第312話

 一方、体に力が入らぬティアラを抱きしめ座っているタカト君。

 みるみると老化し、美魔女になっていくミズイを見ながらつぶやいた。

「お姉さま! お戻りで!」

 すでに、タカトの目はミズイのはち切れんばかりの胸に釘付けになっていた。

「約束だぞ……生気を……」

 タカトの側で膝まづくミズイ。

 ビン子はそっと顔をそらした。

 タカトとミズイは、唇をかわす。

 ミズイの手が、タカトの首へと回ると、強く強く胸を押し付けた。

 タカトの目が、みるみるとハートマークになっていくのが、あからさまに分かった。

 いつの間にか、横たわるティアラを離していたタカトの手もまた、ゆっくりとミズイを抱きしめようと、伸びていく。


 ビシっ!


 その瞬間、タカトの頭が反り返った。

 密接するタカトの頭とミズイの頭の間隙を狙った、ハリセンのするどい一撃。

 その一撃がタカトの頭を弾き飛ばしていたのであった。


 タカトの頭が、ミズイとの唇との間に唾液を引きながら弧を描く。

 目がハートマークとなっていたタカトは、したたかに後頭部を地面に打ち付けていた。万命拳の受け身すら取れないほどのぼせ上がっていたようである。

「何をするのじゃ!」

 タカトの頭が手から滑り落ちたミズイが、とっさにビン子をにらみ、見上げていた。

 その目はものすごい怒りに震えている。

「もう十分でしょ!」

 ビン子が腰に手をやり、ミズイを見下している。その腰でハリセンがプルプルと揺れている。こちらもこちらで相当にお怒りのご様子だ。

「何が十分じゃ! 見ろ! まだ、20代後半ぐらいにしか回復しておらんじゃろうが!」

「なによ! また、幼女に戻る気!」

「生気が多いのには越したことが無かろうが!」

 ビン子とミズイの視線が火花を散らす。

 おでこをこすりながらタカトが顔を起こした。

「イヤぁ……幼女より、今ぐらいの張りのある胸の方が、わたくしめは好みでありますが……」

 えっ!

 ミズイとビン子は、驚きタカトを見つめた。


 ビン子は、悔しそうに自分の胸を見下ろした。

 ビン子は思った。

 ――負けた……


 ミズイは、なぜか赤く染め上がった頬を両手で押さえ、嬉しそうに首を振っている。

 ――これでいいかも……

 ミズイは思った。


 タカトは、口からだらしなくよだれを垂らし、ハートになった目で、ミズイの胸を凝視する。

 ――巨乳最高! 巨乳最高! 巨乳最高! 巨乳最高!



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