第318話

 ミズイは二人を懸命に探した。森の中をひた走り、大声で名前を呼んだ。

 だが、二人は見つからない。

 ミズイは自分を責めた。

 あの時、お姉ちゃんの私が、目を離さなければ……


 その後もミズイは、二人を懸命に探す。

 鑑定の力を使っても二人の存在は見つけられなかった。

 ――ならば、この眼で探すだけ……

 生気の吸収ができにくい街に足を運び、懸命に二人の痕跡を探した。

 ――だれが、二人を……

 ミズイの体内の生気が枯渇していく。

 老いでカバーするミズイの目は、老化と共に、憎しみで醜く歪んでいった。

 だが、そんな時、ミズイは小門を見つけた。

 小門の中に大きく開く洞穴。

 緑色のヒカリゴケに彩られたホールの壁一面には、命の石がびっしりと光り輝いていた。

 ――これで、生気を取り戻せる……

 ミズイは、生気を取り込もうと壁に手をかざした。

 しかし、その手がピタリと止まる。

 いつの間にか、老いたしわくちゃの目から、とめどもなく涙があふれ出していたのだ。

 ――この生気は……アリューシャの……

 ミズイは、辺りを見回す。しかし、アリューシャの姿は見つからない。

 そのホールの中心には大穴が口を開けていた。

 ミズイはその中を見下ろした。

 そこには、無数のクロダイショウとオオヒャクテが黒い水面のようにうごめいていた。

 だが、この時、この水底に青きスライムがいたことに、ミズイは気づけなかった。

 洞窟の天井を見上げるミズイ。

 ――ここでアリューシャは消えた……荒神爆発で、アリューシャは消えたのだ……

 とめどもなくミズイの両目から涙があふれる。

 ――ココには、まだ、アリューシャの気がある。きっと、戻してあげる。あなたをきっと取り戻す……

 天井から垂れさがる岩に従い、一筋の水滴が大穴の中心へと落ちていった。

 まるで、アリューシャの美しき涙がミズイと共に泣くかのようであった。


 ミズイはその洞穴に無数に散らばる命の石から生気を吸い取ることができなかった。

 そう、アリューシャの生気を吸い取れなかったのだ。

 小門を出たミズイは、最後に残った神の力で入り口を森の茂みの中へと隠しこむ。

 ――だれも、ココには近づけない……

 ミズイが手を振ると宙に浮かぶカードが消えた。

 ――ココは私の妹が眠る場所……


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