第307話

 ケテレツが再びスイッチを入れた

 またまた、途端に元気になる3000号

「あっ、あっちに可愛い女の子!」

 今度はコウスケが叫んだ。

 タカトに負けまいと、スイッチに手を伸ばす。

「こんな手にのるか!」

 ケテレツの手が、コウスケの指を払った。

 チッ!

 舌打つコウスケ。

「そうだよな、オッサン、俺たち技術者は白衣の巨乳だよな!」

 タカトが、ケテレツの肩をポンポンと叩く。

「分かってるじゃないか!」

 ケテレツも満足そうに大きくなずいた。

 何だか二人の間に大きな信頼が芽生えたようである。

「ここだけの秘密だが……あっちにいたぜ!」

 ドアを指さすタカト

「どこどこ」

 ケテレツは、額に手を当てドアの方向をきょろきょろと見まわした。

 その瞬間、タカトがスイッチを切った

 また、また、また、おとなしくなる3000号

「どこにもいないではないか!」

 騙されたと分かったケテレツは、タカトの手を払う。

 せっかく通じ合ったと思ったのに。これだから人間と言うのは嫌いなんだ。

 そう、ケテレツが思ったかどうかは知らないが。

 ケテレツが、イライラしながらスイッチを入れた。

 途端に元気になる3000号。

 体や触手がプルプルと小刻みに震えだしている。

 既に、コチラも、なんだか、かなりイライラしているようである。


「博士、こちらのデータを確認していただきたいのですが!」

 コウスケが近くに落ちていた書類を手に取り、ケテレツの前に突き出した。

「こんな手にのるか!」

 チッ!

 舌打つコウスケ。

「博士……いいものありまっせ! 極上モンのムフフな写真!」

「なんだと!」

「ちょっとここでは……お見せできない代物で! こちらに……」

「どれどれ……」

 タカトとケテレツが制御装置の横でうずくまった。

 その瞬間、コウスケがスイッチを切った

 また、また、また、また、おとなしくなる3000号


「何度も同じことをさせるな!」

 完全にイラついたケテレツが、力いっぱいにスイッチを叩く。

 その瞬間、ケテレツの体を黒い影が覆った。

 タカトたちの目の前からケテレツの姿が消えたのだ。

 いや、消えたのではない。

 3000号の口が、ケテレツを飲み込んでいたのである。

 よほどイラついたのであろうか。

 頭から足まで、一気にドスンと黒い塊が覆い飲み込んだ。


 飲み込むために顎をあげる3000号。

 ケテレツの体らしき黒いでっぱりが、3000号の体表面をゆっくりと下へと落ちていく。

 ついに飲み込まれたケテレツ先生。

 その様子を見ながら、コウスケは静かに制御装置のスイッチを切った。

 3000号の動きが止まる。

 なんか、3000号の表面がぼこぼこと突き上げられている。

 どうやら、ケテレツ先生は、まだご健在のようである。

 まぁ、このままでいいかぁ

 タカトとコウスケは互いに顔を見合わせて相槌を打った。


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