第157話 借金取りの少女(2)
「権蔵さま。本日が最初の返済期限です」
可憐な少女がにこやかに笑う。
「すみません、
権蔵は、額から流れだすおびただしい汗を汚い手拭いで拭き、小さくなりながら、その頭を下げた。
全く状況が理解できないタカトは、不思議そうに権蔵に問う。
「どうしたんだ、じいちゃん」
「いや、何でもない」
頭を下げたまま答える権蔵。
タカトなりに状況を整理する。
どうやら、借金の返済の催促のようである。
と言うことは、この少女は借金の取り立て屋なのだろう。
タカトは真音子に言う。
「うちは金がないが、借金をする理由もない! だから、さっさと帰れ!」
それを見ながら真音子はほほ笑む。
「そんなことはないでしょう。融合加工の道具と素材をかうために差額の大金貨2枚を貸してくれと、お父様に懇願されましたよね」
「その通りです……」
頭を下げたまま権蔵は答える。
「じいちゃん、どういうことだよ」
いまだに理解できないタカトは権蔵に尋ねる。
「実はじゃな……エメラルダ様の手術に必要な融合加工の道具とか素材を揃えようとしたらじゃな……お前の大金貨3枚では足りなくてじゃな……そこで、わしの主人である
――何ですと!
驚くタカト
確かに言われてみれば、エメラルダの手術の際には見たこともないような道具や、高級な素材が惜しげもなく並んでいたことを思い出した。
「そして、その最初の返済期限が今日なんじゃ」
権蔵は頭を抱える。
――おれが言い出したせいだよな……・これ……
ゆっくりと真音子の方に顔を動かすタカト
タカトもまた、変な汗が出始めた。
――じいちゃん……関係ないよな……
真音子がにこやかに微笑んでいるが、なんだか目が冷たいような気がする。
――ないものはないしな……夜逃げしちゃおうかな……
愛想笑いをするタカト
何かを察したかのように入り口から差し込む光が、急に遮られた。
真音子の後ろに裸エプロンの男が、威嚇するかのように立っている。
これまた、ご丁寧に、指までバキバキと音を立てている。
タカトは震えながら真音子に叫んだ。
「もともとは俺が言い出したことだ。その借金は俺が必ず返す。だから、今日はこれで帰ってくれ」
真音子は、一瞬、その提案にキョトンとするものの、すぐさま、にこやかに微笑んだ。
「かしこまりました。それでは、連帯保証人としてタカトさんに請求させていただきますね。これからはいつでもお会いすることができますね」
たじろぐタカト。
「本日はこれでおいとまさせていただきます」
真音子は深々と頭を下げると、裸エプロンの男を引き連れて帰っていった。
肩を落としながら部屋の奥へと帰っていくタカト。
そんなタカトの背に手を置きながら権蔵がつぶやいた。
「すまんかったの……」
「いや……じいちゃんのせいじゃないし……」
「安心せい。ワシが何とかする!」
「いやいや普通に考えて無理だろう……」
「いざとなれば、奴隷に戻る……」
「せっかく休息奴隷になったんだろ……」
――俺が何とかしないと……しかし、どうしたらいいんだ……
タカトは、がらにもなく真剣に悩んだ。
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