第411話 運命の歯車は巡りだす(4)
そのマリアナの必死の懇願をみたハトネンは、ふと、何かを考えた。
目の前にいるのは二人の神。
一人は荒神化しかけているが、もう一人は、金色の目をしている。
そして、荒神化しかけている神を必死で助けようとしているではないか。
と言うことは、この二人は肉親と言う事か?
ならば、どんなことをしても、救いたいと思うのは人情と言うものよ。
そう、いかなる提案も飲むだろう。
どんな嫌なことでも進んでやるだろう。
たとえそれが、人間を抹殺することであっても、肉親の命には代えられない。
ハトネンは、疑念のダイスを投げた。
サイコロの目は7
自分の頭に浮かんだ一つの作戦の成功確率は70%と言うことだ。
まんざら悪い数字ではない。
これはイケるかもしれない。
ハトネンの顔がいやらしくうすら笑いを浮かべた。
そして、マリアナに快諾の返事をし、喜んで協力を申し出た。
ハトネンが、アリューシャの荒神の気を払ってやると約束したのだ。
それに安堵するマリアナ。
だが、ハトネンは、続けてマリアナに提案する。
その交換条件として、一つ手伝いをして欲しいと。
マリアナは、アリューシャのためなら何でもすると答えた。
ハトネンにとって、その反応も想定内である。
だが、協力の内容をつたえれば、迷いが生じるかもしれない。
ならば、それまで、このアリューシャを人質に取った方が、実効性を担保できるというものだ。
ハトネンは、荒神の気を払うためと称し、アリューシャとマリアナを引き離した。
マリアナを自分の居城で待機させ、アリューシャのみをどこかに連れて行ってしまったのだ。
ハトネンの居城で待つマリアナは複雑な心境である。
本当にあのハトネンという男は、約束を守るのであろうか。
だが、今さら、荒神の気を払う儀式を知るものを探すには時間がかかりすぎる。
ハトネンは、その儀式の事を知っている上に、気を払ってくれると約束したのだ。
今は、それを信じるしかない。
そんなマリアナの前にハトネンが戻ってきた。
その傍らには一人の女魔人が付き従っていた。
紫色の長い髪を持つ女である。
だれ?
マリアナは怪訝に思う。
だが、今はアリューシャである。
「アリューシャは?」
ハトネンは、その問いに答えず、マリアナに命令した。
「お前は、神の恩恵を使って、聖人国の第七の駐屯地をせん滅しろ!」
ギョッとするマリアナ。
「そんな話は聞いてないわ」
だが、ハトネンは続ける。
「お前が、人間どもを駆逐し、俺がキーストーンを手に入れた暁には、あの荒神の気を払ってやる」
「信用できない! アリューシャはどこ!」
マリアナは叫んだ。
すると、紫色の長い髪の女が、マリアナの前で膝まづいた。
「神様、お気をお沈めください。私は、荒神の気を払う能力を持っております。そのアリューシャ様とおっしゃる神さまの荒神の気、私が必ず払ってみせます……」
それを聞いたマリアナは、叫ぶのをやめた。
今、この膝まづく女は、確かに荒神の気を払えると言った。
それが、嘘か本当かは分からない。
だが、このハトネンと言う男が、荒神の気を払うことができると言い、そして、この女を連れてきたということは、まんざら嘘ではないかもしれない。
そして、何よりも、ハトネンの目は、策謀に満ちたいやらしい目をしているが、この膝まづく女の目は、悲し気ながらもまっすぐだ。
とても、嘘を言っているような目ではない。
ハトネンは信じられなくとも、この女は信じられる。
マリアナはそう、直感した。
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