第64話 激闘!第六駐屯地!(31)タコ!ジャニ郎

 そんなことよりも、その瞬間!カンガルー大柴の周りに5つの衝撃が走ったのだ。

 吹き飛ぶ体。

 砕け散る体。

 だが、なぜか地面に転がっているのは5人の魔装騎兵の方であった。

 そう、あの瞬間、カンガルー大柴は骨をむきだしにした右腕で、あっという間に5つの魔装装甲を打ち抜いていたのである。

 さすがはカンガルー! 人魔になったとはいえ魔装騎兵!

 しかも、あの第八の騎士であるセレスティーノの一撃を食らってもピンピンしていたピンクのオッサンと互角に戦ったツワモノである!

 そんなツワモノが人魔なのだから仕方ない!

 というか? ピンクのオッサン?

 ちなみにピンクのオッサンがあでやかな蝶になる前は、「ゴンカレー=バーモント=カラクチニコフ」という名の、いわゆる地下格闘技界の無敗のチャンピオンだったってのは「風俗店の寅さん」しか知らない事実である。


 今や動かぬ5人の死体。

 そんな死体を踏み越えて、カンガルー大柴はタヌキに狙いを定めた。

 これで残るはモブ5匹wwww

 

 迫りくる大きな口!

 アガぁぁぁぁぁ!

 その素早い噛みつきをタヌキは何とかかわす。

 だが、それでも手に持っているモーニングスターの鉄球を、大柴めがけて叩きつけることをためらっていた。

 彼の腕の中では、先ほどから子カンガルーが必死に泣き叫んでいたのである。

「父ちゃん! 父ちゃん! 父ちゃん!」

 そんな子の目の前で、どうして父親を叩き潰せようか……

 ――そんな事……できるわけないだろうが!

 だが、タヌキの敵は人魔だけではない。

 当然に、周りには無数の魔物たちがひしめいているのだ。

 人魔にばかり気がとられていたタヌキの背中を魔物の爪が襲った。

 ぐはっ!

 前のめりに倒れそうになる体を何とか支える。

 ――このままじゃ、ちょっとやばいよね……

 そう、タヌキの気力も限界に近かったのだ。


「タヌキ! 竿~! いやボウ~っとするな! 玉を振れ! 金玉を!」

 コアラがユーカリの竿を振りながらタヌキに叱咤激励する。

 だが、先ほどからタヌキは人魔から一定の距離をとって下がるばかり。

 ――これでは埒が明かんな……ならばここは自分が……

 しかし、コアラもまた魔物に囲まれ動けない。


 それを見たヨークは、オニヒトデ班長に申し出た。

「俺がやります!」

 そして、目の前の魔物たちに背を向けると、まっすぐに人魔化したカンガルーに向かって駆け出したのだ。

「頼んだぞ! ヨーク! 奴を……楽にしてやってくれ……」

 がら空きとなったヨークの背中を守るためオニヒトデ班長は、その前に腕を組みドンと立ちふさがった。

「ここからは一歩も前には進ませはせん!」

 しかし、ヨークを追う魔物たちの勢いは収まらない。

 勢いそのままにオニヒトデ班長の脇を駆け抜けようとする。

 だが、その時、魔物の体がピタリと動かなくなったのだ。

 しかも、地面の上に転がると泡噴いてもがき死んでいく……

 そう、それはオニヒトデの魔装装甲から伸びた棘。

 ヨークを追いかけようとする魔物たちを次々と貫いていたのである。

 だが、魔物の数が多いのだ……次から次に棘を伸ばしているのだが……突き立てた棘を引き戻す前に次の棘を伸ばさないと間に合わない。

 いまや腕を組んで動かないオニヒトデ班長の体全体から棘が飛び出していた。

 その様子はオニヒトデというよりガンガゼ。

 ちなみにガンガゼとは……ウニの仲間で毒をもつ長い棘を持っている。

 まぁ、毒をもっているという意味ではオニヒトデと同じなので無問題モウマンタイ

 そう! だから! あくまでも!

「武技! 鬼人オニヒトディフェンス!」


 だが、いかに鬼人オニヒトディフェンスといえども、ディフェンスできる範囲は決まっている。

 体から伸びる棘もアホみたいに無尽蔵に伸びるというわけではない。

 そう、守備範囲はあくまで棘が伸びる範囲と同じなのだ。

 それは大体、肩幅プラス左右1メートルぐらい。

 まあ分かりやすく言えば両手を広げて通せんぼするぐらいの感じなのである。

 って……この草原には魔物が沢山いるわけですよね……そう、目の前一面に広がっているわけです……

 たかが両手を広げたぐらいの幅で、ヨークの後を追いかける魔物を遮ることができると思っていたんですかね?

 しかも、腕まで組んで……

 せめて、腕ぐらい伸ばそうよwww

 そしたら、その腕の分ぐらいは横幅が広がるでしょうにwww


 そんなものだから、棘の届かぬところから魔物たちが次々と回り込みヨークの後を追いかけはじめていた。

 それを見るオニヒトデ班長。

「すまんなwww ヨークwww 防ぎきれんかったわwwww」

 って、まるで他人事www

 それでいいんですか!

 班長でしょ! せめて部下の前では格好つけましょうよ!

 だが、オニヒトデ班長、振り返ることもなく鼻で笑うのだ。

 ――まあ……魔装騎兵が少なくなればなるほどに、アルダイン様が第六を乗っ取るのが簡単になるというものだ……

 って……あんた……何を考えているんですか!

 

 ヨークの背に魔物の足が迫る。

 はやり二本足より四本足のほうが断然早い!

 ならば八本足はその倍!早いというわけだ!

 そう!八本足と言えば! 蜘蛛! 蜘蛛である!

 ということで、蜘蛛の魔物を追い越して大きなタコの魔物がヨークのがら空きとなった背中にとびかかった!

 って、タコかよ!

 だって、タコも足は八本。同じだろwww

 しかも、そのタコ、他の魔物の3倍ほどの大きさなのよwww

 いわゆる大型種ってやつ。

 さらに付け加えると、そのタコの体の下から、なぜか人の体が生えていたりするのよ。これが!

 えっ? もしかして、これは魔人なの?

 そう、彼こそ新劇の巨人! たこ八郎ならぬ「タコ邪二ジャニ郎」!

 巨人だけあって走る足も相応に大きい。

 そんなものだから一歩で進む距離も当然大きいのであるwww

 って、結局! 走っているのは二本の足かい!


「ちっ! 班長! あれだけ俺に任せておけって格好つけてたじゃないかよ!」

 だが、ヨークは背後のタコ邪二ジャニ郎をかまう余裕はない。

 というのも、前からはカンガルーの人魔が大きな口を開けて迫ってきているのだ。

 ――優先すべきは、仲間のこと……

 その心臓を狙いヨークは肘を引き拳に闘気をためていく。

 ――この一撃で……苦しませずに……楽に……眠らせる……


 だが、そんなヨークの横では、タヌキに抱かれた子カンガルーが泣き叫んでいる。

「やめてくれ! 父ちゃんは人魔じゃない! 父ちゃんは人魔なんかじゃないんだ!」

 その声に、一瞬躊躇するヨーク。

 ――俺は、このこの前で父親を殺すのか?

 その声を押し殺すかのように心の中で首を振る。

 ――いや、もうこの子の父親などではない……人魔だ……そう!人魔だ! 目の前にいるのはただの人魔だ!

 だが、その迷いが一瞬のスキを生んだ。


 背後に迫るタコ邪二ジャニ郎の触手がヨークの背中をしたたかに打ち付けたのだ。

 バキン!

 太い触手の一撃は思った以上に大きかった。

 背中の魔装装甲が砕け散り、ヨークはその衝撃で地面に吹っ飛んだ。

 しかも、倒れたヨークの首筋に人魔の口が噛みつかんと迫るのだ!

 ガブリ!

 くっ!

 その苦痛に顔をゆがめる。


 だが、苦痛に歪んだのはヨークではなかった。

 そう、それはカンガルーの人魔。

 ゾンビのくせに「オエェェェ」という、えずくような表情を浮かべて地面の上にしゃがみ込んでいたのである。

 想像しやすいように、たとえて言うなら……

 そうだな……デリヘルのお姉ちゃんに「出すなら、先に行ってくださいよ!」と言われていたにもかかわらず……「ごめん……出ちゃった……」という言葉も聞かずに、慌てて口にティッシュを当ててえずき始めているような雰囲気なのだ。

 そう……デリヘルのお姉ちゃん同様に人魔の口にもYouカリ棒! もとい! ユーカリ棒がしっかりとその奥にまで突っ込まれていたのである。

 ちなみに、ユーカリの葉にはシトリオドラというユーカリオイルが含まれているのだ。

 このオイルはアロマの世界ではリラックス効果をもたらしてくれるらしいのだが、どうにも人魔にとっては、とても苦い白物、もとい代物だったようであるwwww


 当然、それはコアラの持っていたユーカリの棒。

 ヨークが倒れたその瞬間、コアラは手に持つユーカリ棒を槍のようにまっすぐに投げつけたのである。

 そして、それは大きく開け広げられた人魔の口の中にドスンと収まった。

 この勢い……おそらく、喉チンコの奥の奥にまで届いていることだろう……

 このプレイ……熟練のデリヘル嬢であったとしてもかなり苦しいに違いない……

 いや……それよりもすごいのは、そのテクニック。

 これを男の顔めがけて飛ばすとは……

 せめて……人魔が女であれば顔めがけて……いや……さすがである。

 ちなみに、コアラからココまでは約5mほど、しかも、魔物たちがひしめく間を飛ばしてきたのだ。

 まあ、これでもコアラは第六軟式野球部のピッチャーだから、これぐらいのことは朝飯前。

 だが、今はそれはおいておこう。


 しかし、コアラの武器がここにあるということは……今のコアラは一体どうやって戦っているのだろう。

 というのもコアラにとっての武器は、このユーカリ棒しかないはずなのだ……

 ということは……彼は今……武器となるものを何も持っていない。

 そんな状態で魔物の群れの中にいれば……当然……

 今や、コアラがいた場所には、とびかかった魔物たちで山ができあがっていた。


 だが、突然! そんな魔物たちの山が吹き飛んだ!

「スピニングバニーキック!」

 そう、高速回転するバニーの蹴りが炸裂していたのである。

「ヨーク! こっちは私たちが何とかする! だから、早く大柴を楽にしてあげて!」


 魔物のプレスから解放されたコアラは、やっとのことで立ち上がるが、その体はフラフラと柳のように揺れていた。

 すでにその魔装装甲もボロボロ、顔の仮面も崩れ落ち、その中からアイドル顔負けの美男子の面をのぞかせる。

 えっ? セリフ回しからごっついオッサンだと思った?

 雰囲気だけで人を判断してはいけませんwww

 そう! イケメンはどんなセリフを吐こうがイケメンなのだ!

 でもって、作者はイケメンが嫌いだ!

 ということでイケメンに天誅を! イケメンに死を!

 ……うん? なんか今、ビン子が巨乳を恨む気持ちとシンクロしたような気がしたのは気のせいかwww


 だが、立っているのがやっとの状態のコアラが再び吹っ飛んだのだ!

「うがっ!」

 ざまぁwww

 そう、彼の近くにはまだタコの魔人「タコ邪二ジャニ郎」がいたのである。

 邪二ジャニ郎の太い触手がコアラの体を激しく打ち付けていた。

「マーチさん! 大丈夫ですか!」

 そんなコアラを助けるためにモブの中のモブであるその他雑多の魔装騎兵が駆けつけてきた。

 というか、このコアラの名前……マーチっていうのか……

 何という安直なネーミングwww

 しかし……モブだったコアラもついにネームドになってしまったかwww


 などと、アンビバレンスな作者の想いをよそに、駆けつけた5人の魔装騎兵たちは魔人「タコ邪二ジャニ郎」に剣を向けてその周りを取り囲んでいた。

 しかし、5本の剣に対してタコの足は8本! しかも、魔人の手まで入れると10本あるのだ。その数、倍!

 そのため、伸びてくるタコの触手をなんとか剣で防いでも、その空いたところからもう一つ別の攻撃が入ってくるのである。

 いまや、5人の魔装騎兵たちの体はタコの触手にぐるぐる巻きにされて力なく宙に浮いていた。

 ぐいぐいと締め付けてくる触手に魔装装甲がギリギリと悲鳴を上げていく。

「ぐわっ! 放せ!」

「おごぉぉぉ! このタコ野郎!」

 だが、魔人にそんな言葉は通用しない。しないのだ!

 よっしゃぁ! このまま残りのモブを潰してまえ!

 そしたら、後々、続きの話を書くのが楽になるではないか!

 YOUならできる! YOUならば!


 だが、今にも魔装装甲が砕け散らんとした時! YOU、じゃなかった邪二ジャニ郎の顔面、いや、タコの頭のあの丸い部分が凹っとへっこんだのだ!

 へこんだ肉からこぶし大の石ころが落ちてくる。


 「ドアラの呼吸! 三の裏 チアドラゴンズバズーカ!」

 そんな咆哮とともに、大きく振りかぶったコアラのマーチが、地面に転がる石を拾っては投げつけていたのである。

 まあ、ユーカリ棒を失ったコアラのマーチにとっては、これぐらいしか攻撃手段が残っていないのである。

 だが、これでも第六軟式野球部のピッチャーだ!

 当たればそこそこ!か・な・り!痛い!


 だが、タコ邪二ジャニ郎も負けてはいない。

 それはまるでバッターボックスに立つ往年の立浪和義のようにスキがない構え!

 バコン!

 バコン!

 飛んでくる石の玉を次々と二塁打にしていくのである。

 そんな弾丸のような石の当たりが周りにいる魔物たちを次々と吹き飛ばしていた。

 って、同士討ちwww

 でも、やっぱりここはホームランじゃないんですかい?

 だって、仕方ないじゃん……邪二ジャニ郎が振っているバットは、ただの肉の棒、そう、魔装騎兵の体なんですからwww

 そんな彼らの魔装装甲は石に打ち付けられるたびに砕け散り、今やそのむき出しとなった顔面は血みどろに腫れ上がっていたのである。

 プッ! YOUたち、不細工wwww

 などと、邪二ジャニ郎の声が聞こえてきそうだ。

 だからなのか分からないが、邪二ジャニ郎は、そんなボロボロになった魔装騎兵の体を投げ捨てると、今度はイケメンのコアラのマーチに触手を伸ばしたのである。


 タコの触手によってグイグイと締め上げられていくコアラのマーチが悲鳴を上げていた。

「うがぁぁぁあぁ!」

 だが、それを聞く邪二ジャニ郎はなぜか嬉しそうによだれを垂らしはじめた。

 そして、マーチについている魔装装甲を、まるでじらすかのように一つ一つ丁寧にはがしていきはじめたである。

 ついにむき出しとなったコアラのマーチの小象さん。

 触手に吊り下げられたその体から、小さな鼻をぶらりと垂らしていた。

 そんな、コアラのマーチのあいた穴に触手がずっぽりと奥まで侵入していくのだ。

 ちなみにお菓子のコアラのマーチにあいた穴はチ〇コを装填するための穴である。

 そして、こちらのコアラのマーチも、上の穴と下の穴の二穴同時にチ〇コを装填されていたのだ。

 コアラの喉元に浮かび上がる大きな瘤が激しく上下する……

 下の穴から突っ込まれた触手は、その対角線上の下腹部を突き破らんとばかりに隆起した大きなでっぱりをしきりに出し入れさせていた。

 コアラのマーチの体が、そのたびに激しく痙攣しうめき声をあげる。

「うごぉぉぉぉぉ!」

 だが、口に入った触手が邪魔で声にならない。

 ゴキっ!

 ついにそんな音とともに顎が外れた。

 体を突き抜ける激痛で涙をこぼしていたイケメンは、もう、抵抗する気力も失い無気力になされるがままになっていた。

 

 だが、そんな時!

「やめんかい! この変態!」

 バニーの怒鳴り声とともに邪二ジャニ郎の頭にかかと落としが見事に決まったのだ!

「うおりゃぁぁぁぁぁ!」

 叩き落される細い足に従ってタコの頭がUの字にくぼんでいく。

 飛び出す邪二ジャニ郎の目玉。

 赤い鼻からは魔血の鼻血が噴水のように噴出していた。

 これほどの一撃、おそらく邪二ジャニ郎の頭蓋骨は完全に粉砕されたことだろう。

 再起不能! この勝負、決まった!


 だが、バニーは忘れていたのだ……

 タコには骨がないことを……

 そう、タコは軟体動物。

 だから、頭蓋骨もないのである。

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