第200話 想いを掴むもの(3)
スグルとセレスティーノ中庭で争っていた。
その二人に襲い掛かる人魔たち。
「邪魔をするな!」
二人の攻撃が、次々と人魔を打ち倒す。
中庭で激しさを増す闘い。
巻き込まれる人魔たち。
まるで、人魔たちは、巨大な洗濯機の渦に引き込まれるかのように吸い寄せられ、次々とミンチになっていった。
病院の壁には、吹き飛ばされた人魔の肉片が、泥のようにくっ付きたれ落ちる。
中庭の木々はまるで紅葉のように真っ赤に染まっていた。
ライトアップでもすれば、そこはもうもみじ谷!
この吐き気を催すような血なまぐさい香りさえなければ、絶好の観光スポット……の訳はないか。
気づいた時には、ここに集まってきていた人魔どもは全て潰されていた。
それほどまでに、人魔たちはタマホイホイに吸い寄せられたのであった。
一体何が人魔を吸い寄せたのであろうか。
一体タカトは何を作ったのであろうか?
たまに、タカト本人が思ってもいないところで、その能力を発揮するので困ったものである。
しかし、セレスティーノとスグル、たった二人であの大量の人魔を駆逐するとは、大したものである。
セレスティーノが剣を構える。
「今度こそ終わりです。鏡花水月!」
セレスティーノの周囲に闘気が渦巻き始めた。
その瞬間、銀色の光が飛び込んだかと思うと、スグルが咥えたタマホイホイを弾き飛ばした。
クルクルと回り落ちるフォーク。
一瞬、動きを止めるセレスティーノとスグル。
次の瞬間、病院の屋上から一条のワイヤーが風の如く伸びた。
そのワイヤーは、空を舞うタマホイホイに絡みつくと、しなやかに跳ね上がる。
タマホイホイがワイヤーと共に、一散に屋上へと戻っていった。
ワイヤーが戻った先の屋上には満月を背に二つのシルエット。
一つの影は、腰に手をやり、空いた手でワイヤー共々戻ってきたタマホイホイをピシャリと受け取る。その可憐な少女の顔には蝶を模した大きなメガネがきらりと光る。
もう一つの影は、可憐な少女を守るかのように、その側でウンコ座りをしながら中庭を見下していた。ただ、その頭には紙袋が。
しかし、男はいつも通りの裸エプロンではなかった。
今日は割烹着、そう、戦闘用の割烹着であった。
セレスティーノは、可憐な少女を見ると、いつもの調子に戻った。
「そこのレディ。それを私の物です。返していただけませんか?」
蝶を模した大きなメガネをつける可憐な少女、いや、真音子は、鼻で笑いながら軽くタマホイホイに口づけをした。
「これがなんだかお分かりになっていらっしゃいますの。これはタカト様の……なので、お渡しするわけにはまいりませんわ」
その横で紙袋をかぶった男がえずいている。
紙袋の中は、大丈夫なのだろうか?
しかし、このタマホイホイってそんなにキショイの?
セレスティーノは、髪をかき上げる。
「そうですか。こう見えても私はレディをイジメるのも存外嫌いではありませんよ」
いやいや、こう見えてもって、あんた……そうにしか見えないんですけど。
セレスティーノは足に力を込めて、真音子のいる屋上へとジャンプした。
ちっ!?
――今夜はやけに邪魔が多い……
スグルもまた、遅れまいと、飛び上がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます