第82話 小門と言う名のダンジョン(2)

 朝だというのに、薄暗い森が三人の視界を遮る。

 行けども行けども、また緑。

 鳥たちが侵入者を拒絶するかのように大きな鳴き声で鳴き立てる。

 その声に腹を立てるかのように、オオボラの振るうナタの音が荒々しく響き渡る。

 ……もしかしたら、腹を立てている相手は鳥にではなくて、一番後ろをのうのうと頭の後ろに手を回しながら歩いてくるタカトに対してなのかもしれない。

 既に数か月、森に5回入ったが、いまだに小門の場所を見つけることができないでいた。


「もう、そろそろあきらめようぜ」


 タカトが退屈そうにあたりをきょろきょろしている。すでに小門への興味は薄らぎ、融合加工に使える素材はないだろうかと探しているようであった。そんなタカトをよそに、オオボラは次々と迫りくる枝を、片っ端から叩き落していく。


「お前な、あきらめるのが早いんだよ!」


「しかしだな、ここまで探しても見つからないということはないということかもしれないぜ」


 もう、飽きてきたタカトは、帰りたそうなそぶりを見せている。そして、ついにオオボラの説得を試み始めたようである。


「なんせ、じいちゃんが言ったことだからな。半分ぼけているかもしれんしな」


 ビン子が、そんなこと言って知らないわよと言うような冷たい視線を向けた。


「そうかもしれんが、やるだけやって、それから、あきらめるんだよ」

「それは、お前だけだろ。俺は頭の中でシュミレーションして、最適な行動をとるんだよ」

「だから、お前は弱いんだよ!」


 垂直に振り下ろしたナタが、一本の大きな枝を切り落とした。

 壁のように目の前を遮っていた大きな枝葉がおちると、眼前に広場が広がった。

 そこには怪しいローブに身を包んだ一人の人影が見えた。

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