第66話 激闘!第六駐屯地!(33) オニヒトデの誤算

「さてと……どうしたものか……」

 一人ポツンと残ったオニヒトデのヨッちゃんは、腰に手を当て自分が今置かれている状況を考えていた。

 そう、魔物大群がひしめく草原に、いまや魔装騎兵はヨッちゃん一人。

 当然、無数の魔物たちがそんなヨッちゃんを襲おうと、その周りをぐるりと取り囲んでいたのである。

 しかも、そのヨッちゃんの目の前では、タコ邪二ジャニ郎がコアラのマーチへのチ〇コ充填作業に汗を流していそしんでいる。

 もしかして……これは絶体絶命?

 だが、ヨッちゃんはいやらしい笑みを浮かべるのだ。

 ――まぁ、この状況、どう考えても目の前のタコが班長ってところだろうな……

 ならば、あのタコを何とかしてしまえば、何とかなるというもの。


 であれば、とるべき方法は一つだけ!


「コ! コっコ! コれっは~wwww結構ですねブスリ!」

 ということで、オニヒトデのヨッちゃんは、邪二ジャニ郎に向かってわざとらしい声をかけながら左手の親指と人差し指で作った輪の中に右手の人差し指を出し入れするのだ。

「コ! コっコ! コれっは~wwww結構ですねヌルリ!」

 そして、体液でヌルヌルと光る邪二ジャニ郎に近づきながら、まるで媚びるかのような視線を送るのである。

 ふざけとんのかい! この風見鶏! 


 だが、これもヨッちゃんの計算のうちであったのだ。

 というのも、ヒロミのあの足のケガでは、もはや魔装騎兵として復帰などできはしない……

 ということは、残るは、先ほど走っていったヨークとタヌキと子カンガルー、そして、もともと駐屯地にいたはずの魔装騎兵たちが数人といったところである。

 もう、その数を想像しただけで、ヨッちゃんの口角はいやらしい笑みを浮かべてしまうのだ。

 というのも、ここまで魔装騎兵の数が減ると、第六駐屯地の守備はほぼ壊滅状態と言っても過言ではないだろう。

 ついでに、目の前のコアラのマーチも潰しておけば、より一層アルダイン様はお喜びなられるかもしれない。

 ならば、ひと思いに自分がヤルかwww

 いやいやいやwwwwちょっと待てwwww

 ココは戦場とは言ってもどこで誰が見ているとも分からない。

 確か城壁の上にはカルロスもいたはずなのだ。

 ここは慎重に慎重にwwww

 そう!壁に耳あり障子はコメリというではないかwww

 だから、オニヒトデ班長は邪二ジャニ郎にコアラを抹殺させようという気なのである。


 そんな時である。

 ビッー!ビッー!ビッー!ビッー!

 と、オニヒトデ班長の魔血ユニットが警告音を立てた。

 ――やべっ!

 これにはさすがのオニヒトデ班長も焦った。

 というのも、オニヒトデ班長もまたすでに魔血タンクを使い切っているのだ。

 かといって、城壁の裂け目からここまではかなり距離がある。

 奴隷兵たちが魔血タンクを運んでこられるとは到底思えない。

 ならば、この状況ではオニヒトデ班長も人魔化確定なのか?

 ざまぁwwwオニヒトデwww

 さあ!どうする!オニヒトデ! どうする!ヨッちゃん! 


 だがしかし、オニヒトデ班長は慌てる様子もなく、先ほどから懸命にコアラのマーチにチ〇コの充填作業をしている邪二ジャニ郎に話しかけているのだ。

「楽しいエロいのお手伝い?」

 それはまるで一緒にいたしましょうかと言わんばかり。

 そして、コアラのマーチの背後から、おもむろに彼の腰をつかむと激しくシェイクしはじめた。

「こうすると、奥の奥にまでチ〇コが入るでしょうwww」

 これには邪二ジャニ郎も嬉しそう!

「うほぉぉぉぉぉ!」

 と、感極まった邪二ジャニ郎。

「うぎゃぁぁぁぁあ!」

 一方、コアラのマーチは悲鳴を上げていた。

 タコの触手は根元に近づけば近づくほど太くなる。

 いまやその見える太さは人の太ももほどだ。

 そんな太もものような触手が、コアラのマーチの上の穴に無理やり突っ込まれているのである。

 いや、もう、上の穴という言葉には無理がある……すでに完全に砕けた顎によって、口という概念がなくなっているのだ。

 いまや、コアラの喉そのものにタコの触手がグイグイと押しこまれている。

 その激しく押し込まれるその圧力によって、コアラのマーチの両眼はタコの目のように飛び出して激しく血をたらしていた。


 そして、下の穴の方はというと……さらに激しさを増したチ〇コ充填作業の勢いで、ついには腹部のクッキー生地を突き破ってしまったのである。

 そこでフィニッシュ!

 生地から突き出した触手の先端はそのまま外にホワイトチョコを放出してしまったた!

 うお!

 それにはオニヒトデ班長も驚いた。

「もうwwwちょっと、外で出さないでくださいよwww」

 だが、すでにホワイトチョコを放出しきったタコ邪二ジャニ郎の触手はピクピクとひくつき、もう力なくしぼみ始めていた。

 そのせいか、隙間ができたコアラのマーチの腹部から赤い大量のイチゴチョコがたれ落ち始めていたのである。


 激しく痙攣するコアラのマーチ。

 だが、そんな体も次第におとなしくなっていく。

 ――これでこいつは、死んだなwwww

 冷えゆくコアラのマーチの体温を感じると、オニヒトデ班長はシェイクを止めた。

 ――まぁ、これで遠くから見れば、俺がコアラを必死に助けていたようとしていたと見えることだろうよwww

 そして、なぜか、先ほどまでけたたましく鳴っていたオニヒトデ班長の魔血ユニットの警告音も止まっていたのである。


 なぜ?

 そう、それはオニヒトデ班長がコアラのマーチを激しくシェイクしていた時のことである。

 一つの手をコアラのマーチの腰に手を回したのだ。

 いやん♡

 というのも、コアラのマーチはスッポンポンで二穴同時攻撃を受けているとはいっても、魔装騎兵!

 そう!彼の腰には魔血ユニットがしっかりと融合されていたのである。

 当然、そこにはまだ魔血タンクが挿入されている。

 オニヒトデ班長は、シェイクする傍らその魔血タンクをごそりと全部引き抜いて自分の魔血ユニットに差し込んだのである。

 これで魔血ユニットの魔血切れも防げた上に、コアラのマーチの抹殺も完了できた。

 まさに一石二鳥とこのことである。

 だが、オニヒトデ班長が魔物の群れの中、まして、コアラのマーチという遊び道具を失ったタコ邪二ジャニ郎と対峙しなければならない事実はいまだ変わっていない。

 今度こそ、ざまぁになりやがれ! オニヒトデ!


 フリーとなったタコ邪二ジャニ郎はソワソワし始めた。

 どうにも落ち着きがない。

 もしかして、まだ、やり足りないのだろうか?

 そんなものだから、まるでもう、「イケメンじゃなくてもかまわない! 目のまえに男がいればそれでいい!」と言わんばかりに、触手を上げてオニヒトデに襲いかかったのである。

 万事休す!

 だが、オニヒトデは慌てない。

 それどころか、鼻で笑いながら言うのである。

「わりいなwww俺、そっち系は趣味じゃないんだwww」

 そんなオニヒトデの鼻先にタコの触手の先端が伸びてきた!

 と、思った時……

 触手の動きがピタリと止まったのだ。

 いや、触手だけではない、邪二ジャニ郎の体が動かない。

 それどころか、今度はゾワゾワと身震いし始めたかと思うと、いきなり膝をがくんと落としたのである。


 いまや地面に転がる邪二ジャニ郎の口からは白い泡がたれおちて、いたるところの表皮まくしたでは内出血した魔血が破れた穴から次々とドピュ!ドピュ!と吹き出していたのである。

 それは、まるで邪二ジャニ郎の体の中が溶けて外に流れ出しているかのよう。

 そんな様子に、先ほどヨークを追いかけるときに追い越したクモの魔物がオロオロとおびえていた。

 もしかして、これはクモの祟りなの?

 という事は、やはり邪二ジャニ郎が倒れた原因はクモ膜下まくか出血なのだろうか?

 いやいや違うのだ。

 クモはクモでも、クモヒトデ膜下まくした出血!

 ちなみに、クモヒトデとはヒトデの親戚みたいなもので、ヒトデのように腕の下にあるブツブツの管足を使って移動するのではなく、腕そのものをグネグネとくねらせて海底をはって移動する生き物なのである。


 そんな邪二ジャニ郎を見下すように見るオニヒトデ班長は、忌々しそうにつぶやいた。

「ようやく毒が効き始めたか。マジで片方の触手が外に飛び出した時には焦ったぜ……」

 そう、オニヒトデ班長がコアラのマーチの体を激しくシェイクしていた時の事である。

 魔血タンクを抜き取りながら、さらにもう一つ別の手を打っていたのである。

 オニヒトデ班長の背後から、5本の長い棘がグイっと伸びてきた。

 その棘は本来、硬くまっすぐなものなのだ。

 だがしかし、今回の棘は少々違う。

 というのも、その棘がウネウネと波打つように動き出したのである。

 そう、それはまるでクモヒトデの足のように……ウネウネと。

 しかも、こともあろうかその棘が、勢いをつけてコアラのマーチの背中を次々と突き刺していくのである。

 ぶすっ! ぶすっ! ぶすっ! ぶすっ! ぶすっ! 

 瞬間、悲鳴を上げるコアラのマーチ。

「うぎゃぁぁぁぁあ!」

 激しい激痛がコアラのマーチを襲う。

 それはもう、体の中がドロドロに溶けて腐っていくかのような激しい痛み。

 というのも、コアラのマーチの体内には突き刺さった棘の先端からおびただしい量の毒液が流し込まれていたのである。

 もはや、コアラのマーチの体内は猛毒の液体で満たされていたのであった。


 だが、そうとも知らずに邪二ジャニ郎は、必死に触手を動かしていた。

 しかも、ノースキンで……

 やはり、彼が繁殖用の魔人だったころの習慣なのであろうか……とはいっても……初めての人にチ○コを装填するには、最低限、保護用ゴムはつけておきたいものである。

 それぐらいの心構えがないと、こんな荒廃した世界、自分の身を守れないのだ。

 それを怠った邪二ジャニ郎は、当然……突っ込んだ触手の先端にあいた穴から大量の毒を吸い込んでしまったのである。

 だから、みんなも、くれぐれもゴムはしっかりとつけようね♡


 だが、ここでオニヒトデ班長の誤算が生じた。

 そう、二本の触手がコアラのマーチの体内で果てると思っていたのだが、事もあろうか、その一本が外に突き出してしまったのである。

 これでは摂取される毒の量は半分になってしまう。

 そのため、即効性の毒とは言っても、効きはじめるのに少々、時間を要してしまったのだ。

「少しは自重しろよ! このエロダコが! 後々の事を考えてんのかよ!」

 今や、おそらく多くの人が思っていることだろう……

 当然、その一人であるオニヒトデ班長もまた、腹立たしそうに邪二ジャニ郎の頭を蹴り上げたのである。

 だが、もう、邪二ジャニ郎には抵抗するだけの力は残っていない……

 先ほどまであれほど激しく動いていた触手も、すっかりしぼんで動かない……

 そう、ここに一つの時代が終わったのだ……

 タコ邪二ジャニ郎、クモヒトデ膜下まくした出血により死亡……


 だが、この時、オニヒトデのヨッちゃんは知らなかった。

 クモヒトデのようにうねった棘がコアラの背中を貫いた瞬間を見られていたことに。

 いや、これでもヨッちゃんは用心深い。

 だからこそ、伸びる棘を自分の体の影に隠し、城壁の上からは見えないように突き刺す体位を工夫したつもりだった。

 ならばあと見られるとすれば、走って帰るヨークたちである。

 だが、彼らは城壁の割れ目に向かって走っているため、こちらには背中を向けている。

 さすがに魔装騎兵と言っても人間。背中には目はついていない。

 ならば、一体誰に見られたというのであろうか……

 そう……それは、意識を失っていたはずのヒロミである。

 お姫様抱っこをされるヒロミの頭はヨークの体からわずかにはみ出ていた。

 そんなヒロミのうつろな瞳が、オニヒトデ班長がマーチを刺し殺す瞬間をしっかりと見届けていたのである。

 ――えっ? なんで……オニヒトデ班長がマーチを刺してるの?

 いまだにボーっとする頭で、ヒロミはいくら考えても分からない。

 もしかしたら、自分が単に見間違えただけなのかもしれないのだ。 

 だが、もう一度しっかりと見直してみても、やはりオニヒトデの棘がマーチの体を突きさしているのである。

 しかも5本も……

 ――きっと……もう……マーチは助からなかったから……ひと思いに……

 ヒロミは、日ごろの班長の人懐っこい笑顔を思うと嘘だと思いたかった。

 そうじゃないと、自分の班長に対する憧れが壊れてしまうのである……

 そう思うヒロミは、そっと目を閉じた。

 そして、今見たことを忘れてしまおうと固く心に決めたのである。


 だが、そんなヒロミの様子を、わずかにオニヒトデ班長の視線がとらえていた。

 ――ちっ! 見られたか?

 オニヒトデのヨッちゃんは、すでに気を失っていたヒロミを自分の意識の中に入れるのを失念していた。

 ――仕方ない……念のためにヒロミも殺っておくか……

 だが、タコ邪二ジャニ郎死すとも、魔物は死せず!

 そう、いまだにオニヒトデのヨッちゃんの周りには沢山の魔物がウジャウジャとひしめいていたのである。

 早く帰って、ヒロミが今見たことを誰かに喋る前に何とかしなければ……

 気持ちは焦るのだが、魔物が邪魔でどうにも動けないのである。

「邪魔をするな! このカスどもが!」

 体中から勢い良く伸びる無数の棘が飛び掛かる魔物たちを貫いた。

 だがさすがに、この数をヨッちゃん一人で片づけるのには無理がある。

 無理があるが、負ける気もしないのである。

 先ほどコアラのマーチから奪った魔血タンクを交換したことにより、あと、数十分は限界突破を維持できる。

 鬼人ディフェンスによって体全体を棘で覆ってしまえば魔物たちの攻撃も届かないのである。

 確かにこの場所に絶対防壁である騎士の盾を使う魔人騎士がいれば話は別だ。

 いかに鬼人ディフェンスの固い棘と言えども、騎士の盾の前では砂のように崩れ去ってしまう。

 だが、魔人騎士のガメルは後方から一歩も動こうとしない。

 ――ならば!このまま一気に駆け戻るのみ!

 全身を棘で覆ったオニヒトデのヨッちゃんは無理やりにでも走り出そうとした。

 が、やはり……魔物が多い……

 くそっ!


 そんな時、駐屯地の城壁の上から低音の角笛の音が響いたのだ。

 それは撤退の合図。

 しかも、駐屯地の外にいるものは急ぎ城壁の内側へ戻れという指示なのである。

 それに従って、城壁の上から一斉に矢の雨が降り注ぐ。

 そう、それは草原を走るヨークやヨッちゃんたちの退路を作るため。

 城壁に開いた窓という窓から一斉に、かつ集中的に逃げ帰る彼らの前方に向かって矢を撃ち込み始めたのだ。

 次々と退路を防いでいた魔物たちが倒れていく。

 魔物がひしめいていた草原に、うっすらと細い道ができていた。

 ――よし! これなら行ける!

 矢嵐によって切り開かれた道を全速力で駆けるオニヒトデのヨッちゃんは、先を走っているヨークたちに向かって大きな声をかけたのだ。

「やっと撤収だwwww さて! 急いで駐屯地の中へトンズラするぞ~!」

 ――そう、ヒロミを殺るのはそれからでも十分だ……

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