第516話 成敗!

「ごめんごめん! で、その『ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!』は大丈夫なの?」


「フッ! この『ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!』は、未使用の高級パンツであればあるほど、精密射撃で見つけ出すようになっている! それが、どんなに遠くに離れていても攻撃できる! いうなれば駆逐戦車! すなわち、シルク100%! いや、金糸100%のパンツがあればそれに反応するはずなのだ!」


「バカね……タカト、金糸100%のパンツなんてそんなの誰がはくのよ! あるわけないじゃない!」


 鼻で笑うタカトは、バカにするかのようにビン子を見下す。

「フン! ビン子! お前は知らないのか! 蘭華蘭菊が以前働いていた店の奥、すなわち赤い蝋燭に照らし出された大人のアイテムコーナーにひときわ光り輝く黄金のパンツがあったことを!」


「知らないわよ! そんなところ見もしないわよ!」


「だから、お前はおろかなのだ! 選り好みせず常に情報を仕入れておかないから、いざと言う時に困るんだろ!」


「タカトの場合は、そこしか見てないでしょうが!」

「そ……そんなことはないぞ!」

「なら、その店でお買い得な半額商品がどこに置いてあるのか、言ってみなさいよ!」

「えっ……えーと……トイレの横とか?」

「違うわよ! カウンターの横ヨ! カウンターの!」

「チョ! ビン子! それ普通すぎ!」

「タカト! あんたは、その普通過ぎの事すら知らないんでしょうが!」

「すんません……」


 あきれた様子でリンが割って入る。

「タカトさん。馬鹿を言ってないで、その道具を使って出口をさっさと探してください!」


 偉そうに命令するリンである。

 だが、そもそも、道に迷ったのはリンのせいである。

 この娘、その事実を理解しているのだろうか?

 いや、たぶんしてないな……


 タカトは、仕方なく『ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!』を開血解放した。

 箱の上の戦車砲が勢いよくくるくる回ったかと思うと、ピタリと止まる。

「それ見ろ! ちゃんと反応しただろ!」

 喜ぶタカト!

 しかし、残る三人の表情は何やら暗い。

 指さす方向には洞穴の壁しかなかったのだ。


「ダメですね……タカトさん」

 リンはあきれたように言い放つと、また、勝手に歩き始めた。

「ちょっと、リンちゃん! また、勝手に歩くと余計に迷うわよ!」

 エメラルダが制止する。

 振り向いたリンの顔は、ふてくされ膨らんでいた。

「すでに迷っている状況で、これ以上迷うことはありません!」

 確かにそうである。


 一方、タカトは『ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!』を小突いていた。

「おっかしいな。イケると思ったんだけどな?」

「ちょっと! タカト、しっかりしなさいよ!」

「血が足りなかったかな? ちょっとビン子、ココに指、押し当ててみろよ!」

「なんで私が!」

「おれ、あの日で貧血気味なんだよ!」

「あの日って何よ! ヘンタイ!」

「何想像してんだよ! 鼻血の日だよ! 鼻血! お前に叩かれて鼻血が出たんだよ! そのせいでこれ以上出血したら失血死してしまうだろ! だから、ビン子、お前が代わりに開血解放してみろよ!」

 いまだ、鼻血を垂らしているタカト。

 そのみっともない顔を見ると少々申し訳ない思いもしないわけでもないビン子。

 ――ちょっと強く叩きすぎたかしら……


「分かったわよ……」

 ビン子が『ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!』に指を押し当てた。

 途端、勢いよく回りだす『ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!』!

 そして、ビタリと一点を指し示す!


 どぴゅーーーーーん!


 戦車砲から白い何かが飛び出した!

「やったーーーーー! ついにイッたぞ! この先に高級パンツがある!」

「タカト! これで帰れるのね!」

 その白きものが飛んだ先へと視線を向ける二人。


 目が点。


 ………………


 …………


 ……


 そこには白きものでべとべとになったリンが立っていた。


「お前! まさか金のパンツを履いているのか!」

「履いてません!」

「見せてみろ! ワシに見せてみろ! よいではないか!」

「あれぇーーーーーー! お代官様!」


 成敗せいばい

 ビシっ!


 地面に転がるタカトの体


 その体から白き魂が抜け出たかと思うと、まるで、あの世を探すかのようにフラフラと目の前の壁に吸い込まれていった。


南無阿弥陀仏なむあみだぶつ……」

 直立し、こうべを垂れるビン子かな……

 その合わさる手のひらが、不浄なる魂の成仏を見送っていた。


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