第287話

「神か……いや、荒神化し始めているのか……」

真音子は、泣き叫ぶその女をにらんだ。

どうやら、この3000号は、ケテレツが、異形のモノと荒神を融合した成果物なのであろう。

ご・ろ・じでぇえぇ!

女の悲鳴にも似た叫び声が響き渡る。

下種が!

固く噛みしめた真音子の唇から、赤きしずくがこぼれた。



その様子を見ながらケテレツが得意げに説明し始めた。

誰も聞いていないにも関わらず、偉そうに語りだしたのだ。


ケテレツの青白い顔、いや青い顔が、興奮で、少々赤みがかっていた。

げっそりとした顔にくぼんだひとみ、それが嬉しそうに笑っている。

殺意しかわかない。


「神の融合はやはり難しかったのだ。なにせ、神には神の盾があるからな! だが、ノラガミの場合、神の盾など無尽蔵に発動できるわけではないのだ。いずれ、生気がつき、荒神化し始める。そう、ワシはこの時を待っていたのだ」


魔人騎士ヨメルも荒神と魔人を融合したという。荒神であれば、神の盾は発動しないのだ。これをヨメルの報告書で知ったケテレツは、応用したのである。荒神を、異形のモノと融合し始めた。

ケテレツの顔が、悔しそうに歪んだ。

「しかし、融合できんのじゃ。荒神の体と3000号の体がなじまんのじゃ……」

そう、いまだに、荒神の体は異形の3000号の体と融合していなかった。ただ単に、荒神の体を覆い、その生気を奪っていたのである。だが、神の生気を奪われ続ければ荒神は荒神爆発を起こしてしまう。この3000号は、その荒神の口の中に触手を突っ込み、強制的に人魔から生成した生気を流し込み、荒神化の進行を抑えていたのである。では、なぜ、そんな回りくどいことをしているのであろうか。

そう、腕に巻き付く触手から、女神の血を抜き取っているのである。

その抜き取った血が、ポテポテと3000号の袋の中にたまっていくのである。

ケテレツが、その血液を、コップへと移した。

「この血液はな、ソフィア様の大好物なんじゃ……これを差し上げると、ソフィア様が、ご自身の血を少しワシに与えてくれるんじゃ……」

そのコップを大切そうになでるケテレツ。

ケテレツの融合実験には、ソフィアの血が不可欠であった。

今まで、人と魔物の組織が引っ付くことが無かったが、ソフィアの血を媒介することによって、たまに成功するようなったのである。しかし、知恵があるソフィアはおいそれと、自分の血をケテレツに分け与えなかった。そう、ケテレツに、自分の代わりに人や人魔を集めさせたのである。ケテレツが人を集め、それをソフィアが食らう。そのお返しに、少し血を分け与えていた。ケテレツは自分の実験ができることがうれしく、どんどんとソフィアに傾倒していった。

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