第463話 万馬券の男
今や、風前の灯火のタカト君。
そんなことを知ってか知らずか、魔物バトルのスタートラインで、鼻息荒く立っていた。
まだ、その体内にはヒマモロフの油の影響が残っているのだろう。
そして、その傍らではハヤテが、隣のゴリラの魔物に対して唸り声をあげ威嚇していた。
ゴリラはゴリラで、そんなハヤテはアウトオブ眼中の様子。
背中に乗る騎手の奴隷と一緒に、余裕をかましながら鼻くそをほじっていた。
そんな会場に割れんばかりの拍手と声援が響いた。
登場口から三頭蛇のグレストールが遅れて現れたのである。
スタートライン近くに掲げられていたオッズ表が、勢いよく書き換わっていく。
グレストール 1.0001倍
ハヤテ&タカト10,001倍
単勝で1万倍とは……エメラルダとビン子以外にかけている奴はいないという事だろうか。
ちなみに、この魔物バトル、複勝やワイドと言ったものも存在する。
だが、常に皆殺し状態でレースが終わるため、2着以降の順位が決められないのである。
まぁ、複勝でも、ワイドでも、一位が当たればいいのである。
そう考えると、単勝も複勝も全て同じ事なのだ。
いや、ワイドだと……3位以内の組み合わせだから、当たる確率は増えるのか……
だからミーアはワイドを好んで買っているのね……
主催者のハトネンは、主賓室の椅子に腰かけ、疑念のダイスを先ほどから振っていた。
疑念のダイスは、未来に起こりうる事象を確率で予想することができる凄いダイスだ。
ダイスを投げるたびに、先程からハトネンの顔を形づくるネズミの鼻に引っ付くヒゲがピクピクと動いている。
ハトネンは今回の主催者であるため負けるわけにはいかない。
コレでも遊び人のハトさんと呼ばれた男だ。
門内のバトルで一之祐に負け続けていたとしても、遊びごとで負けるわけにはいかない。
ココで負ければ、何事にも勝てないタダのネズミになってしまう。
コレでも第7の門の騎士なのだ。
こんな事では、背中の桜吹雪が泣いてしまう……って、背中にあるのは、聖人世界のアロハシャツの模様ですから!
まぁ、そんなことは、どうでもいい。
要は、カッコよく勝てばいいのである。
全てにおいて、規格外の戦力で!
そう、皆の度肝を抜かすような粋な技で!
そこで、手持ちの魔物でも、速さに自信がある三ツ木マウスを出していた。
この三ツ木マウスという魔物は、既に人型をなしている。
それだけ進化をした魔物と言うことだ。
全身、黒い体に緑と黒の三本松を模したパンツを履いているのだ。
その走りは、まるで水流の如く!
呼吸を吐くたびに集中し、加速していくのだ。
しかし、ハトネンが、その三ツ木マウスの優勝の可能性をダイスで占うと、10面ダイスの1しか出ないのだ。
と言うことは、優勝確立は10%以下と言う事である。
まぁ、ダイスの目には0がないので、もしかしたら0%と言う事なのかもしれない。
しかしこれは、あまりにも低い。
やはり、参加者の中に三頭蛇のグレストールがいるからなのだろうか。
「クソ! いまいましいシウボマめ! せっかくのレースが興ざめだ!」
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