第92話 青いスライム(4)
ビン子は、何かないかとカバンの中を探し始めた。過去に作ったタカトのくだらない道具が入っていた。どれもくだらない道具ばかりである。しかし、くだらない道具フェチのビン子なら何か見つけ出せるはずだ。
ビン子はカバンの中から一匹のカエルを取り出した。
「あっ、カエルさん!」
ゲロ!
カエルの人形は、心配そうにビン子を見つめている。
ビン子は、『美女の香りにむせカエル』を開血解放した。
カエルはビン子を励ますように、激しくなく。
ゲロゲロ! ゲロゲロ!
ビン子は嬉しそうに顔をあげる。そして、カエルが鳴き示す方向にひた走った。
ドーム内を逃げ惑うタカトは、ついに壁へと追い込まれていた。
クロダイショウとオオヒャクテの黒い群れが目の前へと迫っている。
一瞬、目や口、鼻の穴などあらゆる穴から蛇やムカデが入っていく姿を想像してしまった。
タカトは右手で尻の穴を押さえた。
なぜ、尻の穴なのかと、聞きたいと思ったのは筆者だけだろうか……
俺の初めてがこんな蛇だなんて……ありえない!
――いやいや、タカト君、もしかして君はそっち系だったのか……
その手に持つ剣は、お飾りか!剣を振って戦えよ! と言いたくなる。
――アホか! あの大群相手に剣なんか振っても意味なんかないわい! (※タカト後日談)
タカトの背中が壁面にぴたりとくっつく。
そしてその足はつま先立ちになり、少しでも、その群れから遠のこうと、最後のあがきをしていた。
突然、タカトの前に光球が現れると、激しく光り、その光の輪を広げていった。
その光は地に降りてきた。光に押し潰された足元のクロダイショウとオオヒャクテが風船を足で踏み潰すかのように、パンっと破裂音をたてながら魔血をまき散らしている。
そこにはまぶしいばかりの光に包まれた鑑定の神ミズイが立っていた。
クロダイショウたちがミズイにとびかかるが、光の壁に跳ね返されていく。
この光の壁は、『神の盾』と呼ばれるものであった。
『神の盾』は『騎士の盾』同様、何人も壊すことができなかった。それは相手が神であってもである。
これらの絶対の防壁によって、神や騎士たちの不死性は維持されていた。
しかし、これらの盾の発動には、大量の生気を要した。
騎士の生気も無尽蔵と言うわけではない。
したがって、その不足分の生気は神民たちの生気によって補われていた。
すなわち、騎士が、死に直面し、その命を削る時には、代わりに神民たちの生気が消費され、騎士の命が救われるのである。
当然、生気が消費された神民たちの命は、短くなった。
融合の神など国を持っている神の場合は、その国の全ての神民の命を担保にしていた。
しかし、鑑定の神ミズイは国を持たぬノラガミである。
自らの生気を削って、神の盾を発動しているのである。
神もまた、生気を無尽蔵に持っているわけではない、生気が切れれば、荒神となってしまうのである。
ミズイはそんな危険を冒しながらも、タカトの前に現れたのである。
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