第306話

「3000号! あいつらを殺せ!」

 怒りに震えるケテレツが命令した。

 しかし、3000号に動きがない。

 振り返るケテレツ。

 そこには、沈黙した3000号の姿があった。

 まさか!

 ケテレツは、タカトをにらみつけた。

「お前! それに触ったのか! その制御装置に!」

 タカトが周りをきょろきょろとうかがう。

 そして、自分を指さす。

 どうやらタカトの事を言っていると分からなかったようである。

「おれ?」

 コウスケに助けを求めるタカト。

 しかし、コウスケは、ビン子を床に寝かすために、タカトをガン無視。

「あの……俺、何かしましたでしょうか……」

 意味が分からないタカトは、頭を掻きながら謝った。

 ケテレツが、大股で肩を震わし近づいてきた。

「その正業装置は、3000号の生気をコントロールしているんだ、その生気の供給スイッチを切りおってからに!」

 ほほう……これが、3000号に生気を送っているのですか……

 タカトはうすら笑いを浮かべた。

 ならば、このスイッチを切っておけば、あの黒い塊は動かないわけですね。


 制御装置の前に立ったケテレツが、スイッチを入れる。

 そのとたん、3000号がうなり声をあげた。

 振り返ったケテレツが命令する。

「さぁ、こいつらを食い殺せ!」

 その横で、嬉しそうにうなずくタカト。

「このスイッチ何かな?」

 いつの間にかやってきたコウスケも嬉しそうにうなずいた。

「押してみればわかるって!」

 ポチ!

「そのスイッチは触ったらダメだ!」

 制御盤に目を戻したケテレツが叫んだ

 3000号の無数に伸びた触手が、地面に次々と落ちていく。

 再び、静かになる3000号。

「おもしれぇ!」

 うすら笑いを浮かべるタカトとコウスケ。


「くそガキどもが! 遊び道具じゃないんだ!」

 ケテレツがタカトの手を払い、再び、制御盤のスイッチを入れた。

 操り人形の糸がぴんと張られるかの如く、途端に元気になる3000号の触手たち。

 再び、3000号がうなり声をあげた。

「はい! 最初はグー! ジャンケンポン!」

 タカトが叫んだ。

 それにつられて慌ててパーを出してしまったケテレツ。

 しかし、タカトの手はチョキである。

「ハイ! 俺の勝ち! あっち向いてホイ!」

 タカトは勢いよく右をゆび差した。

 慌てて上を向くケテレツ。

 その瞬間、タカトがスイッチを切った。

 電気が切れるかの如く、急におとなしくなる3000号。

 顔を戻したケテレツが怒鳴る。

「いらん事をするな!」

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