第126話 別れと不安(2)

 その帰りみち、タカトたちの荷馬車の前に可愛らしい魔法少女が二人現れた。

 まぁ、魔法少女といっても、明らかにコスプレではあるが……

 しかし、魔法少女たちは、タカトにステッキを構えるわけではなく、下をうつむいたままである。

 業を煮やしたタカトが先制攻撃を行う。


「また、現れたか!小娘たち!今度はやすやすと貴様らには渡さん!」


 手にもつ金貨を突き出して、荷馬車の上に足を上げ偉そうに身構えるタカトは、さながら悪の大王のようであった。


 ――来るなら来いやー!

 今日のタカトは気合がのっていた。なにせ、先ほど、立派な巨乳を見たばかりである。ペッタンこ胸のガキンチョ相手に、この胸の高ぶりは抑えられることは決してない!


 魔法少女たちは深々と頭を下げる。


「ありがとうございました。そして、今まで本当に申し訳ございませんでした」


 拍子抜けするタカト。


「俺、今、結構、お金持ってるんだけどなぁ」

 目につくように手に持つ金貨をひらひらさせる。


 ――ダンスバトルカモ~ん!俺のほとばしる情熱が爆発せるぜ!

 いや……それは単に巨乳を見たための欲情だろ……


 顔を真っ赤にしながらうつむいている蘭華の目から、涙がとめどもなく流れ落ちてくる。


「もう大丈夫です。いただいた毒消しでお母さんの体調は良くなりました。本当にありがとうございます」


 顔をあげた蘭菊がニコリと微笑む。

「おじいちゃんが情報の国にいるからお母さんと引っ越すんだ」


 タカトの金貨を持つ手が、寂しそうに落ちた。

 そうかと小さくうなずくタカト。

 蘭華は、済まなさそうに、小さな声でつぶやいた。


「いま、お返しできるものが何もなくて」


「それなら!おっぱい揉ま!!」

 ビシっ!

 タカトが言葉を言い終わる前に、腰の入ったビン子のハリセンが豪快なスイングでタカト頭を張り飛ばした。

 馬のケツへとめり込むタカト。

 うっすらと馬が頬を染めた……かもしれない。

 ピクリとも動かない。

 あきらかに気を失っているようである。


「それじゃ、あなたたちの歌を聞かせてくれる」


「えっ、それでいいんですか?」

「でも、改めて言われると、恥ずかしくて……」


 蘭菊がもじもじしている。

 ビン子が優しく微笑む。


「毎日、歌とダンスの練習してるじゃない」


 蘭華と蘭菊は顔を見合わせどうしようかと悩んでいる。


「おいおい、そんなんじゃアイナみたいな歌姫になれないぞ」

 いつの間にか復活していたタカトが茶化す。

 眉毛が、馬の毛もしくは……をまとい、太くレベルアップしていた。


 意を決した蘭菊が目を閉じると、大きく息を吸い込み、静かに歌いだす。

 それに合わせて、蘭華が大きく手を広げ空を見上げた。

 もう、その目には涙は浮かんでいなかった。


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