第612話 休息奴隷に!
勤造の調査によると……
どうやら、第三世代の中にアダムの従者の因子を融合されたものが存在するようである。
アダム因子ではなくアダムの従者の因子?
アダムの従者、それは、かつてアダムが大門を開けるために育て上げた屈強な8人の魔人たちである。
その存在は神にも近しいと言われていた。
というのも、アダムが存在していたころには、まだミズイのような神は存在していなかったのである。
あくまでも神はアダムとイブの二人のみ。
その神を模すかのように作り上げたのが8人の従者たちなのだ。
簡単に言うと、神であって神でない存在と言ったところであろうか。
その村にいたというアイナ、ガイヤ、マッシュ、オレテガという名の4人の従者。
そう、この駐屯地の惨劇を引き起こした4人である。
だが、他の4人の存在はまだ確認されていない。
もしかしたら、他の国、いや、もしかしたらまだ魔人世界にいるのかもしれない。
しかし、この4人のアダムの従者が復活したということは、他の4人もまた復活した可能性がある。
というのも、この復活にはアダムそのもと関係しているようなのだ。
かつて大門内の世界で、聖人世界に通じる大門を開ききる前に荒神爆発をおこしたアダム。
その時、爆発によって放たれた大量の生気が、聖人世界と魔人世界に流れこみ、今でいうところの神々が生まれたのである。
そう、いうなれば神とはアダムの化身、アダムの子供たちなのだ。
だが、アダム本体はその爆発の瞬間、消滅した……はず……
しかし、今になって、その事実を今更確かめる方法などありはしない。
というのも、アダムの消滅は騎士たちが生まれる以前の話。そのため、現在に残っているのは神話の伝承でしかないのだ。
だが、そんな神話の中のアダムが復活しようとしているかもしれないのである。
まさか! そんなおとぎ話みたいなことがあるとでもいうのか?
そもそも、アダムが消え去ってから一体どれぐらい時が流れたと思っているのだ?
だが、それはアダムの従者たちについても同じこと。
いままで世の中に現れなかった従者たちが、ここ数年で急に活性化し始めたのだ。
ならば、この現象がアダムの復活に起因しているものと考えてもおかしくはないのかもしれない。
勤造の話を静かに聞いていた一之祐は確認した。
「今回、倒した4人はまた復活するということなのか?」
勤造はすぐさま答える。
「おそらくは……ただ、アイナにつきましては、私が簡易な封印を施しましたため、そう簡単には復活できないものと思われます」
「そうか、ならば3人か……」
「ハイ……ただ、村の様子を調べると、ガイヤ、オレテガ、マッシュの三人は、アイナを指揮官としたチームで動いている様子。そのため、アイナを欠いた今では、さほど脅威にはならないと思われます」
「かといって、いまだに確認ができていない他の従者と接触する可能性があるのではないのか?」
「それも、おそらく大丈夫かと……あの三人組、馬鹿が付くぐらいアイナに心酔している様子でして……アイナ以外に従うことはまず無いかと」
「分かった……この件は俺とそこにいるエメラルダの胸の内にだけに納めておこう」
「一之祐様……内地へのご報告はいいのですか?」
「そもそも、そのアルダインが一番怪しいからなwwww」
「一之祐様が、そうおっしゃるのであれば、この勤造、何も申しません……」
「そうか」
「ただ……一之祐様に、ひとつお願いしたき事がございます」
「なんだ、また急に改まってwwwもう、話は終わったんだろう?」
「はい、従者の件とは別件でございます」
と、言いながら、勤造は懐から一枚の書状を取り出した。
それは、
そこには内地でルパン・サーセンことダンディに誘拐された真音子をタカトが救ってくれたことが書かれていた。
そして、そのタカトへの恩返しに、ぜひとも権蔵を休息奴隷にしてほしいと懇願してきたのである。
ここまであの胆力のある
さらに勤造は勤造で、この駐屯地内でアイナに首を絞められる真音子をタカトに救ってもらったのだ。
まぁ、確かに実際に救い出したのは勤造であるが、その一瞬の隙を作ってくれたのがタカトなのである。
――2度までも……あの少年が真音子を救ってくれたというのか……
しかも、真音子の話によると、タカトのプロデュースによってアイナと真音子はアイドルの全国ツアーを目指していたという。
8割冗談としても、アイナたちとの仲睦まじい練習風景が目に浮かぶのだ。
おそらくタカトや真音子にとってアイナは友達、いや、友達以上の関係だったのかもしれない。
――そんな彼らの前で、自分はアイナを抹殺した……
おそらく、タカトという少年は決して自分を許さないだろう……
それが駐屯地を守るうえで当然とはいえ、本当にそれでよかったのだろうか……
今更、自問自答したところで結果は変わらない。
ならば、今できることは彼らにしてやれることを一つ一つ行っていくしかないのである。
そう、金蔵の掟は『受けた恩は10倍返し、受けた仇は30倍返し』なのだから。
で……
休息奴隷にいきなりなれ! と言われた権蔵は目を丸くしていた。
というのも、休息奴隷の制度は奴隷自身が請求するのが筋なのだ。
それが、騎士である一之祐から命令がくだるのである。
いまだに目をパチクリする権蔵に、勤造が事の次第を説明しはじめた。
それを聞く権蔵は、目にいっぱいの涙をため口に半笑いを浮かべながら言うのである。
「ならば、褒美をもらうのはワシではなくてタカトのほうですなwww」
だが、タカトのことをよく知らない勤造と一之祐は頭を悩ますのだ。
そう、彼は一体何を欲しているのだろうと。
そんな時、権蔵がニヤリと笑うのである。
「あのタカトの事ですじゃwww 内地で行われる融合加工の道具コンテストに参加させてやるって言えば、きっと喜ぶにちがいないですわいwww」
ということで、一之祐はすぐさま道具コンテストの推薦状を書いたのであった。
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