第647話 金網デスマッチ
「お待たせしました! 本日のメインイベント!」
地下闘技場内に大きなアナウンスの声が響いた。
その瞬間!響くような歓声が沸き起こる!
「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」」
観客たちの声援に導かれるかのように、部屋の奥にある小さな入り口からガタイのいい男が右手をあげながら登場した。
ゆっくりと歩くゴンカレーの体に触ろうと右や左から手が伸びてくる。
「頼むぞ! ゴンカレー!」
第六駐屯地の守備隊長であるカルロスもまた、リングサイドで興奮を隠せないでいた。
なんでカルロスのオッサンがここにいるんだよwww
しかも、カルロスのオッサン……神民ですよね……
そんなこたぁ!どうでもいいんだよ!
格闘技オタクのカルロスにとって無敗のチャンピオン ゴンカレーはアイドルのような存在。
だからこそ、駐屯地から内地に戻った際には必ずこの地下闘技場に足を運ぶのである。
そして、今日も、先ほど第七駐屯地から内地に戻ったばかり。
エメラルダを宿舎に送り届けた後、速攻でこの場に駆けつけたという訳なのだ。
そんな両サイドから伸びてくる手をよけながらリング下までたどり着いたゴンカレー。
目の前でセコンドが開けたロープの隙間からリング上へと飛び乗った。
瞬間! 歓声がさらに大きくなる。
その音量は、この雰囲気に慣れていないクロトとタカトが、とっさに耳を覆うほどの大きさなのだ。
だが、それはチャンピオンの登場で会場のボルテージが最高潮に達している証でもあった。
満を持してアナウンスが大声をあげる。
「本日のファイナルイベントはなんと!金網デスマッチだぁぁぁぁぁぁ!」
と、言い終わるや否や、リングの上部から立方体の金網が落ちてきたかと思うと、ドスンと激しい衝撃音とともに地下室全体を揺さぶった。
舞い散る砂ぼこりの中、目の前の小さなリングは、その落ちてきた金網によってスッポリと覆いつくされていた。
だが、その金網はそこら辺の駐車場でよく見かける細い針金を編んだものではない。
太さ10cmはあろうかという鉄の棒でできているのだ。
それはもう……金網というより檻である……
しかも、そんな檻が二重に張り巡らされていたのだ。
ここまでの厳重な備えは、この地下闘技場では珍しい。
というのも、地下闘技場は非合法。
観客が何人か死んだところで、そんなものは穴を掘って埋めてしまえば無かったことになるのだ。
えっ? そんな非合法な場所に神民かつ守備隊長のカルロスが居てもいいのかだって?
いいんだよ!
やることやって、上司にバレなきゃなんでもOK!
それは、どの時代でも同じことだろ?
そんな非合法な地下闘技場であるにもかかわらず、今回のファイナルマッチではココまで厳重にリングの内と外とを隔絶しないといけなかったのだ。
この運営は判断に観客たちの期待はガゼン高まる!
「今度は……さすがにチャンピオンゴンカレーでも無理なんじゃねぇ?」
もしかして……今回、ゴンカレーが戦う相手はそれほどの脅威なのだろうか。
でも、リング上にはゴンカレーのほかにオオカミの顔をしたアイドルオタクの魔人しかいないのだ。
ということは……このアイドルオタクの魔人……実はものすごく強いのかもしれない。
だが、よくよく見ると、その檻のある一面には大きな穴が開いていた。
その穴の幅は約5m。一般的な6mのリング幅より少々小さなサイズ。
そんな穴が上にも伸びて、何もない四角い空間を作り出していたのである。
コレだけ大きな穴であれば、身長2m程度の狼の魔人であればスルリと余裕で通り抜けられることだろう。
となれば、逃げ場のないことがウリの金網デスマッチなのに、その面白さは半減してしまうことだろうwww
しかし、そんな観客たちの心配をよそに、地下闘技場の脇にある大きな扉がゆっくりと開いたのである。
しかも、その奥から何やら大きな箱のようなものが出てきたではないか。
それは台車に乗った5m四方の檻。リングに開いた一面と同じ面を有している檻である。
だが、リングへと近づくその檻の移動速度はかなりおそい。
台車を取り囲んでいる男奴隷が20人で必死に押しているのであるが、まるでカメwww
きっと!その檻の中に入っているものが重いに違いない!
そう!檻の中に入っていたのはウ〇コwwww
あのアラレちゃんに出てくるような巻きグソである。
だが、そのウ〇コの大きさがけた違いにデカいのだwww。
それは、5m四方の檻の中にピッタリと収まっているウンコ。
想像してみてほしい。
5m四方といえばプロレスのリングよりもちょっと小さいぐらい。
そんなリングにどんとはみ出んばかりのウ〇コが乗っているのだ。
さすがにこれはドン引きだろwww
だが、そのとぐろを巻いたウ〇コの頂点では、先ほどから何か赤い小さなものがチロチロと動いていたのである。
未消化のトマトの皮が風に吹かれて揺れていたのであろうかwww
いや違う!
それはベロ! 先が二つに分かれた舌である。
そう、ウンコのてっぺんには蛇の頭が乗っていたのだ。
ということは、このウンコはもしかいて大きな蛇?
ガキィン!
大きな音とともについに台車の檻が金網リングにぶつかった…。
台車を押していた男奴隷たちの何人かは急いでその接続部分の鉄格子を取り外そうと手を伸ばした。
瞬間! 一人の奴隷の手が檻の中へと引きずり込まれたのだ。
ガシン!
奴隷の体が勢いよく鉄格子にぶつかる。
慌てた奴隷は檻から離れようともがくのだが、どうにも体が檻から離れない。
というのも、檻の中からは蛇の頭が奴隷の手に噛みついて引っ張り込もうとしていたのである。
しかし、奴隷の体は檻の隙間よりも当然デカい。
蛇が奴隷の体を何度も引っ張れども、檻に引っかかって飲み込めやしなかった。
だが、この蛇、よほど腹が減っていたのだろ……ついには力任せに奴隷の腕を引っ張ったのである。
ブチンっ!
その刹那! 鉄格子が赤く染まった。
そして、悲鳴とともに、あたり一面に血しぶきが舞い散らしていたのである。
その力のすさまじさ……
噛みついた奴隷の腕が引きちぎられる……よりも前に……引っかかっていた奴隷の体が、まるでサキイカのように、その鉄格子によって裂けて引きずり込まれたのだ。
いまや、檻の下には取り残された奴隷の半身が血だまりの中に転がっていた。
だが、そんなことで驚いている暇はない。
ここぞとばかりに残った男たちは接続部分の鉄格子を取り外しにかっかったのだ。
ついに一つになる台車の檻と金網リング。
一つの空間となったリングに奴隷を飲み込み終わった蛇がゆっくりと動き出すと、すでにリング上にいるゴンカレ―を食わんとばかりに舌を出しながら鎌首を持ち上げたのである。
しかも、先ほどから、まるでガラガラヘビの尻尾のようにガラガラと音を立てて威嚇しているのだ。
それも、騒がしい観客席に響き渡る程のかなり大きな音で……
というのも、その体の大きさは優に10m、いや15mは超えているのだ。
当然に、その尻尾で振られているガラガラも大きいのである。
しかも、この蛇、ご丁寧に蛇の魔物ときていた……
そんな大きな魔物をこれからゴンカレ―は相手にしないといけないのである。
……もしかして……この大型の蛇が今回のメインイベントなのかも?
まぁwwwそれを説明するのが、お決まりの選手紹介アナウンス!
「赤コーナー! 194ポンド! 地下闘技場界無敗のチャンピオン!ゴンカレー=バーモンド=カラクチニコフゥゥゥゥゥゥウゥゥゥゥ!」
蛇に睨まれているにも関わらず、まったく意に介する様子のないゴンカレーは右手を大きく上げて軽くリングを見回した。
それに応じるかのように、観客からは割れんばかりの声援が沸き起こる。
「対する青コーナー! 体重は計測不能の超重量級! 魔物と魔人のタッグチーム! 名前? 名前なんて知るかぁぁぁぁぁぁぁ!」
壁にかけられた大きな電光掲示板に表示されたオッズ表が目まぐるしく変わる。
どうやら闘技場のオーナーの思惑通り観客たちはゴンカレーのきわどい勝負を期待したようである。
あっ! ちなみにこの蛇の魔物の名前はアジャコンダ! そして、狼の魔人の名はスグール! ですからwww
一方、そんなことにお構いなしのタカトやクロトたち。
カエルの鳴く方向にごった返す観客たちの合間を縫って何とか歩いていた。
その混雑具合は一昔前の満員電車のように体と体が密着するほどであった。
そんなものだから、男も女も肌を寄せ合って叫んでいるのだ。
そんな熱狂を見るタカトは、ふと思った。
ここまでリングに集中しているのであれば、スカートをめくっても気づかないのではないだろうか?と……
だが、こんな混雑だ……『スカートまくりま扇』であおごうものなら、ここにいる観客たちが皆、吹き飛んでしまいかねない。
そんなことにでもなれば、「ワハハハ! まるで人がゴミのようだwwww」などとムスカ大佐になってしまう。
というか、それは、もう、大惨事! スカートめくりどころのことではない。
ということは……当然、他の方法でスカートをめくるしかないのである。
だが! ご心配めされることなかれ!
そう、タカトは、こんな時にこそ使える道具をハイグショップで先ほどまで作っていたのである。
えっ? 何? 普通に手でスカートをめくればいいじゃないかだって?
もう、分かってないなぁ!
もしかして? アー ユー ジャパニーズ?
というのも、技術者たるもの自分の技術の粋を集めて夢をかなえるものなのだ。
早く移動したいからと言って人の足で走ればいいというものではない。
たとえ生まれ落ちた技術が人の歩み寄りも遅くとも、幾度とない試行錯誤の末、ついには人の走るスピードを遥かに凌駕する車へと進化したのである。
そして、その技術は今、さらなる未来の先へと向かっている。
そこにあるのは!たゆまぬ努力!
あくなき好奇心!
そして、物作りにかけるオタクの情熱である!
日本人なら分かるだろ! この心!
そう! だから! 単純に手でスカートがめくれるからと言って、それに甘んじていては技術の進歩はないのである!
タカトはそっと足のつま先を目の前のスカートの下に忍び込ませた。
それはまるで盗撮野郎がやる仕草。
だが、タカトがこれからしようとしているのは盗撮などといった姑息な行為などではない!
そう!正々堂々としたスカートめくりなのである!
家に帰って隠れて見ようとは思わない!
今! そう! 今である!
情熱たぎるこの瞬間!
汗ばむ下着をしっかりと目に焼き付けるのだ!
そこには録画では決して味わうことができない熱とニオイがこもっている!
それが二度とこない性春を生きるということなのだ!
だから、そこを混同しないようにしてもらいたい!
って、どっちもどっちやwwwというか……痴漢かよwww
そんなものだから当然、タカトの足先につけられていたのはカメラなどではなかった。
そう!これはガメラ!
あの!ガメラだったのだ!
って、最近の若い子は知らないかなぁ~www ガメラwww
ガメラってね特撮映画にでてくる亀の怪獣のことなの。
口から炎を吐いて敵を焼き尽くし、手足を引っ込めると高速回転しながら空を飛ぶことができちゃうのよ。
しかも! なんと!その大きさは60m!
たとえるならば、シングルのトイレットペーパーを全部伸ばし切ったぐらいの大きさwwwって、全く分からんわ!
まぁ、建物にすると、大体20階ぐらいの高さなのだ。
こう考えると、いかにトイレットペーパーが長いのかが分かってもらえたことだろうwww
だが、タカトの足についていたのは、当然、そんな大きなガメラではなかった。
いうなれば、ミドリガメの赤ちゃんサイズ。
直径5cmぐらいの甲羅なのである。
ガメラに比べると、いかに小さいかがわかっていただけると思う。
というか、それだと、盗撮をするには少々デカすぎる。
こんなものを足の上にのっけていればすぐにばれてしまうような気がするのは作者だけだろうか?
――盗撮と違わい!
タカトは見えない誰かに向かってツッコんだ!
そう、何を隠そう、コレこそがタカトが作ったデバガメラ!
スカートを気づかれずにめくることができる画期的な道具なのだ。
もう、『スカートまくりま扇』の時のような失敗は二度と繰り返さない!
――あの時は……風を使ったのがまずかった……
タカトは深く反省していた。
思い出してほしい……『スカートまくりま扇』を使った時の一幕を。
竜のようにうねった突風が女子学生のスカートの下から潜り込み、力任せにまくり上げようとしたのだ。
だが、当然に女子学生たちは抵抗する。
それは、まるで童話に出てくる「北風と太陽」のよう。
力に対しては力で反発するのである。
その結果……女子学生たちの手で押さえつけられたスカートは簡単にはめくることができなかった。
ならば!と、さらに強引にめくろうと『スカートまくりま扇』のパワーを込めると、その先にあったのはフンドシだったのだ……
ナンセンス!
女子学生のスカートの下がフンドシなんてありえない!
それもこれも、北風のように強引に従わせようとしたからに違いないのだ!
そこで、タカトは考えた。
――ならば今度は太陽のように自然とスカートをめくらせればいいのではないだろうか?
童話の中では太陽が天高く上ると、旅人はそのエネルギーを嫌い自らコートを脱いだのである。
それを現すかのように、先ほどタカトが足を滑り込ませたスカートのすそが、ゆっくりとめくれあがり始めたではないか!
それは、まるで女が男をじらすかのようにスカートの下に隠れていた太ももの白肌を徐々に徐々にとあらわにしていくのだ。
だが、その妖艶な動きに周りの誰も気づかない!
それほど自然に……ゆっくりと……
そして、今やひっくり返ったスカートの裏地は腰の高さまで伸びていた。
――はぁ♡はぁ♡熱い♡熱いわ♡
多分ここまで説明すると、きっと勘のいい読者の皆さんは、このデバガメラの性能がなんとなく見えてきたことだろうwww
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