第六章 エピローグ

第120話 エピローグ

 融合の国の国民たちは、皆、一様に空を仰いでいた。

 低い音が、ゆっくりと国中に響き渡っている。

 初めて聞く大門の鍵音。

 天にも届く大きな大門が、その身にある六番目の鍵穴を回している。

 何十年、いや、何百年も動いたことがない大門が、今、目の前で動いているのだ。

 今まで、生活の中に普通にあった大門が、突如、異様な物として目に映る。

 大門が開けばどうなるのだろう。

 今まで、考えたこともなかった不安が国中の人々を襲った。


 ひときわ大きな音とともに、大門はその動きを止めた。

 融合国の国民たちは、第6の門のキーストーンが魔人国の手に落ちたことを理解した。


 人々は不安の捌け口を求め噂する。

 おのずと、みな口ずさむ。


 神民しんみん持たぬ女騎士おんなきし

 騎士は、兵士を見捨てたと。

 そして、何よりその髪は、

 怪しく光る緑だと。


 緑女りょくめは魔物

 魔物は、魔物と通じてる。

 ろくの門が落ちたのは、新たな騎士のアルテラの、おろかな髪のせいである。


 どうして王は刻印を、緑女りょくめなんぞに与えたか?

 不浄な緑女りょくめのその髪は、王に呪いをかけたのか?

 はたまた王をたぶらかし、騎士の刻印奪ったか?

 悲しき王は、いまどこに。

 その身案じて口にする。

 あらぬ噂を口にする。


 しかし、おろかなアルテラは、宰相閣下さいしょうかっか愛娘まなむすめ

 命惜いのちおしくて責められぬ。

 誰も、彼女を責められぬ。

 ただただ、影でアルテラを、クズ公女と罵倒ばとうする。


第一部 完

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