第626話 カレー砲! 発射!
融合加工コンテストのクライマックス!
「開・血・解・放おぉぉおぉぉ!」
ステージの上ではタカトの腕に巻かれた『エロ本カクーセル巻き秋田犬YAMATOモード』から茶色い液体が勢いよく噴き出された!
ブシャァァァァァァア!
「やったあ! 成功だ!」
タカトは歓喜の声を上げた。
そう、試作段階である取り換えプラグとエロ本カクーセル巻きの間の次元跳躍、いわゆるワープが大成功したのである!
いうまでもなく、それは融合加工史上、画期的な発明が成功した瞬間であった!
そんなタカトを祝福するかのように放物線を描く茶色いし飛沫が、会場周囲を照らす松明の光をキラキラと散らして落ちていく。
一方、カレー砲の直撃を食らったガミガミ船団! もとい、ガミガミ審査員たち。
その大きく開いたお口を通して腹の中に茶色い液体が流し込まれていた。
モグモグもぐ……
その様子を見たタカトは勝利を確信した。
――これで俺の優勝は確実だ!
だが、次の瞬間、審査員たちが気でも狂ったかのような悲鳴を上げたのである。
「「「「「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ! なんだこれは!」」」」」
しかしwwwまぁ、それもタカトの想定内www
だって、この噴出しているカレーには激辛カレーが入っているのだ。
その量は6つの鍋の内2つ分。
いかに薄まっていようとも激辛であることは間違いない。
この激辛カレーで目つぶしをした後、タカトは審査員たちの持っている得点札を全て10点に差し替えておく計画だったのである!
だがしかし! 審査員たちの悲鳴はそんなものでおさまらなかった。
「「「「「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ! くせえぇぇぇえぇ!」」」」」
狂気の声を上げる審査員たちは、おのおの目を押さえ、鼻を押さえ、審査員席から転がり落ち、そしてついには、もがき苦しむかのように床の上を転がりまわっていたのである。
だが、嬉々としながらエロ本カクーセル巻きの放出口を審査員に向けているタカト君。
――くたばりやがれ!
茶色い液体は放物線を描くのだ。
得点札が置かれた机の上を上手く通り抜けると、床の上を転がる審査員たちの体をロックオンし続けていたのであるwww
「「「「「やめろぉぉぉぉ! くせえぇんだよ! おえぇぇぇぇえ!」」」」」
そんなタカトも、ようやく異変に気がついたのだ。
――というか……くせえ?
なんで?
茶色い液体を放出しながら頭の上にクエスチョンマークを浮かべるタカト君
――辛いと言えども、これはカレーだぞ!
どちらかというと、香りだけは食欲を誘うはずだ。
――それが、臭いとは! これいかに!
だがその時、タカトの鼻にもまた、そのかぐわしき香りの一端がほのかに届いたのである。
――そういわれれば……
って、今まで気づいてなかったんかい!
だって仕方ない……発射シーケンスにおいてタカトはカレー砲の照準を合わせカウントダウンを行うので必死だったのである。
というか、そもそも、そんな異物を取り込んだ覚えはないのである。
だからこそ、当全に異物の存在などに気づく訳もありゃしない……
タカトは確かめるかのようにもう一度、鼻をヒクヒクと動かした。
やはり……どうやら……エロ本カクーセル巻きから噴き出す茶色い液体から何やらただならぬ汚物の香りが漂ってくるような気がするのだ……
いや、確実に匂う!
――というか、この香りは⁉
タカトにはこの鼻につく香りに覚えがあった。
そう! それはまさしく、毎朝、トイレの中で格闘する「強敵の友」と書いて「ライバル」と呼ぶ男たちの存在だったのである。
しかも、どちらかというと、『大事を為すには必ず人をもって本となす』を体で表す一本魂ではなく一本塊の劉備玄徳の方ではなく、カレーのようにドロドロした性格の奴の方である
――確実に奴だ!
奴こそまさに、トイレの大王! ブリブリざえもん! その人である!
――やばい! カレー砲を止めないと!
焦ったタカトは、エロ本カクーセル巻きを止めようと試みた。
だが、止まらない。
というか、この状態になったエロ本カクーセル巻きをどう止めていいのかタカトにも分からないのである。
というのも、一個の物体を取り出すことを設計思想にしているエロ本カクーセル巻き、物体を取り出すのに時間がかかるとは思っていなかった。
だから、物体を取り出している最中に強制終了させるなどという概念を、そもそも持ち合わせていないのだ。
だが、カレーは液体。
1個という概念は、そこにない!
そう、その取り込んだ液体総量を全てぶっぱなすまで止まらないのである。
――というか! なんでブリブリざえもんがカレーの中に混ざっていやがるんだ!
しかも、この強烈な匂い……相当量のブリブリざえもんが混入していると思われる。
――おそらく、カレーと同量……いや、それ以上か!
控室で提供されたカレーは60cmの寸胴鍋、その容量は約70Lである。
その鍋が6つで、取り込んだカレーの総量は約420Lになる。
普通の2人用のお風呂の水の使用量が200L~250Lであるので、だいたいお風呂の水2杯分に相当すると思ってもらうとイメージがわきやすいだろう。
そして、このカレーの量と同量以上のブリブリざえもんが混入しているということは、その総量の合計はお風呂の水4杯分!
そんな茶色い液体が、タカトの腕に巻かれたエロ本カクーセル巻きから噴き出し続けているのだ!
しかも、それが止まらない! 止められない!
慌てたタカトは、エロ本カクーセル巻きの噴出口の向きを審査員から外した。
だが、今度は観客席から阿鼻叫喚の悲鳴が起こったのである。
――やべぇ!
ますます、焦るタカト君はなんとか噴出を手で押さえて止めようとするのであるが、スプラッシュ!
勢いよく噴き出すホースの先端を無理やり抑えるかのように、茶色い液体が拡散粒子砲のように四方八方に飛び散るのである。
もはや、そこは地獄絵図www
「ふう……洗ったら、何とかなったわね……」
ステージ近くの洗い場で、おもらしによって汚れた靴と靴下、そして、立った状態で下げていたパンツを洗い終わったミーニャはホッと胸をなでおろしていた。
そう、ブリブリざえもんと違って、漏らしたコイツは小者!
洗ってしまえば、茶色い色も残らないのである。
ならば、他の人に気づかれる危険もさほどない。
まぁ、確かに濡れた靴と靴下でグチョグチョと音を立てながら帰らないといけないし、お尻のあたりはビチョビチョに濡れて少々冷たいのであるが、まぁ、それでも何とかなるだろう。
などと、思っていたミーニャの視界が次の瞬間、茶色に染まった。
ビちゃ!
――えっ! なに?
そう、何かがミーニャの顔にぶっかけられた、いや、飛びついたのである。
生暖かい感触とともに顔中からヌルリと垂れ落ちていく物体。
刹那、立ち上る強烈なにおいが鼻をつく!
――おえぇぇぇぇえ!
でも、ミーニャにはこの香りに記憶があった。
それは、タカトの取り換えプラグを装着する前のこと……
――私……確かに……この子と水洗便所の中で出会ったわ……
まるで『ただいま!お母さん!』そう言っているかのようにも思えるこの物体。
まさしく! ミーニャの……
「なんでやねん! なんでこの子! また帰ってきたんやんねん!」
瞬間、ミーニャは教育放棄をした母親のような大きな怒声を上げていた。
だって……せっかく服は汚さずに帰れると思っていたのに、今や、肩や胸のあたりは茶色い液体で汚れていたのである。
しかも、強烈なにおいなのだ。
これなら、靴と靴下とパンツだけを汚した方がましだったと思えるほどである。
だが、そんな母であるミーニャの仕打ちに悲観したのか……突き放されたこの子は泣き叫ぶかのように、もう一度ミーニャに強く抱き着いたのである。
ビチャビチャビチャ!
再びミーニャを襲う茶色い液体。
しかも、今度は直撃だ!
まるでロックオンでもしているかのように、放物線を描いた茶色い液体はいつまでもミーニャの頭の上から滝のように流れ落ちつづけていた。
ドボドボドボ!
「・・・・・・・・・・」
茶色い滝に打たれながらうつむくミーニャ。
もう、その口からは言葉は一切でてこない。
そして、滝の中でおもむろに上げられるミーニャの顔。
その顔はまるで般若のように恐ろしく目がギラギラと光っていた。
茶色い液体を体中に滴らせる鬼のような視線はステージの上を鋭く睨みつけ、心に固く誓ったのである。
――あの早漏野郎……絶対に……殺す……10年経とうが……何年たとうが……必ず!殺す!……覚えておけよ! 天塚タカト!
そう、その視線の先にはステージの上でエロ本カクーセル巻きから茶色い液体を吹き出し続けているタカトがいたのは言うまでもない。
権蔵が読む新聞にはコンテストのデスラー審査員長の談話が載っていた。
「彼は一之祐様の推薦者。騎士である一之祐様が汚物をぶちまけるような愚か者を推薦するとは到底考えられません。おそらく、これは一之祐様が彼に汚物をぶちまけさせることで我々に何らかメッセージを伝えたかったのかもしれません。それは、おそらく『カレー味のウ〇コ』と『ウ〇コ味のカレー』、この違いとは何ぞや! 確かに、どちらも食べられるものではない。いや、もしかしたら『ウ〇コ味のカレー』のほうが、カレーであるだけまだ食べられるのかもしれません。だが、私には一之祐様の言いたいこと分かります。『カレー味のウ〇コ』と『ウ〇コ味のカレー』もどちらも臭い! クセえんだよ! 騎士だからと言って、何やってもいいわけじゃないんだぞ! コラ! このウ〇コ騎士! ウ〇コ騎士! ウ〇コ騎士! お前の母ちゃんでべそぉ~(怒)」
これを読んだ権蔵は固まった。
だが、何とか言葉を絞り出したのである。
「さすがに……これは……ひどい……ですじゃ……」
紙面上で騎士である一之祐様のことをウ〇コ騎士と罵倒しているのだ……
さすがに、言っていいことと悪いことがある。
こんなことを言えば、このデスラー審査員長なる者、不敬罪で速攻、打ち首になるのがオチである。
だが、そんなことは、この聖人世界では分かりきったこと、そう、常識なのである。
そんな分かりきったことを、それでもあえて発言したのだ。
おそらく……よほど頭にきたのだろう……
いや、こうでも書かないと、観客たちの怒りの暴動が一之祐に向けられていたのかもしれない。
それまでにコンテストの会場の有様はひどかったのかもしれなかったのだ。
そのためタカトに下された評価は
ちなみに10年たったタカトの時代においても、いまだかつて誰にも破られたことがない驚異の得点である。
というのも、それぞれ5人の審査員に配られている点数の札は0~10点である。
言わずもがな、最低得点は0点である
だから、審査員たちは10点の札にわざわざ「
さすがにこう考えると、一之祐にはこのデスラー審査員長を簡単に打ち首にするという選択肢は無いようである。
それが、分かっている一之祐は死んだような目で乾いた笑みを浮かべるのだ。
「権蔵wwwww俺wwwwwウ〇コ騎士だってよwwwww」
だが、さすがに騎士の事をウ〇コ呼ばわりしてタダでは済むわけはなく、この後、デスラー審査員長はその座を後任の審査員長に明け渡すことになるのである。
というか……姿を消したwwww
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