第515話 迷った?(2)
「お前なんか持ってきてないのかよ!」
タカトはビン子のカバンを奪い取った。
そして、その中を懸命にあさりだす。
「何かないか! 何かないか!」
カバンの中にはタカトが今までに作った訳の分からない道具がいっぱい入っていた。
「おっ! これなんかどうだ?」
そう言うタカトはカバンの中から一つの道具を取り出した。
すでにその道具の存在を忘れていたビン子が不思議そうに尋ねた。
「それは何?」
「聞いて驚け! これは『ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!』という道具だぁぁぁぁぁぁ!」
突き上げられたタカトの手の平の中で、小さな箱の上につけられた戦車砲のようなモノがくるくると回っていた。
「説明しよう! 例えば、仮にランジェリーショップに行ったとする!」
聞いてもないのに、得意顔のタカトはいきなり解説を始めた。
「女の子にパンツをプレゼントをしたいと思っても、店の中には数々のパンツが並んでいるわけだ!」
って、いきなり何の話やねん……
「そんな数あるパンツの中から、どのパンツが最もプレゼントに適しているのか男には全く分からない!」
もうね……暗い洞窟の中でいきなりそんな話をされてもドン引きなだけ……
みろ、その証拠に3人の女たちは蔑む目でタカトを見ているではないか。
だが、タカトは全く気にしない。
それどころか、ますますヒートアップしていたのだ!
「そんな時に役に立つのがこの『ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!』なのだぁぁぁぁぁぁ!」
高らかと持ち上げる『ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!』が輝いて見えるのは、おそらくアホのタカトぐらいのものだろう。
「たちまちボンキュッボンの体形にピッタリと合うパンツを選択してくれる! しかも、第二候補まで選んでくれる安全機能付き!」
「また、アホなものを作ってからに……」
ビン子は、恥ずかしそうに顔に手を当てていた。
だが、その説明を真面目に聞いていたエメラルダは不思議そうに首を傾げた。
「だけど、タカト君……ココには選ぶようなパンツはないわよ……」
「フフフ! 甘いなエメラルダの姉ちゃん!」
自信満々のタカトが偉そうに指を振った。
その様子にリンがハッと気が付いた。
「もしかして、タカトさん! 私たちのパンツを奪おうとでもいうのですか!」
「ちがわーい! そんなことしたら俺は犯罪者だろうが!」
「えっ! タカトさん犯罪者と違うんですか?」
リンはキョトンとして答えた。
「いいか、よく聞け! これは使用済みのパンツには反応しない。なぜなら使用済みはすべからくレアアイテム! 特に美女の脱ぎたてなどスーパーレアアイテムに匹敵! いやウルトラレアイテムといっても過言ではない! もはや洗濯! 違った……選択する必要などないのだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
などと力説するタカトには、まるで汚い汚物がそこにあるかのような冷たい視線が向けられていた。
――いっぺん! お前が洗濯されて来い!
おそらく、三人の女性たちは皆、同じことを思っていたに違いない。
オほん……
それに気づいたタカトはひとつ咳払い。
「ということで、これは未使用品にしか反応しません」
気を取り直してさらに説明をつづけるのだ。
「ここで、これを開血解放すれば、きっと素敵な未使用品のパンツを指し示す事でしょう!」
って、説明になっとらんがな……
でも、日ごろからアホのタカトの側にいるビン子はくだらないタカトの思考に気づいたのだ。
――なるほど!
そう、未使用のパンツの方向をさし示すということは、外の世界にあるパンツの場所を示すということなのだ。
すなわち、外につながる出口をさし示すことと同義なのだ。
――だが、待てよ?
ビン子はふと沸き起こった疑問をタカトにぶつけた。
「でも、タカト……魔の融合国にも奴隷用の未使用パンツがあるんじゃないの?」
そう、自分たちは今、聖人世界に戻りたいのだ。
ここで魔人世界に戻ってしまったのでは元の木阿弥。
だが、タカトの説明では『ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!』が示す方角が、どちらの世界を示しているのか分からないではないか。
ちっ! ちっ! ちっ!
片目をつぶったタカトが、待ってましたと言わんばかりに顔の前で指を振っていた。
「甘いな! ビン子! 俺は既にチェック済みだ! 魔人たちの店にはパンツはおいていない。すなわち魔人世界の人間はノーパン!」
――何ですと!
びっくりしたビン子は咄嗟にリンの様子を伺った。
赤面したリンはスカートを押さえて叫ぶ。
「ちゃんと履いてますッ!」
「どれどれ……ならば、わしに見せてみるがよい!」
タカトが悪代官のようないやらしい表情を浮かべながら、リンのスカートへと手を伸ばした。
ゲヘゲヘゲヘ!
よいではないか! よいではないか!
あれぇーーーーーー! お代官さまぁぁぁぁぁ!
……などという展開になることもなく。
当然に……
ビシっ!
と言うハリセンの音ともに、ビン子の大きな声が洞窟内に響いていた。
「
振り上げられたハリセンの白き一閃が地面から打ち上がるような軌跡を描いていた。
すでに洞窟の天井を指し示していたハリセンの先をタカトの体が飛んでいく。
あれぇーーーーーー!
そんなタカトの鼻から垂れ落ちる鼻血が、まるで大名行列の付き人かのようにその体を追いかけていた。
お代官さまぁぁぁぁぁ! お待ち下されぇぇぇぇぇぇぇ!
鼻血を拭くタカトは怒鳴り声をあげた。
「あのね! もうこの状況なら、魔の融合国だろうが、聖人世界の融合国だろうが、どっちでもいいんでしょうが! 要は、この小門から出られたらいいってことだろう! 分かってんのか! コラ!」
「コラじゃないわよ! 変態タカト!」
ビン子が再びハリセンを振り上げる。
「ひいぃぃ! ごめんなさい! ごめんなさい! わたくしめが悪うございました!」
両の手で頭を必死にガードするタカトは卑屈に謝っていた。
だが、いまだにタカトの言っている意味が分からないようすのエメラルダ。
「ねぇ、タカト君、この洞窟の出口が、その『ガールズ●パンツァー』で本当に分かるの?」
「『ガールズ●パンツァー』じゃなーーーーーい! それだと戦車娘だろうが! これは『ガールズ! アン・ドゥ パンツ、ぁー!』だ!」
もう、どっちでもいいわ!
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