第557話 私にも経験があります!
作業場の中で『恋バナナの耳』を押し当てていた権蔵は怒鳴り声をあげた。
「これのどこが美女の声だ! モーブ様の声ではないか!」
鼻息荒い権蔵は、バナナをタカトの耳へと押し返した。
「そんな馬鹿な! なんでオッサンなんだよ! じいちゃん耳がボケたか!」
思いもしない言いがかかりに少々腹を立てたタカトは、権蔵の手からバナナを奪い取ると、さっと自分の耳に押し付けた。
どれどれ?
――今時だと、エメラルダの姉ちゃんの恋のため息ぐらいが聞こえてきてもいいはず❤
しかし、タカトの耳に飛び込んできたのはモーブの鋭い突っ込み!
「なんやそれ!」
ガシン!
フゴォ!
暗い作業場に、男の悲鳴が響きわたった。
それはそれは悲痛な叫び声。
タカトの後ろに立っていたビン子ですら、大きく開かれた口を閉じるのを忘れるぐらい大きな断末魔だった。
だがしかし、この男のうめき声はモーブのものではなかった。
そう、それは、盗み聞きをしているタカトのもの。
タカトの口からうめき声がもれていたのだ。
今や激痛を耐えるタカトの口がタコのようにまっすぐに伸び苦痛にゆがんでいた。
前かがみとなったタカトの上体がゆっくりと作業場の床へと沈んでいく。
一体タカトに何が起こったのだ?
実は、タカトの股間に何か棒のようなものが突っ込まれていたのだ。
いや、突っ込まれるという表現は
どちらかと言うと、突撃? 突進? 殴り込み?
勢いよく伸びた
「すまん……すまん……」
そんな伸びた
どうやら権蔵はタカトが作った
だが、この
そう、タカトが改良した
解説しよう!
しかし、この作業場にはタカトは初めて顔を出す。
こんなところにタカトの片栗粉の匂いなどあるはずはない。
ということなので、
分かったかな!
えっ? なんで股間に片栗粉の匂いがすのかって?
それを聞く? 聞いちゃう? 聞いちゃうのぉ?
タカトは、朝、気を失ってからこれまで一度もパンツを替えていないのである。
そして、朝には必ず起こる男の子の固有生理現象!
起立~! 礼!
先生! おはようございま~す!
あぁ懐かしい……おじさんになるとね……立つだけでもしんどいのよ……
だんだんと、年を取るにしたがって腰も曲がってくるし……
これでも若い頃は教師ビンビン物語だったのよ……
もう一度、
ファイヤぁぁぁぁぁぁ~ ボンバァァァァァー!
古い? 古臭い? そうかなぁ~
今、観ても結構、面白いと思うけどなぁ~
えっ、そんなジジイのヨタ話は聞きたくないだけだって?
大体オハヨウさんは起立だけだろうって? オハヨウさんは礼はしない? しかも唾を吐くぐらい元気な挨拶をするボーカリストはそうそういないって?
そこまでおっしゃるあなたは、紛れもなくオナ禁経験者ですね!
実は私にも経験があります!
タカト君の名誉のために黙っておこうと思っていたのですが、仕方ない……
そんなバンド仲間のために秘密を暴露する事にいたしましょう……
実はねタカト君、朝、気を失っている最中にハーレムの夢を見ていたんですよ。
可愛いお姉ちゃんの巨乳に押しつぶされる夢!
もう、四方八方から迫りくる巨乳!
そりゃ辛抱たまりませんわ!
その証拠に、タカトのオハヨウさんはちゃんと感謝の気持ちで土下座をしていましたからね。
しかも、白いゲロまではきながらピクピクと!
しかも、ごたいそうに
そんな爪でギュッと掴まれたまま勢いよくえぐられたのである……
タカトのパンツの中は、先ほどまで残っていたハーレムの淡いピンクの余韻から、真っ赤に燃える地獄の一丁目へと変貌したことは間違いない。
おそらく今頃……タカトの股間は、ぺっしゃんこ……
男ならわかるこの激痛……
ご愁傷様という言葉しか浮かんでこない。
だが、権蔵は思った。
――何じゃこの道具……
一見くだらないように見えるが、全て新しい発想。
これが全て第一世代の融合加工技術でできているとでもいうのか?
――そんなバカな……
ワシがやっている道具の強化などというモノとは全くもって別次元……
いうなれば、新しい道具の生成……
これが新しい世代の発想なのか……
そんなタカトの道具を持つ権蔵の手が、小刻みに震えていた。
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