第128話 別れと不安(4)
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今回、コウスケの道具が出てきますが、その道具は第四世代のものになります。このあたりの説明を書き忘れたので、「蘭華蘭菊のおしゃべりコーナー(仮)」の第12話「アルバイトパート2」で説明しておきます。興味のある方はどうぞ。
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コウスケとの道具バトルの当日がやってきた。
カバンを肩にかけ意気揚々と家を出るタカト。
やけに太陽がまぶしい。
そのあとを追うビン子。
コウスケがピンクのケーキ屋「ムッシュウ・ムラムラ」の前でタカトたちを待ち受けていた。
その足元の石畳のメジは、血でも撒かれたのだろうかうっすらと赤黒く汚れている。
遠目のタカトから見るとコウスケが、赤い魔方陣の上にたつ、みじめな生贄の半魔のようにも見えた。
まるで、世界がタカトの勝利を祝ってくれているようではないか。
タカトがにやりと笑う。
――勝ったあかつきには、材料代をコウスケのやつに請求してやるか。
「タカト逃げずによくきたな、」
「まぁ、お前に負ける可能性は万にひとつもないからな」
今日の道具バトルの審査員はビン子である。
タカトは、すでに晩御飯のおかずでビン子を買収済みであった。
これで圧倒的な勝利は間違いない。
「それでは、道具バトルといこうじゃないか!コウスケ!」
「臨むところだ!タカト!それでは、ビン子さんお願いします」
仕方ない様子で、ビン子は、二人の間に立った。
コウスケは、長い筒を取り出すと、魔血タンクを差し込み開血解放する。
そして、その筒をビン子に覗かせた。
遠くに見えていた城壁の城門が、まるで目の前にあるかのように見える。
城門の影に隠れる紙袋をかぶった裸エプロンの男までもがはっきり見えた。
すごぉぉい
感嘆の声をあげるビン子は、食い入るように筒を覗いている。
「それは遠くのものがよく見えるものです」
コウスケが自信満々に説明したかと思うと、急に顔を真っかにして照れだした。
「あの……よろしければ、今度、輝く星ぼしを眺めてみませんか?もしかしたら、月に住む伝説の鳳が見えるかも知れませんよ」
丘の上で夜空を見上げ、寄り添うように腰掛けるビン子とタカト。
寄り添う二人は自然に見つめあう……そして、二人は……
なんだか悪くないかもとビン子の顔はだらしなくにやけていく。
「ビン子さん……」
へっ!?
急いでよだれをふくビン子。
タカトが、笑う。
「ただ遠くが見えるだけか?」
こんなことならビン子を買収するまでもなかった。
「おかずの件は、チャラな!」
勝ち誇ったタカトは、それとなくビン子に耳打ちする。
白昼夢から、呼び起こされたビン子は何それとほほを膨らませた。
「俺のは、人間から発せられる生気の光を見ることができるのだ」
「なんだと!」
道具を取り出す。
不思議そうに、ビン子が尋ねる。
「それは何?」
「聞いて驚け!これは、魔蛇クロダイショウの感知能力を眼鏡に融合した『裸にメガネ―』という道具だ!これをかけると、体から発せられる生気の光のみを見ることができるのだ」
「なんだと、タカト!……一体、どういうことだ?」
「はははは!分からんのか!すなわち、服の上からも裸が見えるようになるという優れものだ!」
「また、アホなものを作ってからに……」
顔を手で覆うビン子であった。
「では、早速、こいつの性能を見せてやるよ!」
開血解放してコウスケにめがねをかけさせる。
ビン子に気を使ったのだろうか。
コウスケはビン子を背にしながら、周りを伺った。
「お前、テストとかしているのか?」
「そんなの、当たり前だろ。試行錯誤の上に成功があるものだ!」
笑いながら、めがねをタカトに返した。
「これが、お前の求めるものか」
「なんだと?」
めがねをかけ、辺りを見回すタカト
――どういうことだ、昨日の夜、ビン子でチェックした時には、はっきりと見えていたはずなのに……
ふと何かを思い出したビン子は、体に何か嫌な悪寒が走った。
――まさか……
怪訝な顔でタカトをにらみつける。
――最後のひと調整があだとなったのか……いやいや、ほかに原因があるはずだ……
うなだれたタカトは、力なくめがねを外した。
「どうしたの、失敗?」
尋ねるビン子。
「いや、見えてはいるのだが……これはなんか違う」
力なく渡されたメガネをビン子がかける。
ビン子の目にうっすらと人型が浮かび上がっていく。
しかし、その人型は白色の単色にぼやけたものであった。
「エロさがない……全くない……」
――なんだ、見えてなかったのね……
メガネを外したビン子が、安堵の表情を浮かべ、タカトの肩を元気づけるようにポンポンとたたいた。
作者はタカトに聞いてみたい。
君は、『搗き臼で茶漬け』という言葉を知らないのかと……
ビン子は、これでも神様だよ……
涙目のタカトは、ビン子の手を丁寧に両手で握る。
「ビン子ちゃん、今晩のおかずにご飯もつけてどうかな……」
ビン子は、タカトの手を払うと、高らかにコウスケの手を頭上に掲げた。
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