第456話 肌を触ったのは……(4)
タカトは何かを思いついたかのように嫌らしく笑いつぶやいた
「そういえば、俺、ミーアのおっぱい揉んで、激しく抱き合った記憶が……」
確か、権蔵の家で帰る方法を悩み弱気になっていたミーアに、タカトが必ずその方法を見つけ出すと約束した時の事であった。
心細いミーアが、そのつながり温かさを確認するかのように、タカトの手を自身の胸へ押し付け抱き寄せたのだ。
だが、それだけだった。
それ以上でなければ、それ以下でもない。
ただ、それだけの事。
だが、嘘は言っていない。
確かに、事実はそうである。
言い方の問題だけの事である。
「その後は、もう、話さなくても分かるよね! ウンウン!」
抱き着くそぶりを見せながら口を尖らせ腰を振る。
往来の真ん中で、盛りのついた犬のように腰を振るタカトの様子は変態そのものであった。
通りを行きかう魔人たちが白い目でタカトを見つめる。
エメラルダでさえもドン引きである。
だが、リンだけは、顔面蒼白。
泳ぐ目で、何とかタカトを見ようとしていた。
あぁ……やっぱりミーアお姉さまは、この男を伴侶に選ばれたのですね……
思考が追い付かない。
私のお姉さまが……
お姉さまが……汚れていく……
お姉さまが……女になっていく……
いや……
でも、お姉さまもいつかは繁殖をしなければいけない……
そんなことは分かっている。
でも、でも……今でなくとも。
それどころか……こんな男でなくとも……
あぁ、私が男ならよかったのに……
私が男なら……こんな男にミーアお姉さまを託す必要はなかったのに……
……ミーアお姉さま……
天を見上げてから笑いをするリンは呆然自失。
タカトが、人食いの少女をやっつけた瞬間だった。
ビシっ!
腰を振り続けるタカトの頭が、突然、地面に叩きつけられた。
「このバカタカト! 何ミーアと変なことしてんのよ!」
ビン子のハリセンが、タカトの後頭部をシバキ倒していた。
ハリセンの勢いにもさらに磨きがかかっていた。
久しぶりのこの感覚!
待ってましたビン子ちゃん!
少々嬉しそうに後頭部をこするながら起き上がったタカトは思う。
とりあえず……みんな元気でよかった。
一人納得できないビン子だけは苛立ちタカトに詰め寄っていた。
「ちょっと! 何とか言いなさいよ! えっ! タカト」
ハリセンでタカトの頬をグイグイと押し込む。
タカトの口が頬とともに引きちぎれんばかりに伸びていく。
「ちょっとビン子しゃん……痛いって……あんた、大体その場にいたんでしょうが! 」
あっ……そういえば、あの時、寝てましたわ……ビン子しゃん、あなた、一人でぐっすり寝てましたわ。
「そうだった、あの時、俺が、寝ていたお前をパジャマに着替えさせたんだった……」
「もしかして……触ったの?」
「何を?」
「私の裸……」
「何当たり前のこと言ってんの? 服脱がせんとパジャマ着せれんだろうが……」
ビシっ! ビシっ! ビシっ! ビシっ!
天を見上げて悲鳴を上げるビン子は錯乱状態。
タカトの顔が、ぱんぱんのアンパンになった瞬間だった。
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