SS1●2度目の結婚式の後
ロゼリアーナとエドワードは灯火に照らされたモチェスの教会を出ると、初めて顔を合わせた広場の噴水前を通ってランボルトの店に向かって歩き出した。
「ロゼリアーナ、そう言えばリカルドとアーマンドの手合わせを見たと聞いたのだが、その……恐ろしいとは思わないのか?」
「あらエドワード様、私は辺境で育ちましたのですもの。手合わせはお屋敷の者達の間で日常的に行われている環境でしたわ。私も剣の練習をしたかったのですけれど、両親と兄からは「女の子だから」と反対され、お屋敷の皆からは「自分達が守るからご安心ください」と言われてしまいましたので諦めましたけれど、手合わせを見たり、森で行われる訓練や実戦のお話しを聞くことは幼い頃から好きでしたわ」
「それでは城では退屈だっただろう?」
「確かにそう言ったことは出来ませんでしたが、知らないことや覚えることはたくさんありましたから退屈ではありませんでしたわ。それにエドワード様からお話しを聞くことはありましたし」
「城では君の実家みたいに全ての者が戦えるわけではない。だからと言って自衛の手段が欲しくなったりしないよね?」
「お城の警備については配していませんから大丈夫ですわ。何より……」
並んで歩いていたロゼリアーナは立ち止まるとエドワードの碧眼を見つめて満面の笑みで続けました。
「エドワードがいてくれますから」
「っ!!」
ロゼリアーナにつられて立ち止まったエドワードは向けられた笑顔と言葉に胸が詰まって熱くなった。
5年前に一目惚れした笑顔が今は自分に向けられ、可愛らしい口で自分を信頼していると言ってくれた。
もうランボルトの店には行かずこのまま自分が滞在中の宿屋へ連れ戻ってしまいたい気持ちで一杯になる。
「ロゼリアーナ……っ」
ようやく名前を口にしたものの、自身を律する為に力を入れた体は硬直し、ようやく自分のもとに帰って来た彼女のことを愛しいと想う気持ちで胸がいっぱいになり言葉が続かない。
「エドワード?」
きょとんとしながら小首を傾げて可愛らしく見上げたロゼリアーナの仕草は、エドワードが理性で止めていた引き金を引いてしまった。
「っ!…………戻ろう」
「え?きゃっ!」
硬直から溶けたエドワードは一言言うと、突然ロゼリアーナの腰と膝裏に腕を回し、彼女を抱え上げ終わる前に歩き出してい。
向かう先を皆が待つと聞いているランボルトの店ではなく、滞在中の宿に変えたエドワードはロゼリアーナを腕に抱えたまま真正面を見据えて速足で歩き進む。
いきなりのエドワードの行動に驚き、自分の状況が恥ずかしくなったロゼリアーナはエドワードの胸に顔を伏せてしがみついた。
「ぐっ!」
ロゼリアーナを抱えた腕に力が入ってその身をさらに引き寄せ、胸にしがみついたロゼリアーナを隠すようにして進む。
建物の影から二人を護衛していた者達のうちの一人がランボルトの店に向かった。
エドワードとロゼリアーナが来ないと連絡を受けたランボルト達は、普段冷静に見えるエドワードの行動に驚いたものの、ほとんどは嬉しそうに笑っている。
そして主役達の到着をこれ以上待つことを諦めると、ホセルスの突然の声かけを受けて集まって来た者達は自国の国王夫妻の幸せを願って、隣国の小さな店に準備された様々な料理と酒で祝杯をあげるのだった。
王妃でしたが離婚したので実家に帰ります 金色の麦畑 @CHOROMATSU
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