第518話 やっとついた……

 キーストーンに名前を書かれるという事は、そのフィールドを支配するという事であるが、それと同時に門から出られなくなることを意味する。

 すなわち、生気を吸って生きる神にとって、生気をもとめて自由に移動することができなくなるのである。

 そのため、門を所有する神には、生き残るために神民を作る能力が与えられるのだ。

 門内に広がる国に神民を多く所有すれば、神はその神民の生気を吸い、永遠の命を得られるのである。

 そしてこの最初の神民が王である。

 いい事ばかりではない、国になるという事は、すなわち小門が大門になるという事を意味する。

 王だろうが騎士だろうが、どんな人間も入り込むことができる。

 すなわち、侵略することは簡単なのである。

 このように、新たにできた国は、簡単に魔人世界、聖人世界によって蹂躙され、属国にされ、こき使われるのがおちなのだ。

 だから、キーストーンで大門をさっさと閉めてしまうのである。

 そうなれば、相手の王や騎士は通れない。

 ただ、自分も抜け出せなくなってしまう。


 だが、ビン子が真名を教えないのは、こういった理由からではない。

 ただ単に、真名を覚えていないのだ。

 そう、タカトと一緒に権蔵に連れてこられたビン子は、記憶を失っていた。

 自分の名前すらも。

 このビン子と言う名前ですら、タカトがつけた名前である。

 本当の名前……

 それすら、思い出すことができなかった。


 どぴゅーーーーーん!

 再び戦車砲から白い何かが飛び出した!


 キャ!

 白い液を顔面で受け止めたリンが尻もちをついた。


 ガラガラガラ

 その衝撃で、ハヤテが掘った壁が突然崩れおちた。

 まるでキーストーンという支えていた柱を失ったかのように。


 崩れた先から光が差し込む。

 目を覆う4人。

 その先には、見慣れた光景があった。

 そう、そこはあの小門の大空洞。

 ガンエンやコウエン達が生活する場所であった。


『ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!』が、一瞬、キーストーンの動きに従いぐるりと回ったかと思ったのだが……

 やはり、再度、崩れた壁の先をビシっと指さした。

 その先で、ガンエンがこちらを不思議そうに伺っている。

「タカトや……そんなところで何しとる?」

 まぁ、ガンエンの反応も無理もない。

 いきなり目の前の壁が崩れたと思ったら、白い液でべとべとになったメイド娘が座り込んでいるではないか。

 そして、こともあろうにその前でニヤニヤと笑うタカト。

 どう見ても、変質者が少女を襲っているようにしか見えない。


「ガンエンの爺ちゃんこそ……」

 そんな変質者のタカトもまた、不思議そうにガンエンを見ていた。

 ガンエンは目の前で、両手に持つ何か白いものをピンと張り広げていたのである。

 それにはでかでかと「金の玉」の文字!

 垂れる布切れは、どうやらふんどし!

 さすが! 『ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!』!

 ちゃんと金に反応したようで!

 どうやらガンエンは、ネコミミのオッサンたちがおいていった商隊の荷物をあさっていた最中。

 その中にあったふんどしとパンツに悩んでいたところであった。


 久しぶりの聖人世界の空気。

 日の光がまだらに差し込む森の中は、すがすがしい香りが漂っていた。

 大きく深呼吸するビン子。

 ――やっと、戻ってきたんだ……

 その横で、手を揉みながらリンのお尻を視姦するタカト。

 だらしなく緩み切った顔は、まさしく犯罪者。

 そんなタカトを蔑むかのように、リンが冷たくあしらう。

「タカトさん……ミーア姉さまのところは、まだですか?」


 そう、タカトたちは、リンをミーアのもとに連れていくために権蔵の家へと向かおおうとしていた。

 だが、小門を出るにもひと悶着!


「いや! 私も行きたい!」

 少々、駄々をこねるエメラルダ!

 イヤイヤと首を振るたびに、その巨乳が揺れていた。

 それをたしなめるカルロス。

「エメラルダ様……先日、刺客たちに襲われたところでございましょうが……」

「そうですぞ! ここはタカトたちだけで大丈夫ですぞ!」

 ガンエンも、慌ててフォローする。

 その前に、ズボンをはこうよガンエンの爺ちゃん……

「金の玉」のふんどしをひらひらさせながらエメラルダを諭す姿は、さすがに変態……

 いかに元女騎士のエメラルダであっても、こんなところにはいたくはないのだろう……

 というか、ガンエンの爺ちゃん、それ気に入ったの?


 刺客に襲われたのち、行方不明になっていたエメラルダ達。

 生きているのか、死んでいるのかも分からなかった。

 ガンエンたちが必死で小門の中を捜索するものの、全くその詳細がつかめない。

 だが、その捜索の過程で、ガンエンたちはネコミミのオッサンを偶然見つけた。


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