第79話 タカトとオオボラ(2)
干した豚肉を万命寺に届けるために出かけるタカトとビン子。
笑いながら歩くタカトは、カバンの中から何やら取り出した。
「それは何?」
ついていくビン子は、駆け足でタカトに並び、不思議そうに横を歩くタカトの手を見つめた。
「聞いて驚け! これは、おっぱいが大きな美女を発見するための道具だ」
タカトは『美女の香りにむせカエル』を高らかに頭上に掲げた。そして、聞かれもしないのに、説明をし始める。
「美女が発する特有のにおいをかぎ分け発見すると、このカエルがないて、その方向を知らせてくれるのだ」
「また、あほな物を作って」
顔に手をやりあきれるビン子。しかし、コンテスト会場で散々な誹謗中傷を聞いたタカトが、立ち直ってくれたことに少し安堵したのか、少々嬉しそうでもあった。
「開血解放!」
タカトは、さっそく『美女の香りにむせカエル』を動かす。
ゲロゲロ! ゲロゲロ!
「美女の香りにむせカエル」が激しく鳴き声を上げる。
「キタ! キタ! キタ! キタ! 来たァーーーーー!」
絶叫するタカト。
カエルが示す方向にひた走る!
道が悪くても気にせず、ひた走る!
銅貨が落ちていても、ひた走る!
もうその目は、おっぱい以外見えないようであった。
「待ってよー」
置いて行かれないように、懸命に走るビン子。ビン子の背で干し肉が入った袋が激しく揺れる。
スラムを全速力で走り抜けたタカトたちは、ついに万命寺の門へとたどり着いた。
「ここに俺の理想の女性が」
興奮するタカト。
万命寺の中に入るとオオボラが万命拳を練習していた。
「おい、タカト! 一緒に練習しないか」
汗を拭きながらオオボラはタカトに声をかける。
「邪魔をするな!」
激しい剣幕で怒るタカトの目は、すでに血走っていた。
ひたすら胸に抱くカエルの顔を凝視する。
カエルの下から、交互にのぞく自分の足でさえ、なんだか興奮しているのが分かるようであった。
首から手拭いをぶら下げたオオボラがビン子に歩み寄り尋ねた。
「あのバカ。何をしているんだ?」
「聞かないで……」
息を切らしたビン子が、恥ずかしそうに答える。
タカトの踏み出した右足の前に、一対のすらっとした足が立ちふさがった。
ゲロゲェロ!
カエルが大きくなく。
「憧れのマイハニー!」
にやけた顔を勢いよく上げるタカト。
目の前に、ちょうど患者の治療を追えたばかりのガンエンが手拭いで手を拭きながら立っている。
「わしに気でもあるのか……」
赤くなるガンエン。
固まるタカト。
軽く咳ばらいをして、気を取り直し、再度『美女の香りにむせカエル』を動かす。
ゲロゲェロ!
カエルが大きくなく、そして、ガンエンを指し示す。
「おやじセンサーかぃ!」
タカト『美女の香りにむせカエル』を地面に投げつける。
ゲロ……!?
どうやら、おっぱいはおっぱいでも、おやじの「雄っぱい」にでも反応したのであろうか?
確かにガンエンの鍛えられた胸板……立派だもんね。
「かわいそう……」
ビン子はカエルを拾いあげて優しくなでた。
どことなくカエルも嬉しそうであった。
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