第536話 この物語はフィクションです!


「というか……なんでやねん……」

 湯煙が立つ露天風呂でタカトはつぶやいていた。


「なんか……思ってたのとなんか違う……」

 天狗だと思っていたのがチンチラだったというぐらい、タカトの思惑は外れていた。


 金蔵家のお風呂は露天風呂である。

 ただ、その露天風呂は一つしかないため、女湯と男湯を時間を分けて使っているのだ。

 そして、今は女湯の時間。

 というか、座久夜さくやによって強制的に女湯ののれんにかけ替えられていた。


 しかし、タカトはそんな女湯の洗い場に転がって駄々をこねているのだ。

 座久夜さくやにウ●コがついたお尻を洗ってもらうはずの約束。

 そのため、わざわざ女湯に入れてもらったのである。


 そんなタカトを見る座久夜さくやはあきれ顔。

「なんだ……お前……気に入らんのか?」


「気に入らんも何も! これでは何も見えん! 何も見えんではないか!」

「お前はアホか! 真音子も一緒に入っているのに、お前なんぞに我が子の肌なぞ見せられるかい!」


 なみなみと張られた湯船からこぼれ出した湯が流れる岩の床。

 その床でタカトは、ロープによって全身をぐるぐる巻きにされたミイラのように転がっていた。

 顔までも茶色いロープでまかれたその姿は、まるで茶色い芋虫、いや巨大なウ●コのようにもみえる。

 そんなウ●コの表面に張り付いている未消化の白いスイカの種が二つ目を引いた。

 そう、これこそ、ロープの隙間からのぞくタカトのオケツ!

 お尻だけが、かろうじてロープの隙間から見えていたのだ。


 そんなウ●コが、のたうちながら先ほどから叫んでいるのである。

「開墾したての畑なんか見る価値などあるか! 俺はたわわに実ったスイカ畑が見たいんだ!」


 カッチン!


「なんやて! ワレ!」

 座久夜さくやは、ドスンと芋虫の上に足を打ち付けた。


 ウゴ!


「ワレは! ワテの真音子は見る価値ないっていうんか!」

 座久夜さくやの足はタカトのグリグリと背中を押し付ける。


 ただでさえロープで息苦しいのに、さらに背中を押さえつけれれては呼吸もままならない。

 何も答えられないタカトは、必死にもがく。

 酸素を求めて必死にもがく。


 だが、そんな思いは座久夜さくやには通じない。

「黙ってないで、なんか言うてみい! コラ!」


 遂にウ●コは動きを止めた。


「さっさと洗うぞ!」

 座久夜さくやむき出しのタカトのお尻をごしごしと洗いだした。

 さすが、座久夜さくや様、尻を洗おうという下賤な約束事であっても、きっちりと守る女である。

 そんな性格のため手下どもから寄せられる信用はめちゃめちゃ厚いのである。


 ザパーン!

 タカトのケツに風呂の湯がかけられた。


「アツイイイイイイ!」


 悲鳴を上げるタカトは、ウ●コの状態にもかかわらず跳ね飛んだ。

 既にタカトのケツは、座久夜さくやが持つ棒タワシによってゴシゴシと洗われてすでに真っ赤っかになっていたのだ。

 そこに、汚物は消毒だ! と言わんばかりに沸きだしたばかりの源泉がかけられたのである。

 そら……熱いにきまっとるわ……


 殺菌処理の終わった座久夜さくやは、温泉の洗い場でビン子と並んで体を洗う。

 ビン子の体をちらりと見る座久夜さくや

「やっぱり、あんたの体にも奴隷の刻印ないな……あんたら……拾い子か?」

 小さくうなずくビン子。

「そうか……大変、やったんやな……しかし、そんな事一言も言いよらせんし。あの権蔵のボケが!」


 そんな横でうずくまる真音子が座久夜さくやに背を向けて、何かごそごそとしていた。


「真音子ちゃん、なにしとんの……」


 そんな真音子を覗き込む座久夜さくやの表情が突然豹変した。


「真音子! それは触ったらイカンと言っとるやろが! どこから持ってきたんや!」


 声に驚く真音子はビクッと驚き動きを止めた。

 その足元には小さな白いスイカの種のようなモノが5つころがっていた。

 その種を面白そうに石でゴンゴンと潰してる最中だったのだ。


「母様……これを潰すと、なんだか楽しくなるの……」


 バチィん!

 その言葉が終わるよりも早く座久夜さくやの平手うちが真音子のほほに入った。


 ピンポンパンポン!

 え~読者の皆様にご連絡でございます。

 この物語はフィクションであり、決して子供に対する親の体罰を推奨するものではございません。

 という事で、決して作者に文句を言わないように!

 ピンポンパンポン!


 そして、すかさず桶に入った湯を真音子にかけ出した。

 何度も何度も、お湯を汲んでは頭からかける。

 それが終わったかと思うと、今度は石鹸で真音子の体を丹念に洗い出した。

「もうついてないか……全部、洗い落とせたやろか……」

 そうつぶやく座久夜さくやの形相は必死の様子。

 その行動にビン子はただただ驚くばかりであった。


「真音子ちゃん! それはヒマモロフの種や! この種の油には中毒性がある! 中毒になったらタダのいかれた廃人や! だから、それには絶対触ったらイカンっていつも言っとるやろが!」


「母様、ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!」

 真音子は泣きながら、何度も謝っていた。


「クソ! あのボケども! あれだけ、このゴミクズが床に落ちてないかちゃんと確認しておけと言うといたのに!」


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