第247話 ビン子しゃまぁぁぁ
はぁーとため息をつくビン子。
「しょうがないわね……」
ビン子は、自分のカバンの中をゴソゴソとあさる。
この貯蔵室と言うところは、通常の牢獄とは違う。収容者の健康状態を気にしているのか、収容者の荷物は基本、全部一緒に放り込まれている。まぁ、一応、脱獄できないようにチェックはされてはいるが、脱獄に使えそうなものがない限りは、全部、持ち込み可なのだ。ノート参考書持ち込み可! めちゃめちゃ優遇されている大学の期末試験並みなのだ。
ビン子は自分のカバンの中から、何やら一つの棒を取り出した。
「あっ! それは!」
振り向いたタカトが驚いた。
「ははは! 聞いて驚け! これこそアンタが作った『錠前あけ開け君』だ!」
「ちがわーーーい! それは、『帰ってきた!お脱がせ上手や剣(棒)』じゃ!」
「バカね。名前なんてどうでもいいのよ」
ビン子が開血解放すると、棒を檻から外にだし、錠前の穴へと突っ込んだ。
穴の中で、『帰ってきた!お脱がせ上手や剣(棒)』の細い腕が広がると、カチャカチャと中をいじくりまわしている。
ガチャリ
ギーーーッ
ほどなくすると檻のドアが開いた。
キョトンとするタカト。
――俺の『帰ってきた!お脱がせ上手や剣(棒)』にあんなことができるなんて。
『帰ってきた!お脱がせ上手や剣(棒)』の繊細な動きは、どんな微細な動きでも可能であった。そして、タカトは知ってか知るまいか、使用者の意思を読み取り、その動きを制御していたのである。この機構は、どこをどう伝わったのか分からないが、融合加工院のクロトに伝わる。そして、アルテラ専用魔装装甲アルテミスのバックパックに応用された。アルテミスの『裸にメガネー』などのセンサーから得られた情報を読み取り、白竜の盾を制御していたのである。
――ブラのホックを外す以外に、鍵を開けることができるだなんて……
タカトの表情が徐々ににやけていく。
「俺は天才だぁぁぁぁぁ!」
タカトは、牢の中でガッツポーズを取り、天を仰いだ。
ガチャリ!
へっ?
タカトは牢の入り口を見た。
そこには、檻の外に出たビン子が、牢のカギをかけていた。
はい?
訳が分からないタカト
「はははっは。ビン子、冗談が過ぎるな……」
タカトは頭に手をやり、半ば格好をつけながら、牢の入口へと歩み寄る。
「はぁ? あんたが先に帰ったらムフフな隠すでしょ」
えぇえぇぇぇ! まだ、そこ根に持っているんですか?
タカトは瞬時にこびた。
「ビン子しゃまぁぁぁぁぁ! 全部捨てます! 自分で捨てます。だからお慈悲を!」
もう、見るに堪えない。プライドもくそもあったものではなかった。
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