episode7「憑依」

 侵入者は18階層からどんどん深く潜りあっという間に50階層へと到達した。

 以前は99階層まですぐに辿り着いたパーティだけあって流石の速さだな。しかし今回は布陣が違う、以前より強くなったティアと以前はいなかった堕鬼がいる。

 早く奴らに以前の礼をしてやりたいと体がうずく。

 そんな俺を見て不安そうな顔をしていたフーニャも少し顔が明るくなった。


「ティアお姉ちゃんと堕鬼お姉ちゃんなら大丈夫だよね」

「勿論だあの2人は俺と手合わせしわりかしいい線まで行っていたからな万が一にも負けることはないだろう」

「よかった〜フーニャ少し不安だったんだ……けどみんな強いから大丈夫になった!」

「ようしフーニャは偉いな」


 自然に俺も笑みが溢れる。危ない危ないこんなとこティアにでも見られたら幼女好きというレッテルを張られてしまうところだ。

 そうこうしているうちに奴らは堕鬼のいる89階層へと近づいていた。


「堕鬼聞こえるか?」

「何でありんすかトオル殿」

「侵入者が今80階層に入った、お前のところに行くのも時間の問題だ。お前は十分強いが敵には影魔法を使うソーサラーがいる何人か伏兵がいる可能性もあるから注意しろ」

「わかりんした忠告感謝するでありんす」


 そして遂に堕鬼の元に奴らが到達した。


「この階だけ前と違ったな……お前ら周りに気を付けろよ」

「「「「おう」」」」

「その必要はないでありんすよ」

「誰だ⁉︎」

「人に名前を聞くときは……って長くなるのは面倒でありんす覚悟するでありんす!」


 戦闘が始まった、俺はその場を映し出す機械を開発し最下層で見守る。

 圧倒しているのは俺の予想通り堕鬼だった、炎妖術の魂灸や氷妖術の霊砲など様々な妖術で相手を翻弄している。

 奴らも妖術を知らなかったらしくかなり驚いているようだ。


「面白いもん使うなお前……」

「私の妖術……魔法はお前たちのような者への見せ物じゃないでありんすよ!」


 堕鬼の言葉が何故かだんだん荒々しくなってきている。

 体力や魔力が減っているようには見えないし……まぁ大丈夫だろう。


「もうそろそろか……」


パーティリーダーがそう呟いた途端堕鬼が苦しみ始める。

 俺は何が起こったのかわからないまま時間だけが過ぎていく。

 しばらくすると堕鬼が静まりゆらゆらと動き始める。


「完璧にかかったぜ」

「よし、そこのお前お前の主人を教えろ」

「はい、私の主人は魔王四天王の1人であるトオル殿でありんす」

「やっぱり魔王軍の関係している場所だったか」


 その会話を聞き俺は理解した。

 堕鬼がかかったというものの正体は恐らく精神支配の類の魔法だろう。

 また厄介な魔法を使ってくれたものだ、このままでは恐らく99階層でまたティアはやられてしまう。

 はぁと一つため息をつき俺は99階層へと向かう


「あら?どうしたのかしら私の陣中見舞?」

「堕鬼が精神支配と思われる魔法をかけられて奴らの手に落ちてしまった」

「⁉︎ちょっとそれって大丈夫なの?」

「解除するのは容易だろうが解除するまでが大変だ。何しろ奴らに加えて堕鬼がいるというのはなかなか厳しいぞ」


 2人顔を見合わせ悩みこむ。


「まぁでもやるしかないんじゃない?どうせあんたもいるし大丈夫でしょ」

「ん?そりゃななんといってもこの俺だからな」


 そのまま俺たちは2人笑い合い奴らを待つ。

 しばらくして99階層に侵入者が現れる。


「ありゃ?お前は確かこの前来たときボコしてやった女じゃねーか」

「その件を掘り返すってことはよっぽどやられたいようね」

「おい、落ち着け」


 奴らは堕鬼が手中に落ちたため余程自分たちに自信が付いたようで余裕の表情で煽ってくる。

 さて、どう攻略したものか……思考を巡らせるもやはり堕鬼の精神支配が厄介になる。


「まぁ行き当たりばったりで行くか……よし、始めようじゃないか!」


 俺の言葉がフロアに響き渡ると同時に奴らは仕掛けてきた。


「ユウキ!その女への命令を任せたぞ!」

「了解」


 そういうとソーサラーが堕鬼の元へ行き何か命令する。

 その内容が聞き取れなかったのが不安だが気にしている余裕はなかった。

 堕鬼は命令を受けすかさず動き回る。


「トオル殿!今度は負けんでありんすよ!」

「ふっ!いいだろうかかってこい!」


 俺の後ろではティアが奴らを圧倒している。このままいけば奴らを封じ込めるのは時間の問題だ。

 ならばと俺は堕鬼の精神支配を解除しにかかる。


「おっと、やはり支配されても癖は変わらないようだな堕鬼!」

「それを指し言ひても今は負ける気がせんでありんすよ!憑依かまいたち!」


 憑依は知ってる……しかし今この場面で使うということはまだ何かあるのか……

 仕方ない相手の手の内がわからないうちは距離を取るしかないか……


「あら、トオル殿逃げ腰でありんすね?かまいたちは一度見せたことありんしたよね?」

「だからこそ不吉に感じるからお前から距離を取るんじゃないか」


 緊迫した状況が続いていた。

 俺の額に自然と汗が流れる。


「おやおやトオル殿どこか苦しそうに見えますが大丈夫でありんすか?」

「正直ベリアルの訓練を思い出すほど辛い状況だよ」

「ほぅトオル殿の師の方でありんすね、ではここで畳み掛けるでありんすよ!重複憑依大蛇!」


 そういった堕鬼の姿はみるみる変わっていく。

 重複憑依‥…また厄介なものを隠していたものだ……


「そんな術を隠していたんだな堕鬼……」

「そういうことでありんすねトオル殿」

「また厄介そうな妖術じゃないか」

「この妖術は強力な術なので故郷でも私しか使えない術でありんすゆえ見せるわけにはいけなかったのでありんすよ」


 つまり堕鬼は俺がここで敗れると確信しているということか……


「ふっ、俺も舐められたものだな……よしっ!ここからは本気だ憑依ダークエルフ!重複憑依デーモン!」


 そして戦いは佳境へと向かう。


To be continue

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勇者パーティ(仮) 加賀谷将隆 @kagayamasataka

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