第三章 道具コンテスト ~ ブッ!質格納道具!エロ本カクーセル巻編
第605話 プロローグ
空は澄み切っていた。
天まで抜けそうな青い空。
今日も快便! いや快晴である!
だが、時折流れてくるレンズのような白い雲が、まるで竜ノ巣のように大きなとぐろを巻いていた。
それは、まるで青いキャンバスに描かれた白いウ●コ。
これから先の天候は荒れるかも?
あれ? この導入部分どこかで見たことがあるような?
気のせいか?
時は昼前。
いまや天高く上った太陽がさんさんとその光を降り注ぎ、足元の茶色い大地を干からびせていた。
そう、ここは第七の騎士の門外、砂漠のフィールドである。
そんな砂漠の真ん中に十台ほどの荷馬車の隊列が伸びていた。
先ほど第七駐屯地を後にした金蔵家の輸送隊である。
先頭から5台ほど後ろ、ちょうど真ん中の荷馬車の御者台では鼻歌を歌うタカトが馬の手綱を引いていた。
フ♪ フ♪ フフフの♪ フン♪
その様子はご機嫌そのもの。
頭上の太陽と同じぐらいカラっとしていた。
そんなタカトの横にはいつものように握りこぶし一個分を開けてビン子が座っていた。
だが、その様子はどこかよそよそしい。
というのも、今のビン子にとって、この握りこぶし一個分の距離が何か妙に遠く感じられるのだ。
先ほどから横で元気に鼻歌を歌うタカト。
それが、なぜかカラ元気のように痛々しく感じられてたまらないのである。
数日前……
タカトの目の前で切り刻まれたアイナの姿。
それはタカトの背後に立っていたビン子の目にも、決して洗い落とすことのできないシミのように強く記憶としてこびりついていた。
あの瞬間、ビン子自身は何がおこったのか分からなかった。
というか、今でもアイナが死んだことが信じられないでいた。
だが、駐屯地の広場に広がったアイナの肉片。
広がりゆく赤い血だまり……
それが緑の蒸気を立てながらゆっくりと消えていくのだ。
これが夢であってくれとビン子でさえ思ったことだろう。
そう、ビン子の心も何か大きな刃物でグサリと切り裂かれたかのように悲鳴を上げていたのだ。
ならば、アイナちゃんの大ファンであるタカトなら、その絶望はいかほどであっただろうか。
それを思うと、ビン子の胸は押しつぶされそうになるぐらい息苦しくなった。
しかし、今、御者台に座るタカトはそんな素振りを全く見せない。
もしかして無理をしている?
確かに無理をしているのは間違いないのだ。
だが、タカトは、タカト自身に強く言い聞かせていたのだ。
そう……
『アイナはきっと生きている!』
と。
あの後、ひとり部屋に引きこもっていたタカトは、ドアの外からかけられる権蔵の言葉を聞いて一つの結論を導き出したのだ。
そう、ここは過去の時間軸。
タカトたちのいた時間よりも約10年ほど前の時間である。
もし仮にこの時代でアイナが死んだとしたとしたならば、タカトたちがいた未来のアイナはいないことになってしまうではないか。
だが、タカトたちの時代には、確実にアイナは存在していたのだ。
これはどういうことだ?
どう説明する?
もしかして、タカトたちが過去に来たことによって未来が変わってしまったのだろうか?
確かにこの可能性もある。
だが、未来が変わるというのであれば、再度、過去を書きかえればいいだけなのだ。
実際にタカトたちは過去にやって来た。
ならば、もう一度アイナが死ぬ前に戻ればいいのである。
だが、タカトたちが過去に来ることが確定された事実であればどうであろう?
過去に遷移したタカトたちの存在が、未来の時間を形成するのである。
それはココで死んだアイナの存在が未来につながるという意味なのだ。
しかし、それではおかしいではないか?
死んだはずのアイナが未来で生きているのである。
この矛盾を解決するためには、アイナは生きていないといけないのである。
アイナは確かにタカトの目の前で肉片に切り刻まれた。
だが、どういう理由かは分からないが、おそらくアイナは復活したのだ。
もしかしたら、アイナの体に融合された第三世代の融合加工の力なのかもしれない。
いや、きっとそうに違いない。
鼻歌を歌うタカトは、今一度、自分に強く言い聞かせる。
『アイナはきっと生きている!』
だが……
この時のタカトは知らなかったのだ……
未来が簡単に変わる訳もなく……
死人がよみがえる訳でもないことを……
そして、未来のアイナの正体すらも……知らなかったのだ……
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