第四章 仮面ダレダー誕生!~お着換え盗撮道具!大晦渋デバガメラ編
第627話 プロローグ
ビチャ……
ビチャ……
ビチャ……
肩を落とした二つの影がすっかりと暗くなった一般街の路地上を濡れた靴音を立てながらトボトボと歩いていた。
そんな路地の石畳は家々の窓からわずかに漏れ出す光によってまだらな影を作っている。
おそらく、今は夕飯時なのだろう……光の漏れ出す窓の隙間からはおいしそうな香りも一緒に漂ってくるのだ。
そんな光り輝く窓の中では、きっと家族団らんの一コマが繰り広げられているにちがいない。
「やったぁ! お母さんwww今日はカレーだね」
「よく分かったわねwww今日はたくさんお肉が入ったビーフカレーよwww」
「お母さんのカレー大好き! だから、僕!匂いだけで分かるんだよwww」
――フン! この家……カレーだってよ……ビン子……
――糞! タカト、アンタも十分! カレーの匂いするじゃない!
そう、先ほどからトボトボと歩くこの二人……タカトとビン子であった。
コンテスト終盤! ステージの上でエロ本カクーセル巻きから噴き出すカレー砲を必死で止めようとしたタカト。
カクーセル巻きの噴出口を手で押さえているせいか、タカトの体は飛び散る茶色いお汁でずぶぬれ状態になっていた。それはもう、靴の中までビチョビチョになるほど。
だが、ビン子はそんなタカトを早々に見捨てて、一人、ステージの脇にある舞台装置の陰に逃げ込んだのである。
そして、物陰からわずかに顔を出すと、大声を上げたのだ。
「ちょっと! タカト! 早く止めなさいよ!」
「止まんないんだよ! これ!」
「だいたい! これ何の匂いよ!」
「ウ〇コだよ! ウ〇コ!」
「なんでカレーにウ〇コが混ざってんのよ!」
「知らねぇよ!」
どうしようもできないタカトはビン子に助けを求めるかのようにステージ脇に体を向ける。
当然にカク―セル巻きの噴出口もまたビン子の方へと向くのであった。
「きゃぁぁぁ! ちょっと! こっちに向けないでよ!」
ドボドボドボ!
見えない巨人が進撃してくるかのように茶色軌跡が物陰にどんどんと迫ってくる!
それはもうビン子の目の前まで!
なにやら鬼気迫るビン子の脳では、迫りくる茶色い液体の動きがスローに変換されていた。
「ひぃぃぃいぃ! 来るなぁぁぁぁ!」
本能的に恐怖におののくビン子! 記憶の奥底に忘れ去られていた女神の力が再び覚醒したのである。
刹那! ビン子の黒髪が金色に光る!
瞬く間にビン子の体を金色の光が包みこんだのである。
これこそまさに! 神の盾!
神の盾は絶対防壁! いかなる攻撃をも通さない!
使用者の命が危険にさらされた時、その障害を跳ね返すために発動するのである!
って、飛んできているのはウ〇コwwwそんなので、いちいち死ぬかよwwww
だが! ビン子にとっては命の危機!
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
びちゃ! びちゃ! びちゃ!
しかし、光の壁によって降りかかる茶色い液体は遮られていった。
そして、その球体の表面をゆっくりと流れ落ちていくのであるが……次から次へと雨のように降り注ぐウ〇コの液体がその隙間をドンドンと埋めていくのであった。
もう、ビン子は生きた心地がしなかった。
というのも、球体の内側にいるビン子からは、茶色い大きな壁が目の前の空間で浮かんでいるかのように見えていたのだ。
しかも……湾曲した球面に沿って成長していく一枚の茶色いスクリーン……それがビン子を覆いつくそうとしているのである。
もし……
もしもである……
この状態で、神の盾を解除したらどうなるだろうか……
そんなことはビン子にも容易に想像がついた。
そう、その瞬間、目の前に浮かんでいるウ〇コの巨大な壁が一気に崩れ落ちてくるのだ!
その時、球体の中心にいる自分はどうなる?
まさに地獄! 命の危機である!
それを瞬時に理解したビン子は、光の球体の中で目から涙を飛び散らせながら、まるで気が狂ったかのように叫び続けていたのであったwww
「神の盾っ! 神の盾っ! 神の盾っ! 神の盾っ!」
このように人目もはばからず、神の盾を暴走させるビン子であったが、いまだに茶色い液体をスプラッシュさせ続けているステージ上の様子など誰も気にしていないというか、誰もが我先に逃げ出していたため、たぶん誰一人としてビン子が神であることに気づいていなかったと思われるのだwww大体、そんな余裕なんかないしwww
そして、ビン子もまた、ただただ目の前の恐怖から逃れたいという本能の赴くくまま暴走し続けていたため、おそらくビン子自身も神の盾を発動しているという事実に気づいていなかった。大体、そんな余裕なんかないわよ!
そして……5分後……
ようやく、タカトのカク―セル巻きは風呂おけ4杯分の茶色い液体を放出しきると沈黙した。
そして、ビン子の神の盾もまた、エビフライ1000本分の生気を放出しきると沈黙した。
今や、そんな二人はカレーまみれ……
まぁ、ビン子は神の盾を解除した瞬間、崩れ落ちる茶色い液体からトムとジェリーの瞬間加速さながら逃げだしたため、すこし、お尻の部分をかすめただけですんでいた。
だが、茶色く染まったお尻のスカートは、それでもやっぱりウ〇コ臭い!
大なり小なりウ〇コの匂いを立ち昇らせる二人は同じことを思うのだ。
――早く洗いたい……
でも、会場に設けられた洗い場は、すでにカレー砲を浴びた観客たちで超満員なのである。
そんな洗い場で二人が体を洗おうものなら……
「なんで! お前たちがココで洗ってるんだよ!」
「そもそも! こんなことになったのはお前のせいだろうが!」
おそらく観客たちの怒りを買うことは間違いないだろう。
そうなれば……もう……集団リンチのごとく、袋叩きの上の袋叩き!
生きて帰ることなど絶対に不可能だったに違いない。
……それほどまでに、会場の怒りボルテージはすごかったのである。
そんな気配を察知したタカトとビン子は逃げるように会場を後にしていた。
だが、ここは10年前の世界……
タカト達に帰る場所などないのである。
金蔵の家?
確かに、そこなら受け入れてくれるかもしれないが……その後が、入り婿という終身奴隷地獄が待っているのだ。
それなら……まだ……臭い方がマシだ……
というか、人間の鼻とは不思議なもので、強烈な匂いにもかかわらず意外とそれに慣れてくるのである……
ならば、このまま川まで歩いて行って洗ってしまおうか……
ということで、タカトとビン子は二人肩を並べてトボトボと歩いていたのである。
「なぁ! ビン子! どう思う!」
「タカト! ちょっと近寄らないでよ! 本当に臭いんだから!」
「次元跳躍の発明が
「
そんな無駄話を続ける二人……特に全身茶色く染まったタカトの体からは異様な香りが漂っていたのである……
いや、漂ようという表現は生ぬるい。
なにか吐き気を催すような強烈なにおいがバンバンと飛んでくるのである。
そのせいか、通りに残っていた人たちも、そんなタカトから少しでも距離をとりたいのか、通りの端にある壁に背中をこすりつけ、大きく避けながら歩いていくのであった。
だが、中には酔ったオッサンのように状況を把握できない者もいる。
二人に近づくオッサンは鼻歌まじりで千鳥足。
「ヒック♪ ヒック♪ 今日はいいお月様がでていますねぇ~♪ お月様には鳳が一羽おりましてぇ~♪ ヒック♪」
そんなご機嫌だったオッサンもタカトとすれ違ったとたんピタリと動きを止めると、酒で赤らんだ顔をみるみると青く変えていくwww
そして、次の瞬間、勢いよく走りだしたかと思うと通りの端で壁に手を突き、オエェェェぇ……
そう、タカトが通った後にはゲロとウ〇コとカレーとが混ざったかのような異臭が立ち込めていたのである。
「審査員の奴ら! 俺の融合加工のすばらしさを全然わかってねぇんだよ!」
「タカト! アンタのアホさ加減なら十分理解できたわよ!」
「あのな! 大体!カレーの中にウ〇コを混ぜたのは俺じゃないからな!」
「じゃぁ! いったい誰なのよ!」
「そんなの今、取り換えプラグを持っている奴に決まっているだろ!」
「もう! 本当に誰なのよ!……あれ? もしかして……」
「なんだ⁉ ビン子! もしかして盗んだ奴に心当たりでもあるのか?」
「いや……ちょっと気になることが……でも、あのウ〇コの量……あり得ないわよね」
「あれだけの量だ。絶対、象のケツにでも突っ込んでいやがるに違いないんだ!」
「……象ね……どちらかといえばあの子……ネズミよね……」
そんな時である。
タカト達の前から一人の女性が先ほどの酔ったオッサンのようにフラフラと歩いてくるではないか。
しかも、鼻歌まで歌ってwww
♪こんなこといいなぁ~ できたらいいなぁ~♪
♪あんな夢! こんな夢 いっぱいあるけどぉ~♪
まるで幽霊のようにうつむく女。だが、その体は幽霊というにはほど遠い中肉のオバちゃん。
♪みんな! みんな! みんな! かなえてみせる~♪
♪不思議なユッケで かなえてくれるぅ~♪
そんなうつむくオバちゃんは懐かしそうに、まるで過去の家族だんらんでも思い出すかのように涙声交じりの鼻歌を小さくつぶやいているのである。
♪チ●コを自由に食べたいなぁ♪
♪「ハイ! ビックリマンチ●コぉ~」♪
もしかしたら、オバちゃんにはビックリマンチョコが大好きな息子でもいたのかもしれない。
そんな息子のことを思い出しているオバちゃんには、前から歩いてくるタカトとビン子がまるで見えていない。
そして、タカトとビン子も互いにおしゃべりをしていて前を全く見ていない。
当然に……
♪あん♡あん♡あん♡ とっても大好きぃ~ミルクぅチ●コ~♪
と、オバちゃんはタカトにぶつかった。
しかも、その時、タカトはビン子とはなすために後ろ歩きをしていたのである。
その突き出したタカトのお尻にwww ドシン!
当然に、その反動でタカトは思いっきり前のめりにずっこけた。
ふごっ!
地面をこすっていくタカトの顔面。
ちなみにここの地面は石畳である。
いまや、受け身を取らずに石畳に突っ込んだ顔面は、おそらく血だらけになっていることだろうwww
「なにしやがんだ!」
顔面血まみれのタカトは勢いよく跳ね起きると、ぶつかってきたオバちゃんに食ってかかった。
迫る顔面!
その顔面は茶色と赤色とが絶妙に混在した現代アートのような色彩を放っていたw
しかし、そんなタカトの顔を見るなりオバちゃんはギクリとした表情を浮かべて小さな言葉を漏らしたのだ。
「ヨ……シオ……?」
だが、次の瞬間、そんなことはあり得ない! と言わんばかりに慌てて顔を背けると、パタパタと足音を立てて急いでその場を走り去っていったのである。
「これ、落ちましたよ」
ビン子は足元に落ちていた一冊の本を拾い上げると慌てて声をかけた。
おそらく、この本はオバちゃんが持っていたものが、タカトとぶつかった拍子に落ちてしまったのだろう。
だが、その本を返そうにも、すでにオバちゃんの姿は暗い路地の闇の中に消えてしまった後だった。
あっという間の出来事に唖然とするタカトとビン子。
「なんで……にげるの……?」
「きっと、タカトが臭かったのよ……だって、顔中、ウ〇コ色だもん……」
「俺……そんなにウ〇コ色……?」
「うん……もう、誰だか分からないぐらいにウ〇コが固まってカピカピ……」
ははは……乾いた笑いを浮かべるタカト頬から、乾いたウ〇コがパラパラと落ちてくる。
まぁ、世の中には泥パックというものがあるのだ、ならばウ〇コパックがあったていいじゃないかwwww
あくまでプラス思考のタカト君。
だが、どうにもビン子の持っている本が気になったようで、その手からサッと本を取り上げるといくつかのページをパラパラとめくり始めた。
「というか、この本はどうすんだよ……」
だが、その中身を見た途端、タカトは首を傾げた。
「あれ?」
というのも、この本に見覚えがあったのだ。
見開きページにドーンと広がる裸婦のM字開脚。
しかも、その女性の体のいたるところにタコさんウィンナーがパックのようにまとわりついていたのであるww
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