第462話 単勝! 魔物券!
リンはスタジアムの中に駆け込んでいくタカトを見送りながら、スタジアムの案内係に念を押す。
タカトはミーキアン様の客人のため、勝手に食べるなと。
案内係は、少々困った顔をした。
レースが始まるまでは、ちゃんと身の安全を保障するが、いったんレースが始まれば、生きて帰れる保証はないと。
リンは、すさまじい笑顔でうなずく。
「当然ですわ! バトルは正々堂々でなければいけませんわ! おホホホホホ!」
タカトと分かれたリンとビン子とエメラルダ。
バトルの様子を見ようとスタジアムの観客席に上っていく。
途中、お上りさんだかバカだか分からない魔人たちが、よだれを垂らしながらリンたちに近づいてきた。
そのたびに、リンはうっとうしそうに胸をはだけさせると、魔人たちは、いそいそと小さくなりながら離れていった。
やはりリンの胸に記されたミーキアンの奴隷の刻印の影響力は絶大である。
誰一人として、ミーキアンの奴隷と分かったリンたちを襲おうとしなかった。
すでに何レースか終わった後なのだろう。
興奮覚めあらぬ観客席にすわる三人。
リンは隣に座る二人に尋ねた。
「どの魔物に賭けられたのですか?」
と言うのも、この観客席に入る前に、リンが提案してきたのだ。
せっかくだから、バトルに賭けませんか? と、
「その方が見ていても面白いかもしれませんよ」
まぁ、ミーアの受け売りであるが、その方が、ただ単にタカトを待つよりも気がまぎれるというものだ。
リンは、手持ちの大銅貨2枚を二人に渡した。
大銅貨1枚は、魔物バトルの魔物券一単位の最低購入金額である。
まぁ、ただ賭け事のあまり好きでないリンのこと。
魔物券一つ買ったらそれで充分とでも思っているのであろう。
もし、こんな時に賭け事大好きのミーアが側にいれば、複勝の買い方からワイドまで魔物券の買い方のレクチャーで半日熱く語られることになっただろう。
だが、そんなことお構いなしのリンの様子は上機嫌だった。
まだタカトのレースが始まってもないのに、さも万馬券が当たったかのようにうすら笑いを浮かべていた。
エメラルダとビン子は嬉しそうにリンへと魔物券を見せる。
二人ともかけたのがタカトの単勝であった。
互いの券を見た二人の視線が嫌そうに火花を散らすと「フン!」と、そっぽを向いた。
しかし、そこはやはり大人なのだろうか。
エメラルダは、リンを気遣った。
「リンちゃんは、何を買ったの?」
「これですよ! シウボマ様の三頭蛇のグレストールです。この子凄いんですよ! 今のところ参加したバトルは負けなし! しかもすべてのレースで参加者皆殺しです!」
ニコニコと答えるリン。
えっ……負けなしの皆殺し……
エメラルダとビン子は、お互いの顔を見合わせた。
その表情には先ほどまでの険悪なムードなど消し飛んでいた。
ただそこにあるのは、タカトは大丈夫なのだろうかと言う思考停止の状態だった。
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