

 そう言い、ドアを開けると着物を着た40代くらいの女性と10歳くらいだろうかロングヘアーのかわいらしい少女が立っていた。

「便利屋ってお金さえ払えば何でもしてくれるんですよね?」

 目の前の着物の女性はドアが開くなり、そう言った。

「まあ、そうですけど...」

 いきなりだったので曖昧に答えてしまう。

「100万円」

 着物の女性が言う。

「え?」

 聞き慣れない金額に思わず聞き返してしまった。

「100万円支払いますから、この子を...私の娘を三日間預かってもらえませんか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る