無敵の人が10万字かけて自分をころす話

えんとつ

エタるに50ペリカ


 音がする。


 白い天井が見えた。


「もういいだろこの景色」


 目が覚めたことに気が付いた。


 とりあえず寝覚めに作ったこぶしで窓ガラスをぶち割る。今日も快晴だ。呪いたくなる。敷き布団をひっぺがして外に放り投げた。

ダメ人間製造兵器の着る毛布を着る。

はうわあああああ~~~…

あくびを噛み殺しながらいったん床に転がる。どうしてまた。どうしてまた。

 とりあえず昨夜から点けっぱなしにしていた折り畳み式の縦長卓上ライトを消し、コンセントを引っこ抜く。そのままコンセントを手に持ち、ジャイアントスイングの要領で回る回る。近くにあった液晶ディスプレイに激突し、画面にヒビが入る。それをまた窓に向かって全力投球。ねむたい。

 右隣の部屋のおっさんのイビキがうるさいので、壁をぶち破って注意しに行く。

くたばりやがれジジイ!!

 ストンピングしようとすると、足先が触れる直前にぼんっとまるで変わり身の術を使ったかのようにおっさんが消えて、元の場所にはやっすいビニールのダッチワイフが現れる。

思いきり蹴り飛ばすと、部屋中で跳ねた。


ドドドん!ドドドん!ドドドンドん!


 いつも午前中の決まった時間になると、上の住人が軽く運動を始める。どうやらここが壁薄々の集合住宅だということが分かってないらしい。引っ越してきてから何日目だあのタコは。

 力一杯ジャンプして天井に穴を開け、その拍子にニョキと生えてきた右脚を奈落へと引きずり下ろす。それもやはり手を触れるすんでの所でダッチワイフ。窓から投げる。

 そういや左隣のおっさんは昨夜女を連れ込んでたな。許しておくわけにはいかねぇ。

一言申しに壁をぶち破って 接触を試みる。

トランクス一丁のおっさんは呆然と突っ立っている。

「いったいどういう了見なんだジジイこの野郎」

脚払いを仕掛けるもやはりダッチ。窓から捨てた。

ピッピピ…ピッピピ…ピッピピ…

ピッピピ…ピッピピ…ピッピピ…

ピッピピ…ピッピピ…ピッピピ…

ピッピピ…ピッピピ…ピッピピ…

あー出た出た出た出た、向かいのクソ。

てめえでタイマーセットしたくせに全然消さねぇでやんの、やかましくてしょうがねぇ。

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