第263話 研究棟(1)

「コッチだ!」

 守備兵たちに追いかけられるカルロス達は、廊下をひた走る。

「タカト! 早く!」

 ビン子が振り向きながら叫んだ

 その後ろを怪獣の着ぐるみがヨッタヨッタと走っている。

 タカトは、今更ながら、着ぐるみを着たことを後悔していた。

 こんなことならパンツ一丁で走った方が、まだ楽だった。

 だが、追われる現状では、着ぐるみを脱ぐことすらできはしない。


 カルロス達は、一つの暗い部屋の中へと駆け込んだ。

 その部屋は今までの部屋よりも数倍大きく広いようである。

 と言うのも、薄暗く、部屋の大きさがよく分からないのである。

 駆け込んだカルロス達は、その部屋の入り口の壁に背をつけて、追ってくる守備兵たちの動きを観察した。

 しかし、守備兵たちは追ってくる様子は無いようだ。

 どうやら、追手を巻いたようである。

 一本道なのに迷うのであろうか?

 相手は、ココの守備兵たちですよ……

 まぁいいや……


「とりあえず、追手はなさそうだな……」

 カルロスは、視線を部屋の中へと戻した。

 暗い部屋の中には、大人の背丈よりも大きなガラス状のタンクが数十本並んでいる。

 中には緑色の液体が時折ブクブクと言う泡を立てる。そして、そのタンクが薄暗い部屋の中で妖しく輝いていた。

 カルロスをはじめ収容者たちは、興味深そうに各々タンクへと近づいていった。

 きゃぁ!

 ビン子が叫び声をあげた。

 ビン子の目の前のタンクの中には、魔物の頭が浮かんでいたのである。

 そして、その頭からは、尻尾のように脊髄が垂れているのである。

 だが驚くのは、その様子ではない。

 その魔物の目が、ぱちりと開いて、ビン子をにらんだのである。

 そのタンクの中の魔物の首は、生きているのである。

 首だけになった状態であっても、生き続けているのである。

 後ずさるビン子

 ビン子の足が何かに躓いた。

 足元に、黒い袋が横たわっていた。

 尻もちをつくビン子。

 黒い袋の上に、ビン子のお尻がドスンと落ちた。

「うががあぁ!」

 叫び声とも悲鳴ともとれる声が響く。

 一同が一斉にビン子を見つめた。

 しかし、ビン子は首を振る。

 私じゃないわよと懸命に首を振った。

 皆の視線が、ビン子の尻の下の黒い袋に落ちていった。


 カルロスが、黒い袋のファスナーを勢いよく開いた。

 中が暗くてよく分からない。

 しかし、何かが動く気配がする。

 生き物か、それとも道具が動いているだけなのか……

 カルロスが恐る恐る、黒い袋の開いた口を広げていく。

 薄暗い部屋の明かりが、袋の中にしみこんでいく。

 その明かりに、目を見開いた男の顔が浮かび上がる。

 げっそりとこけ落ちた頬、骸骨のように大きく見開いた目

 とても生きているようには思えない。

 死体か……

「たすげてくれぇぇ……」

 その瞬間、死んでいると思われた男の口から、声がこぼれた。

 ゆっくりと目の玉が動く。



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この辺りの話は、カクヨムコンの準備で忙しかったのと、話が第一部と第二部の伏線がかなり複雑に絡み合っているので、少々、私の頭が容量オーバーでこんがらがっております。

第三部が書き終わったら、今一度、整理して書き直します。


あと、カクヨムコン参加しております。★をつけていただけると嬉しいです。

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