第659話 リボル・ケイン!小杉

 イメージしやすいように説明すれば……その塊はモーニングスターメイスのような形。

 すなわち、その先端にトゲトゲ頭がついていたのである。

 だが、これがモーニングスターメイスであれば、棒の先端はウニのようなトゲトゲ金属玉なのであるが……なぜか、仮面ダレダーの持つ棒の先端には……トゲトゲ頭をした人の顔がついてたのだ。

 そう! 何を隠そう! コレこそ仮面ダレダーの48の必殺技の「リボル・ケイン!小杉!」なのである!

 そんな「リボル・ケイン!小杉!」を頭上に掲げ、仮面ダレダーは迫りくる次元転移ミサイルに向かってジャンプをしたのだ!

「ファイト!!!! 一発!!!!」

 しなるリボル・ケイン!小杉!

 横一文字に振り抜かれたその頭髪は発生した遠心力によってさらに逆立っていた。

「リボビンタDぇ~~~~~ぇ~~」

 小杉さんの悲鳴が新幹線のように勢いよく走り抜けていく。

 だが、その声をまるで無視するかのように仮面ダレダーは体を思いっきり回転させる!

 その瞬間! 空から落ちてくるいくつかのコンドーさんが次々と消えたのだ!

 それは一見すると、小杉さんの大きな手でコンドーさんをビンタをしたかのようにも思えた。

 だが、ビンタしたのであればコンドーさんの小さな体は、男にビンタされた女のように大きく弾き飛ばされないといけないはずなのだ。

 それがどうだ!床の上には弾き飛ばされたコンドーさん達の姿はどこにも見えない。

 それどころか、コンドーさん達はイケメンアイドルにまとわりつくミーハーな女たちのように「リボル・ケイン!小杉!」のトン先にまとわりついていたのだ。

 しかし、思い出してほしい。このトン先についているのは手でなくて……小杉さんの顔であることを。

 小杉さんの顔だから、当然にコンドーさんたちをビンタすることなどできないのである。

 そう!DVやハラスメントではないのだ!

 その代わり、コンドーさんの柔肌にガブリ!

 小杉さんの大きな口がコンドーさんたちの柔肌をしこたま咥えこんでいた。

 何を隠そう!リポビンタDの「D」とは、真横から見た小杉さんの口の形を現していたのである。

 そして、最後にゴックン!

 口に咥えていた数本のコンドーさんを飲み込んだ。

「タウリン! チャージ完了!」

 ……って、そのコンドーさんの柔肌についているのは、タウリンではなくてデスラーのアルギニンのような気がするのですが……

 ま、いいかぁwww それよりも……なんか……小杉さんに生命が宿りだしているような気がするのですが……気のせいでしょうかwww


 だが、仮面ダレダーの攻撃はそれで終わったわけではなかった。

 着地とともに再び跳ね上がる黒茶色い体。

 それは、まるでノミのように素早い!


「仮面ダレダー流奥義! 天翔九頭閃あまかけるクズのひらめき!」

 天を駆ける九つの斬撃!

「ヒ~~~~ハ~~~~!」

 その瞬間、天から落ちてきた9つのコンドーさんが消滅した。

 マジか! この「リボル・ケイン!小杉!」の奴、マジでコンドーさんミサイルを消しよった!


「このクズ野郎!、俺の髪の毛うすなったやないかい! どないしてくれるんや!」

 リボルケインの先端についていた小杉さんが、ものすごい勢いで文句を言い始めた。

 どうやら、先ほどの斬撃によって頭についていたトゲトゲが何本か吹き飛んでしまったようなのである。

 って……これ……もしかして……BLACKはブラックでも、ブラマヨの方の小杉さんでしたかwww


 だが、そんなことはどうでもいい!

 トゲトゲが何本か吹き飛ぼうが、その剣筋はコンドーさんを確実にとらえていたのだ

 先ほどまで宙を舞っていたはずの次元転移ミサイルが煙を残してパッと消えたのである。

 そのあまりの速さに、それを見るクロトなど何が起こったのか全く分からない様子。

 まさに! その斬撃の速さは神速の域! 下手をすると第七の騎士の一之祐の斬撃と同じぐらい早かった。

 できる! マジでできるぞ! 小杉さん! いや!仮面ダレダーBLACK RH一!


 というか、タケシのどこに、こんな驚異的な能力があったというのであろうか?

 ハイクショップでルリ子に蹴飛ばされ血まみれになるタケシ。風呂場で漂白剤をかぶせられてもピンピンとしていた。

 そう考えると、その身体能力は凄いと言えよう。

 だが……ここまで凄いとはクロトをはじめ誰も想定していなかった。

 というのも、タケシは、立花どん兵衛とのプロレス勝負で一度も勝ったことがなかったのだ。

 ましてや、その姿を仮面ダレダーに変身させたところなど、誰も見たことがなかったのである。

 まあ、確かに、ヒーローとは人知れず活動するものというではないか。

 己が仮面ダレダーなどと口外するのは、よほどの目立ちたがり屋だけに違いないのだ。

 しかし、この本郷田タケシ……人一倍、目立ちたがり屋なのである。

 そんなタケシが仮面ダレダーに変身できるということを隠しておけるだろうか……いや、できはしない。

 実際に、デスラーの融合加工によってケツにウ〇コの装甲ができた時だって、嬉々としながら「クロちゃん! これ見て! カッコいいでしょwww」と大はしゃぎしたぐらいだったのである。

 ならば、タケシのこの能力はいつ開花したというのであろうか。

 そう……それはタケシのケツに融合加工されたタケコプターが順回転を行うことができるようになった時、いわば、先ほど屋台にて立花どん兵衛によって改良された時のことである。

 デスラーの失敗作と思われていたケツのタケコプター。

 第三世代の融合加工という割には、身体能力の向上があまり見られない。

 ケツのウ〇コ装甲?

 立花の眼にはそれは、あくまでも融合加工の副産物にしか見えなかった。

 ならば、この融合加工の真の姿は何なのであろう。

 リサイクルショップを営みながら、ありとあらゆる融合加工に触れてきた立花どん兵衛にはすぐに分かった。

 ――こいつは、風力エネルギーを取り込むことによって身体能力を驚異的に上げる第三世代の融合加工。

 だが……

 その回転が……どう考えても、エネルギーを取り込むには逆回転なのだ……

 ――ならば! その回転を順回転に戻してやればどうだ?

 それは、融合加工の根本的な改良になるだろう……すなわち、タケシの体に大いなる負担をかけるかもしれない……だが、やる価値はある……

 そして、今! 立花どん兵衛によって改良されたタケコプターは第三世代の融合加工としてその能力を開花した。

 ケツから噴き出す風力エネルギー、すなわち、プウ~ア!エネルギーを余すことなく活用することができるようになったのである。

 生じる順回転! それは、タケシの身体能力の大幅な向上をもたらした!

 ケツから放出される高濃度のガスによりタケシの体を時速400km/hの世界へと加速させたのである!

 そして、パワーアップした逆回転! ケツだけだった黒茶色い装甲が、いまや全身を覆いつくしていた!

 まさに攻防一体の融合加工!

 コレこそが、タケシにケツに融合加工されたタケコプターの真の姿だったのである。

 そう考えると……デスラーの才能もあながち馬鹿にはできない。

 立花どん兵衛がしたようにデスラー自身が自ら改良することができていれば、かなり凄い(?)道具だったのである。

 あと一歩……あと、少し……

 だが、その一歩が届かないのだ……

 そう……惜しむべきは、自ら失敗を認められないその性格……

 その性格さえなければ、デスラーもまた融合加工界に数えるほどしかいない天才たちの一角に鎮座していたかもしれないのだ。

 

「仮面ダレダー流奥義! 天翔九頭閃あまかけるクズのひらめき!」 

「こら! クズ! やめんか! 髪の毛がうすなるって言うてるやないか!」


天翔九頭閃あまかけるクズのひらめき!」 

「オイ! 人の話!聞いてんのか! やめんか! このクズ!」


天翔九頭閃あまかけるクズのひらめき!」 

「ああああああああああ! 俺の髪がぁぁぁぁぁぁア!」


天翔九頭閃あまかけるクズのひらめき!」 

 ピコン!

 ついに残った一本の髪の毛、もとい残った一本のトゲが、まるで鬼太郎の妖怪アンテナのように逆立っていた。

 どうやら、この様子……小杉さんは何やらひらめいたようで、「ウッシッシシ~ 今に見とれよぉ~! このクズがぁ~♪」と、いやらしい笑みを浮かべていた。

 そんな小杉さんは仮面ダレダーに耳打ちする。

「ねぇ、ねぇ、仮面ダレダーさんwww このままチマチマやってても埒があかんことないです? なら! ここは一気にドカンと最大出力できめちゃいましょうよ!」

 それを聞く仮面ダレダーは驚いた。

「最大出力だと!?」

 というのも、最大出力ともなれば充填したガスは持たないかもしれないのだ。

 だが、小杉さんが言っていることもあながち間違いではない。

 そう、いまだにコンドーさんの群れが仮面ダレダーにめがけて降り落ちてきているのだ。

 ――ならば、ここは小杉さんの助言に従ってみるか!

 仮面ダレダーは「リボル・ケイン!小杉!」背後にひいて膝に力を込めた。

「この一撃で決める!」

 そして小杉さんもまた大きく息を吸い込んで!

「ヒ~~~~ハ~~~~! ファイトぉ~! いっぱぁ~っつ!」

 と、顔を真っ赤に赤らめた。

 そして、仮面ダレダーは落下してくるコンドーさんの群れに向けて大きくジャンプしたのである!

 

 だが! その時であった!

 控室のドアから一人の男が飛び込んできた。

「タケシ! それは罠だ!」

 そう、その男は仮面ダレダーを見るや否や大声を上げたのだ。

 というか、この男、一目見て仮面ダレダーがタケシであることが分かったというのであろうか。


 控室に入ってきたこの男こそ! 何を隠そう立花どん兵衛!その人だったのだ!


 うん? あれ?

 立花どん兵衛って……確か……外の屋台で酒代を取りに行ったタケシの帰りを待っていたはずでしたよね?

 でも、もしかして……ここにいるという事は、屋台の酒代を踏み倒してきたという事なのでしょうか?

 いや! 違う! 違うのだ!

 これでも立花どん兵衛!ハイクショップのオーナーである。

 いかに個人事業と言えども信用は大事!

 金の切れ目が縁の切れ目というではないか!

 だから、飲み代を踏み倒すぐらいなら永遠とツケを繰り返し発生させ、自転車操業なみに債務を雪だるま式に膨らませていくのである。

 だが、いまの立花に資金繰りに追い詰められたような悲壮感はどこにもない。

 それよりかは、つきものが取れたかのような晴れ晴れとした表情になっていたのである。

 

 今頃、外の屋台では女将が「ありがとうございましたぁ~」と台に置かれた銀貨三枚3,000円を何度も嬉しそうに数えていることだろう。

 というのも、ウ○コの酒しか売らないこの店にとって、3,000円とは久しぶりにまとまったアガリだったのである。

 これで嬉しくならない訳はないwww

 いや……問題はそこではなくて……

 この金を誰が払ったかという事ですよね……

 だって、立花どん兵衛は酒代を払う金を持っていなかったわけですから……

 というか、このおやじ! 人質になって店に残ってから更に1500円分もウ○コ酒を飲んでいやがったのか!


 そう! 飲んだ! 飲んだ! 飲みまくったwww

 どうせ飲んだ酒代などクロトに払ってもらうつもりだったのだ。

 だったら高い酒を飲まないと損である。

 この店で一番高い酒。それは、神様のう〇こで作ったお酒。

 滅多に手に入らない貴重な逸品である。

 というか、神様ってウ〇コするの?

 当たり前じゃないですかwww女の子がトイレに行かないなんて思っているのは童貞君ぐらい。

 当然、美女だってトイレに行きますよ。

 ビン子なんて、毎朝、タカトとどちらが早くトイレに入るかを競っているぐらいなんですからw

 あ……そういえば、一人……トイレに行かない美少女がいましたね……名前は確か、ミーニャたん♡ でも、それはお尻の穴に押し込んだ「エロ本カクーセル巻の取り換えプラグ』のおかげ……

 というか、そんなことより、女神のウ〇コって……ドン引きなんですけど……

 誰が女神のウ〇コって言いましたか!

 あのね……べつに神様は女の子だけってわけじゃないんですよ。

 この世の中にはスライムの形をした神様だっているわけですから。

 なので、この神様のウ〇コ酒。実はオッサンの神様から作ったものだったのですw

 オぇ……

 だけど、そんなことを知らない立花どん兵衛、そんなお酒を飲みまくっていた。

 というか、今問題なのはそこではないだろう!

 そう、このお話はもう少し後で書き続けよう。





 

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