第657話 仮面ダレダー!ここに爆誕!(1)

 そう、その通り! つい先ほどまで、興奮マックスの二人は屋台の椅子をリングに見立てて戦っていたのである。

 だが、そこは屋台……酒を飲む場所であってプロレスをするところではない。

 当然に、二人以外にも屋台には客が座っていた。

 しかし、酒に酔った二人には、そんなの関係ねぇ!

 はしゃぐ二人を横目に、明らかにいやそうな顔をする客たちは酒を飲みながら文句を言いはじめた。

「女将……あれ、何とかしろよ! マジで酒が不味くなるだろ!」

「すみません……あの……お客さんたち……いい加減にしてくださいよ……他のお客さんたちに迷惑が掛かっているんで」

 いらいらとする女将は、二人に声をかけるが

「来いよ! ババァ!」

「アッポォォ!」

 と挑発する始末www ダメだこりゃwww

 まあ、当然……

 ブチイィィィン! 

 屋台の女将はキレた!

 そして、バン!

 とショウシュウ力なみの渾身の一撃をたたきつけたのである。

 二人の視線の先には……机の上に置かれた一枚の紙きれ。

 それは、先ほど女将が机に叩きつけたものだった。

 だが、それを見た二人は、先ほどまでバカ騒ぎをしていたにもかかわらず、打って変わってしょぼんとしたのである。

 というのも、その紙は二人がこの屋台で飲んだ酒代のお勘定であったのだ。

『ウ〇コ酒150杯 銀貨1枚大銅貨5枚(1,500円)払いやがれ!』

 ってwww 150杯ってどれだけ飲んだんや!

 というか、150杯で1,500円って安くない? いや安い! めっちゃくちゃ安い!

 まぁ、もとがウ〇コなのだから安くて当然。

 でも、ウ〇コ、ウ〇コと馬鹿にするなかれ!

 かの国では民間療法の立派なお薬として重宝されているらしいのだ。ホンマかどうかは知らんけどwww

 だから、メチルアルコールと違って、ちゃんと飲めるのだwww

 そんなお薬にも似たウ〇コ酒を150杯! 1500円! アホやなwww

 しかし、いくら1,500円といっても、今の二人には1,500円がないのである。

 そう……先ほどの博打で勝った賞金は1,020円……480円足りないのだ。

 当然に、これ以外に金など持っていない。

 顔を見合わせる二人。

 ――どうする……どうする……

 ――というか、なんでこんなに飲んでしまったんだろうか……

 今更ながら反省する二人であったが、今にして思えば仕方がない。

 だって!初めて地下闘技場の博打で勝ったのだから!

 もうテンションマックスの二人は結婚式に呼ばれた花婿の友人のようにバカ騒ぎwww

 周りの目も気にしないで浴びるように飲んだ二人の頭は、当然、酔いが回って、まともな思考などできようもなかった。

 まぁ、タケシなどはシラフであったとしても、100以上の数は数えられないため仕方がない。

 先ほどまであれほど酒で真っ赤っかになっていた二人の顔は、いまや病気にでもかかったかのように青ざめていた。

 オェェェェェ

 ついにプレッシャーに耐えきれなくなったタケシは、地面に手をつきゲロを吐く。

 そんなタケシの背中をさすりながら、立花どん兵衛は小さな声をかけた。

「タケシよ……ここは俺が時間を稼ぐ……あとは、分かっているよな……」

 タケシは口から垂れるゲロを腕でこすりながら小さくうなずいた。

 そして、おもむろに立ち上がったタケシは、屋台の傍に捨ててあった段ボールを拾い上げると大きな声で叫んだのだ。

「サイクロン! 始動! ブルルルルンンン!」

 その突然の様子に唖然とする女将と屋台の客たち。勢いよくかけ出していくタケシの姿を見送る以外何もできなかった。

「の! 飲み逃げやぁぁぁぁぁ!」

 やっとのことで声を上げた女将であったが、もう、タケシの姿は地下闘技場の入り口をくぐって姿がみえない。

 そんな女将の前に立花どん兵衛が腕を組みながらドンと腰を下ろした!

「あわてるな! まだ俺が残っているだろうが!」

 そう、立花はタケシがクロトの元まで金を取りに行っている間、自分が人質になろうというのである!

 さすがは!立花のおやっさん! 男気がある!

 そんな立花が女将をギラリと鋭い視線でにらみ上げながら、強い一言いいはなつ!

「この店で一番高い酒をドンドンもってこい!」

 え?

 ……もしかしてクロトの金を当てにして、自分だけもっと酒を飲もうと言いうのですか?


 ――オヤッサン! 俺のために自ら人質に……

 そんな立花の意を完全に誤解している本郷田タケシは、急いでクロトの元へと地下闘技場につながる階段を駆け下りていた。

 そんな彼の眼にはいつしか大粒の涙が。

 ――待っていてください! 必ずクロちゃんを連れて戻ります!

 だが、地下闘技場にたどり着けどもクロトの姿はどこにも見当たらない。

 すでに観客たちが帰った観客席は、誰かさんのスキンヘッドのように見通しが非常にいい。

 そんな観客席をタケシは縦横無尽に走りながら大声を上げていた。

「どこだ! クロちゃ――――――ん!」

 そんな時である。

 闘技場の奥から悲鳴とも絶叫とも分からぬ声が響いてきたのである。

「しゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁしぇぇぇぇぇぇぇぇぃ!」

 そう、それはアジャコンダの断末魔!

 それを聞いたタケシはようやく思い出した。

 ――そうだった! 確かクロちゃんは、あの控室の奥にルリ子さんを助けに行っているんだったっけwww

 咄嗟に段ボールでできたサイクロンの向きを控室のドアに向けなおすと、勢いよくマフラーの口から火を噴いた!

 ゲロゲロゲロロロロロロ!

 仕方ない……タケシは先ほどまでウ〇コ酒をしこたま飲んでいたのだ。

 それなのに……いきなりダッシュで観客席を走り回ったのである。

 その行為が酔いの回った体にどれほどのダメージを与えるか……酒を飲む者なら分かってもらえることだろう。

 気持ちが悪くなったタケシの口からは再びリバースが火を噴いていた。

 だがしかし! これでもこの男は本郷田タケシ! 仮面ダレダーの熱烈なファンなのだ!

 だからこそ、ふらつく千鳥足に力を込めて再びエンジンをふかすのである!

 ゲロゲロゲロロロロロロ!

 あかんwwww無理はあかんってwwww

 だが、外では立花のオヤッサンが自分の帰りを待っている……それはメロスの代わりに人質になったセリヌンティウスのようなもの。

 そんな友を思いメロスは最後まで走り切った。

 ならば、タケシもまたここで足を止めるわけにはいかないのだ!

 踏み出す一歩!

 その一歩が己を強くする!

 ゲロゲロゲロロロロロロ!

 もう……いまや、タケシの全身はゲロまみれwwww


 ま……まぁ、そんな姿になってもタケシは頑張った!

 ふらつく足でようやく控室のドアにたどり着いたのである。

 だが、中を覗き込んだタケシは驚いた。

 といのも、タケシの眼に飛び込んできたのは、部屋の中に振り落ちる白い雨。

 いや、それは雨などではない……

 ――こんなに数多くの使用済みコンドーさん⁉

 タケシはその存在を瞬時に理解したのだ。

 というのも、日頃、ゴミ捨て場でムフフな本を探すタケシにとって、ゴミの中に混じっている使用済みコンドーさんの存在は敵意の的だったのである。

 ――俺には使う相手もいないというのに……このコンドーさんたちの主は……ピー!とピー!でピーピーピー!をしていたに違いない!

 しかも、そんな憎むべき相手に今にも撃ち抜かれそうになっているクロトの姿が見て取れるではないか。

 ピキ――――――――――ン!

 ついにタケシの本能が覚醒した!

 ――なんか分からないけど! 今の俺なら出来る!

 力強く踏み出すタケシ。

 そんなタケシの変化をすでに予想していたのか……外の屋台では高級ウィスキーを一気飲みする立花どん兵衛が不敵な笑みをうかべていた。

 ――行け! タケシ! お前はもうすでに過去のタケシなどではない!

 

「唸れ! サイクロン!  ヴゥインンンン! ヴゥインンンン!」

 瞬間! タケシの体が加速した!

 そう、それはサイクロンが到達すると言われる最高速度400km/hの世界へと!


 そして、今! 降りしきるコンドーさんの雨を弾き飛ばした本郷田タケシはクロトの前に立っていたのだ!

 サイクロンと称した段ボールの中に体を通したままで……

 そんな凛々しき姿を見たクロトは一言。

「タケシさん……なんか……ゲロ臭いです……」

 そう、いかに恰好をつけようとも……今のタケシはゲロまみれだったのだwww


 だが、タケシがいかにゲロまみれになろうとも、ここは控室。

 奥に積み上げられた木箱の上では、いまだにハイテンションのデスラーが次元転移ミサイルを発射し続けていたのだ!

 ド!ド!ド!ド!ド!ド!ド! ド・ド!ドーパミン!フォォォオォオオオ!

 コンドーさんの雨がタケシにめげけて降りおちる!

「危ない!」

 その様子を見たクロトはとっさに叫んだ。

「タケシさん! そのミサイルに触れると異次元に取り込まれてしまうんだ!」

 だが、それを聞くタケシはニヤリと笑うだけ。

 それどころか、何を思ったのか両手を腰にグッと当てがったのだ。

 まあ……当然……手で抱えていたダンボールのサイクロンは支えを失い床の上にボテッと落ちた。

 しかし、このことによって、先ほどまで隠れていたタケシの腰が見えるようになったのである。

 だが、その腰は何も履いていない……いわゆるスッポンポンだったのであるwww

 揺れるタケシの巨大砲塔!

 でかい! デスラーの砲塔とはまるで雲泥の差!

 しかし、なぜにパンツをはいてないwwww

 というのも、外の屋台でプロレスごっこをしていた際、椅子という名のリングに抑え込まれたタケシは立花どん兵衛にスリーカウントをとられてしまったのだ。

 ――もしかして、俺は負けたのか?

 呆然とするタケシ……だが、目の前にはまだ酒があるのだ!

 ――ならばリベンジするしかなかろうが!

 ということで、チャンピオンベルトの代わりに自らのパンツを差し出し、2回戦へと突入したのである。

 そのあとパンツを失ったタケシはリングに抑え込まれるたび、立花どん兵衛によってむき出しのケツの穴にウ〇コ酒を突っ込まれ続けたのであるwww

 いや~ん♡ 

 って! お前らはヘンタイか!

(*注意*アルコールの直腸注入は危険なのでやってはいけません!) 


 控室の中、クロトの目の前で下半身丸出しのタケシは、

「へ~~ん~~」

 と、力強く大きな声を出すとともに、右手を体の周りに円を描くように大きく回しだした。

 そして、その右手は勢いよく水平線を切りさいたのだ!

「しん!」 

 ちなみに「たい!」ではなく「しん!」である。

 って、おまえはクロちゃんかwwww


 そんな大声とともにタケシの体が宙を舞った!

 ピュィーーーーーーン!

 風車の回るような音がタケシの腰から響きだす。

 そして、クルリと一回転したタケシが地面に降り立つと……


 すると! 何ということでしょう!


 そこには仮面ダレダーが膝をついているではありませんか!


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