第466話 一週目
第一コーナーをトップで疾走するライオガルを、ダンクロールが追いあげる。
まだ1週目だというのに飛ばす! 飛ばす!
その緑の瞳には第二コーナーを曲がった先の通過ゲートが映っていた。
ダンクロールは、さらに加速しライオガルに体を並べる。
しかし、その瞬間、ダンクロールの体が大きく転倒した。
激しい音を立てながら地面を滑っていくダンクロールの体。
そして、その体は通過ゲートの前で砂埃と共に動きを止めた。
その前を、振り向くことなく悠々と走り続けるライオガル。
その背では、ダンクロールの頭と、その騎手である奴隷人間の頭をまるで、スイカのように鎌に突き刺し遊んでいるカマキガルの姿があった。
ライオガルに続き、4匹の魔物が通過ゲートをくぐる、そして、ゴリラの魔物が続いた後、一番最後にタカトとハヤテが走り抜けていった。
あっ……違った。最後尾は、グレストールでしたね。
あいつ、スタート地点から、また一歩も動いていないもんね。
だが、これは奴のいつものスタイル。
一周回って戻ってくる奴を、待ち構えて次々と食っていくのである。
スタート地点に、トップで戻ってきたライオガルとカマキガルペア。
カマキガルは奴隷人間の頭をおいしそうにムシャムシャト食べている。
魔物にとって生気の多く宿る人間の脳は大好物なのだ。
食うなと言う方が無理な話。
だが、みるみるとグレストールの姿が迫る。
観客席に座る緑のウンコ、もとい、スルボマが大声で叫んだ。
「さぁ! やっておしまい! 今日こそあのクソ蛇をフルボッコや!」
その声がライオガルたちに聞こえたのかどうかは分からない。
しかし、ライオガルが大きく吠えるとともに加速する。
カマキガルも、急いで頭を食べ終わると空に舞い上がった。
なんと、地上からはライオガル、上空からはカマキガルの挟み撃ち!
これはさすがに反則では……
だが、これは魔人国の魔物バトル!
勝ったものが正義!
生き残った者が勝者なのだ。
要は、何でもあり! おもろければ何でもオッケ―の世界なのである。
その証拠に、観客席は今までない攻撃パターンに沸きに沸いていた。
地上のライオガルを狙うために一つの首が低く地表を滑りゆく。
それに対して、別の首は上空のカマキガルを捕らえるために大きく伸びあがった。
首と首が、互いに互いを引っ張り、ついに身動きが取れなくなったグレストールの体。
そんな動きが止まったグレストールの頭にライオガルがかみついた。
空を見上げる蛇の目にカマキガルの鎌が振り下ろされた。
右端の蛇の右目から鮮血が吹き上げている。
今まで圧倒的な力を誇示していたグレストールが、悲鳴を上げてのたうち回っているではないか。
「行ける! 行けるで! ついにシウボマのグレストールを潰せる!」
その様子に、観客席のスルボマのテンションは否が応でも上がっていた。
噛みつくライオガルを懸命に振り払おうとするグレストール。
次々と振られる鎌を避けようとする蛇の頭。
スタート地点は、一週目にして、大激戦の様相を呈していた。
グレストールが、こんなにもがく姿はめったにない。
ライオガルに続く四匹の魔物たちも、ここぞとばかりにグレストールの残ったクビ次々と飛びかかった。
この三頭蛇を潰してしまえば、自分たちの優勝の可能性はグーンと高くなる。
それどころか、生存の可能性が確実に生まれるのである。
ココがチャンスとばかりに、皆が示し合わせたかのように一斉に襲い掛かった。
だが、その横を何食わぬ顔で通り抜けていくゴリラとタカト。
こいつらに協力と言う概念は無いのだろうか……
一週目を終わった時点でトップはゴリラ、2位はタカトとハヤテ、残りは混戦という状態になっていた。
ということで、タカト君、生還するまであと2周!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます