第65話 激闘!第六駐屯地!(32)タコ!ジャニ郎

 次の瞬間、へこんでいた頭がボヨンという音ともに元に戻った。

「なんなの!」

 体を反転させ、再び蹴りを入れようとするバニーの魔装騎兵。

 だが、そんな彼女の体もまた邪二ジャニ郎の触手によって絡み取られていたのである。

 

 頭をどつかれ顔を真っ赤にしていた邪二ジャニ郎は怒り心頭のご様子。

 触手で吊り下げたバニーの体を残っていた触手で滅多打ち!

 バシッ! バシッ!! バシッ! バシッ!

 あがっ! あがっ! あがっ! あがっ!

 バニーの悲鳴とともにウサギの魔装装甲も砕け散っていく。

 そう! 邪二ジャニさんに逆らうものは、この業界では生きていけないのだ!

 もしかしたら神民魔人なんかよりも怖い存在なのかもしれない。

 絶対なる強権! それに従う忖度による忖度!

 まささにこれこそエキゾチック・ジャパン!

 ちなみに郷ひろみのデビューはジャニーズ事務所であるwww 


「ヒロミーっ!」

 地面に倒れていたヨークは立ち上がると、目の前の大柴を無視してタコ邪二ジャニ郎へと向きを変えた。

 ちなみに、ヨークが呼ぶ「ヒロミ」は郷ひろみではなく、バニーガールの名前である。

 そして、時を同じくして、大柴もまた、喉の奥深くに突っ込まれていたユーカリ棒を引きずり出すと立ち上がったのである。

 そんな大柴の口はマーチ同様に顎が外れ……いや、砕け、さらには喉の奥にあいた大きな穴から向こう側の風景がはっきりと見えていた。

 要は喉の奥をユーカリ棒が貫通していたのだ!

 さすがに、こんな激しいプレーができるのはゾンビならではwww

 だがしかし、正面から見る喉の穴の風景には、なぜかヨークの姿が見えていた。

 そう、今度はヨークではなくてタヌキと子カンガルーマニアに狙いを定めていたのである。


 ええい! こうなったら面倒だ!

 タヌキにも名前を付けてやれ!

 うーんと……そうだ、邪二ジャニさんつながりで、タヌキは実はトリオだった!という事にして、俊彦のトシちゃんというのはどうだろうかwwww

 って、残りの二匹のタヌキはどうすんねんwww

 えっ? コアラがマーチ! マッチだろwww

 という事は、残るのはヨッちゃんだけじゃん!

 なら、残っているオニヒトデ班長がヨッちゃんという事になるではないだろうかwww


 という事で、タヌキのトシちゃんはじりじりと後ずさる。

 マニアの目の前で父親を殺したくない一心だったのだろう。

 だが、そんな手から子カンガルーがぴょんと飛び出したのだ。

 さすがはカンガルーの息子である。

 その跳躍力たるや目を見張るものがある。

 トシちゃんが「あっ!」と思っている間に、父親のもとへとたどり着いてしまったのだ。

 だが、その父親は、今や人魔……おそらく、最愛の息子の事も、もうわかるまい……

 人魔の右手がマニアの首をつかむとつるし上げ始めたのだ。

「父ちゃん……父ちゃん……父ちゃん……」

 その腕の中で必死にもがくマニアの声。

 だが、首を絞める力はさらに強くなっていく。


「やめろ!」

 タヌキのトシちゃんは吠えた。

 とっさに金玉のモーニングスターを振りかざすのだが、そんな時に限って周りに集まる魔物どもが邪魔をする。

 すぐ目の前に人魔とマニアがいるというのに、その距離が今一つ届かない。

「邪魔をするな!」

 必死に金玉を振るのだが、魔物は次から次へとわいてきて、タヌキの道をふさぐのだ。


「ちっ!」

 ヨークは焦った。

 目の前ではコアラのマーチとバニーのヒロミがタコ邪二ジャニ郎によってつるし上げられていた。

 そして、背後では子カンがるーマニアが今にも人魔に噛みつかれそうになっている。

 どちらかを救えばどちらかが死ぬ。

 まさに、ヒーローならでは究極の選択である。

 これが映画のヒーローであれば、おそらく両者を同時に救ってハッピーエンドという結末なのだろうが、接近戦を主とし遠距離攻撃の手段を持たないヨークにとっては、両方を同時に救う方法などありはしないのである。

 ――なら、どうする!


 そんなヨークの目の前で、タコ邪二ジャニ郎によって吊り下げられたバニーガールもまた、すでに生まれたままの姿になり果てていた。

 そんなヒロミがヨークの事を気にかける。

「私たちは大丈夫だから! マニア君を! マニア君を助けてあげて! くっ!」

 その言葉に従いヨークは、再びカンガルー大柴へと体を向けた。

 ――すまん、二人とも、あと少しだけ耐えてくれ!


 今や、マニアの頭を人魔の大きく開け広げられた口が噛み砕こうとしていた。

 ガキ!

 閉じられる口。

 だが、幸いなことにそのアゴは砕けまともに力が入らない。

 何度もマニアの頭をガリガリと噛むのだが、音だけ響いて砕けない。

「うがぁぁぁぁぁ」

 イライラしたのか、人魔は口からマニアを引き出すと、思いっきり地面にたたきつけようと大きくそれを天に振り上げたのである。

 まさにそんな時!

「破邪顕正!」

 ヨークの右手が人魔化したカンガルーの胸を貫いた。

 少し遅れてカンガルー大柴の背後に魔血が飛び散る。

 そして、その様子の一部始終を頭上から見ていたマニアは悲鳴を上げた。

「とおちゃぁぁぁぁぁぁぁん!」

 その声に貫いたヨークの右こぶしが静かに震えていた。

 ――すまない……すまない……

 心の中で必死に詫びる。

 先ほどまで狂ったように暴れていた人魔も今はもうすでに動かない。

 ――仕方ないんだ……仕方なかったんだ……

 まるで自分に言い聞かせるかのように何度も小さくつぶやくのだ。

 そんなヨークの腕にカンガルー大柴の魔血が伝って垂れていく。

 ヨークが腕を引き抜くと同時に、カンガルー大柴の体は抱きかかえるマニアとともに崩れ落ちた。

 だが、その体は落ちるマニアを受け止めるかのように抱きしめ、地面との衝突から守ったかのように見えたのだ。

 おそらく、それは父としての最後の愛……

 ――マニアよ……強くなれよ……

 まるでそういうかのように微笑む人魔の体はもう……動かない。


「人殺し! この人殺し!」

 半狂乱で泣き叫ぶ子カンガルーはヨークの胸をバンバンと叩く。

 だが、それを黙って受け続けるヨーク。

 ここで、この子になんと声を掛けたらいいのだろうか……

 いや、おれにその資格があるのか……

 自問自答するヨークは唇を強くかみしめた。

 だが、タヌキのトシちゃんが、そんなマニアの肩を強くつかんで引き離す。

「お前の父ちゃんは人魔になっていたんだよ! お前も見ただろうが!」

「父ちゃんは人魔じゃない! 人魔なんかじゃない!」

「馬鹿野郎が! 現実を受け入れろ!」

 小さき子供にそれを言っても無理だろう……

 だが、タヌキのトシちゃんは続けるのだ。

「強く生きろ! それがお前の父ちゃんの願いだろうが!」

 それを聞くマニアはタヌキのトシちゃんにしがみつき、ひときわ大きな鳴き声を上げたのだ。

 そんなマニアの肩を抱きながらトシちゃんはヨークをせかす。

「この子は俺が守り抜く! だからお前は、あの二人を早く!」

 そう、まだ、ヨークの背後ではコアラのマーチとバニーガールが邪二ジャニ郎によってつるし上げられていたのである。

「分かった……」

 ヨークが黙ってうなずいた瞬間、背後からこの世のモノとは思えない女の悲鳴が起こったのである。

「ぎゃぁぁぁぁあっぁぁ!」


 この悲鳴のほんのわずか前……邪二ジャニ郎につるし上げられるヒロミも先ほどまでの威勢をすでに失っていた。

「いやぁぁぁぁ! やめてぇぇえぇ!」

 いまやただのか弱い女のように悲鳴を上げて泣き叫ぶ。

 というのも、ヒロミもまたコアラのマーチ同様に邪二ジャニ郎の触手によって三穴同時にチ〇コを装填され始めたのだ。

 ――私の1000人目が魔人だなんて……嘘よ! 嘘よ! 絶対に嘘よ!

 え? なに、コアラよりも穴の数が多いって?

 そりゃしかたないだろwwwコアラと違ってバニーはGIRLガールなんだからwwww

 だいたい、お菓子のパッケージをあけたら、中で足が取れて穴が二つ三つ開いているものだって出てくる場合「が、あ~る」でしょうがwww


 次の瞬間、バキッ! という音ともに彼女の両ひざがありえない方向に曲がったかと思うと、そのまま膝関節をグリグリと無理やり回し始めたのだ。

 ブチッ!ブチッ!と膝のじん帯が嫌な音を立てて切れていく。

 その様子はまるで鶏の骨付きもも肉を食べ終わった後、残った骨の関節をグリグリと回す子供の様である。

 そして、子供は必ずといっていいほど、その骨の関節をブチっと引きちぎるのだ……

「ぎゃぁぁぁぁあっぁぁ!」 

 辺り一面に飛び散るおびただしい血潮!

 ヒロミは女と思えないような絶叫を上げた。

 というのも、先ほどまでしなやかに伸びていた細い両足が、半分ほどちぎれてなくなっているのである。

 だが、そんな激痛に混じって彼女の体の内側からは、どうしようもない快楽がこみあげてくるのだ。

 そう、これでも邪二ジャニ郎はテクニシャン。タコのくせに今まで数多くの女を相手にしてきたのである。

 どこを責めれば女が発情するのかよく知っていた。

 だが、どうにも自分をたたきつけたヒロミの足が気に食わなかったのだろう。

 発情させるだけではどうにも気が収まらない。

 そう! じゃじゃ馬な女はこうやってしつけるのが一番!

 快楽を感じさせながら激痛を与える……まさにSADISTIC LOVE!

「いぐぅぅぅぅ!」

 ついにそんな声とともにヒロミの記憶が飛んだ。

 体を突き抜ける快楽で涙をこぼしていたバニーガールは、もう、抵抗する気力も失い無気力になされるがままになっていた。


 だが、触手を動かす邪二ジャニ郎は先ほどとは違い何かつまらなそう……

 そう、コアラのマーチの時はあれだけよだれを垂らしウキウキしていたにもかかわらず、バニーガールの時はまるで無理やり仕事をさせられているかのように目が死んでいるのだ。

 というのも、タコ邪二ジャニ郎は10人兄弟。

 邪一ジャイチ郎から邪十ジャジュウ郎までの兄弟たちは、「魔の養殖国」で食料用の人間を繁殖する仕事についていたのだ。

 それは人間の女にひたすら種付けをする仕事……そのため邪二ジャニ郎は女のことをよく理解していた。

 だが、情愛の果てにその行為があるのなら激しく燃え上るものなのだが、仕事として毎日するのであれば欲情も枯れ果ててむなしくなる。

 そんな生活に嫌気がさしたのか、兄弟の2番目である邪二ジャニ郎は「魔の養殖国」を飛び出して「魔の融合国」に逃げてきたのであった。

「だって、僕は美少年が好きなんだぁなぁ♪」


 そんな辛い過去を思い出したのだろうか、邪二ジャニ郎は、バニーのヒロミを激しく突く! 突く! 突く!

 そして! フィニッシュ!

 チ〇コ充填作業完了!

 今日の業務はこれにて終了! おつかれしたぁ~♪

 ということで、ヒロミの三つの穴からはホワイトチョコが垂れ落ちていた。

 そんなバニーガールをまるでゴミでも扱うかのようにポイっと投げ捨てると、再びお気に入りのコアラのマーチをいじくり始めたのである。


「ヒロミ!」

 駆けつけたヨークは地面に転がる裸体の女を抱き寄せた。

 抱き寄せたヒロミの肩がわずかに上下している。

 意識はないが、生きている……

 だが……このままでは確実に……

 そう、いまだにちぎれた膝からは、おびただしい血液が流れだしていたのである。

 これを何とかしないと、ヒロミは確実に死ぬ……

 だが、迫りくる魔物の攻撃を受け続けるヨークにとって、ここでヒロミの応急処置をする暇すらないのだ。


 そんな時、

 「ヨーク! ヒロミは無事か?」

 遅れて駆けつけてきたタヌキのトシちゃんと子カンガルーマニアが、ヨークの周りに群がる魔物たちをぶちのめし始めたのである。


 それはほんのわずかな時間……

 だが、魔物が来ない今なら何とか……

 ヨークは腰に付けたバックからすぐさま一つの薬を取り出すと、ヒロミの傷口へと塗り込んだのだ。

「うぐっ!」

 一瞬、その痛みにヒロミは腰を浮かせ体を弓なりに反った。

「我慢しろ! ヒロミ! これで傷はふさがる!」

 そう、この薬はエメラルダが調合した超高級傷薬。

 命の石を混ぜこむことにより傷口から生気の吸収がおこり、患部に活力を与え治癒していくのである。

 先ほどまで吹き出すように流れていた血流も、嘘のようにみるみる止まり、いまや傷口もしっかりとふさがっていた。

 そして、ヒロミもまた落ち着きを取り戻し、再び静かに眠っていたのである

 ――これで当座は大丈夫だろう……

 だが、その膝先はむごたらしい……

 無理やり引きちぎられたため、その断面はねじれてグチャグチャなのだ。

 おそらく、これでは足を再接着することは、まずもって不可能……

 いかにエメラルダの超高級傷薬がどんなに優れた治癒効果を有していたとしても、ウーパールーパーのように簡単に再生などできはしないのである。

 そう、それが人間の限界なのだ……


「うがぁぁぁぁぁぁ!」

 とっさに顔を上げるヨークの目の前で、今度はイケメンのコアラのマーチが悲鳴を上げていた。

 邪二ジャニ郎の触手によって突き上げられる下腹部は、先ほどよりも大きく隆起していた。

 それはもう、いつ破れてもおかしくないほど。

 それを見たヨークは、またもや行き詰った。

 というのも、今すぐコアラのマーチを助けに行きたい。

 行きたいのだが、魔物たちがひしめくこの場にヒロミを置いていくわけにはいかないのである。

 気を失っているヒロミをなんとかして駐屯地の中へと後退させたいのだが、それをすればマーチが死ぬかもしれない……

 ――あと一つ体があれば……

 そんな時、襲い来る魔物を払い続けていたヨークにオニヒトデ班長が声をかけたのだ。

「ヨーク! コアラのマーチのことは俺に任せておけ!」

 そう! まだオニヒトデのヨッちゃんが残っていたんだ!

 って、こいつ……アルダインと通じているんだよね……

 信じていいんかいな?

 だが、そんなことを知らないヨークは、頼りにするかのように瞳を輝かせるのだ。

「班長! お願いします!」

「おう! 任せておけ! お前は、ヒロミを連れて駐屯地に後退しろ! タヌキ! 子カンガルーマニア! お前らはヨークの道を切り開け!」

 ヨークはヒロミの体を抱き上げると「班長! 死なないでくださいよ!」と言い終わらに内に体をひるがえした。

 先行して走るタヌキのトシちゃんと子カンガルーマニアとともに、二人が作った道の中をかけていくのだった。



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