第608話 推薦状
「これはな、道具コンテストの推薦状なのだぁァァ!」
そんなタカトの言葉に驚くビン子は奇妙な声を上げた。
「え⁉ タカト『の』推薦状よね⁉」
「あたぼうよ! 俺以外に誰のだって言うんだよwww」
ビン子が驚くのは無理もない。
と言うのも、道具コンテストは融合国では由緒あるコンテストなのである。
そのコンテストで優勝すれば、融合加工の聖地! そう、融合加工を志す者であれば一度は夢見る融合加工院に入ることができるのだ。
それだけ重要なコンテスト。当然に、その参加資格はとても厳しい。
参加できるのは身分でいうところの神民と神民学校の生徒のみ。
タカトのような一般国民以下の身分では、本来コンテストに参加することはできないはずなのである。
だがそうはいっても、市井には権蔵のような才能のある優秀な人間も多くいるのも事実である。
だからこそ、道具コンテストには身分の低い者でも参加できる道がつけられていた。
それが、このタカトの持つ騎士による推薦状なのである。
騎士の推薦状があれば、たとえその身分が奴隷であっても道具コンテストに参加しすることが許されたのだ。
それだけ、すごい力を持つ推薦状。
タカトでなくても欲しいと思う人間は五万といることだろう。
だがしかし、現実問題、どこの馬の骨とも分からぬ一般人に、この国に8人しかいない騎士様がホイホイと推薦状など書いてくれるわけなどない。
というのも、「コイツ! スゲエぜ!」などと騎士が推薦した者のが優勝をするのは当たり前。というか、必ず優勝しないといけないのだ。
そうでないと、その推薦した騎士の名折れとなってしまうのである。
だけどまぁ、確かに騎士だって完璧じゃない。
この世界では、騎士はただの人間だった者が、王によっての刻印を授与されただけなのだ。
だから、道具の目利きなんて、そうそうできる奴なんていやしない。
でも、そうはいっても世間の目は違うのだ。
巷での騎士様の評判は、
騎士様はすごい!
騎士様は何でもできる!
騎士様は道具の目利きだってできるんだ!
騎士様、最・高ぉぉぉ!
という感じで妙になぜか神格化されているのである。
もし……そんなスゲェ騎士様が推薦した道具が、10点満点中の0点でも取ろうものなら……
もう、賢い読者のみんななら分かるよね。
コンテストのたびに、あそこの騎士はモノの価値が分からぬ阿呆なのかと、永遠にネタにされ笑い続けられるのだ。
だって、騎士は不老不死!
笑いのネタだって不滅ですwww
そんなスゲェ推薦状がタカトの手にあるのだ。
ビン子でなくてもビックリぽん! である。
だが、ビン子には一抹の不安が残った。
というのも、タカトの作る道具は『スカート捲りま扇』や『ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!』などである。
『スカート捲りま扇』など女子学生のスカートを捲る道具。
いわゆる、いったい何の役に立つのか分からないアホな道具ばかり。
――もしかして……タカト……今まで作ったアホな道具でコンテストに出る気はないわよね?
だが、それは昔のこと!
もしかしたらビン子の知らないところで、最近のタカトは成長しているのかもしれない。
――きっと! コンテスト用に何かすごい道具でも作ったのよ!
でも、ここ最近のタカトは一人部屋に閉じこもって泣いていた。
とても道具作りなどできなかったはず……
それは、タカトをよく知るビン子なら、閉ざされたドア越しにでもよく分かっていた。
ならば、ここ最近の開発した道具の中に何かすごいものがあったはず!
ということで、ビン子は、第七駐屯地で作ったあれやこれやを思い出す。
――そうそう確か! タカトの奴! 物質格納道具を作っていたではあ~りませんか!
エクセレント!
それはもう、なんと素晴らしい道具なんでしょう!
男なら誰しも欲しいと思わずにいられない至高の一品!
その名も『エロ本カクーセル巻』!
家族がいると隠し場所に困るムフフな本やDVD。
それらを瞬時に腕に巻いたブレスレットの中に格納することができるという画期的な道具なのである。
トイレの中など一人でひっそりと読みたいとき。
布団の中でちょっとムラムラした時など、さっとムフフな本を取り出すことができるのだ。
ついでに言うと、物質格納というだけあってティッシュやローション、電動オ〇ホなどあらゆるものを格納することができる。
アメージング!
しかし、こんな道具しか作ることができないタカトに、騎士の推薦状?
偽物ではないのだろうか?
騎士は騎士でも魔人騎士。魔物が書いたものではないのだろうか?
タカトならありうる……
というか、タカトに推薦状を書くなんて、魔物でもない限りあり得ない。
そんなビン子は恐る恐る確認する。
「タカト……それって、本当に一之祐様が書いた推薦状よね?」
「当たり前だろwwwここは第七の騎士の門外だからな!」
「どうやって手に入れたのよ! そんなもの!」
「知りたい~?」
「ウン……」
「ふっ! ならば、タカト様、この無知なビン子に是非とも教えてくださいませぇぇと頭を下げたら教えてやらんでもないがな!」
……以下略……
ビシっ!
「いい加減にしなさい!」
「あ……ごめんなさい……私めが悪うございました……」
と言うことで、タカトはしぶしぶ説明を始めた。
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